核のごみ最終処分地 佐賀 玄海町の3団体 町に調査応募の請願書

原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定をめぐり、玄海原子力発電所が立地する佐賀県玄海町の3つの団体が町議会に対して第1段階の「文献調査」への応募を町に働きかけるよう求める請願書を出しました。

玄海町などによりますと、請願書を出したのは地元の旅館組合や、飲食業組合、それに防災対策協議会で、3団体がそれぞれ15日に町議会に提出したということです。

高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は、長期間強い放射線を出し続けることから、地下300メートルより深くに埋めて最終処分を行うことが法律で決まっています。

処分地の選定に向けた調査は3段階で行われることになっていて、請願書の中で各団体は町議会に対し、第1段階の「文献調査」への応募を町に働きかけるよう求めています。

町議会は4月中に特別委員会を開き、対応を議論することにしています。

玄海町には九州電力の玄海原発が立地し、4基ある原子炉のうち1号機と2号機が廃炉になり、3号機と4号機が再稼働しています。

請願書の提出について、脇山伸太郎 町長は「重く受け止め、内容を確認するとともに議会での議論を見守りたい」とコメントしています。

処分地の選定をめぐっては、北海道の2つの町と村を対象に全国で初めて行われた「文献調査」の結果、次の段階に進めるとした報告書案がことし2月にまとまりましたが、地元からは北海道以外への調査の拡大を求める声が上がっています。

こうしたなか去年、長崎県対馬市の市議会が調査の受け入れを求める請願を採択しましたが、市長はこれを受け入れない意向を表明していました。

調査に応じた自治体には交付金が用意されていて「文献調査」で最大20億円
、次の「概要調査」では最大70億円が支払われます。

玄海町議会議長「前向きに進めていきたい」

文献調査についての請願書が提出されたことについて、玄海町議会の上田利治 議長は「特別委員会の中で前向きに進めていきたいと思っている。議会だけでなく町民の皆さんにもわかりやすく説明できれば」と述べ、前向きに検討する考えを示しました。

そのうえで「この問題は立地自治体としての責務だと思っている。ただ、発電するだけで自分たちの役割が終わったというものではない。地元から出た廃棄物は協議しながら処分地を探していくのが筋だと思っている。今後とも全国的に呼びかけていきたい」と話しました。

NUMO「関心をもっていただけることは大変ありがたい」

核のごみの最終処分や事前の調査を実施する主体のNUMO=原子力発電環境整備機構は「自治体議会での請願審議をすべて把握しているわけではないが、原子力発電所の立地自治体で調査の応募を働きかける請願が審議されたことはNUMOとして知る範囲ではこれまでにない」としています。

そのうえで「地層処分について地域の皆さまに関心をもっていただけることは大変ありがたい。今後も玄海町はじめ全国で地層処分の仕組みや日本の地質環境などについて理解を深めていただけるよう、対話活動に取り組みたい」とコメントしています。

核のごみ 処分地選定の経緯は

【2000年】
この年に定められた「最終処分法」では、処分地の選定に向けた調査は、3段階に分け、20年程度かけて行われることになっています。

はじめに、文献をもとに、火山や断層の活動などを調べる「文献調査」で2年程度、次に、ボーリングなどを行い、地質や地下水の状況を調べる「概要調査」で4年程度かかる見通しで、その後、地下に調査用の施設を作って、岩盤や地下水の特性などが処分場に適しているか調べる「精密調査」を14年程度で行う想定です。

対象の自治体には段階に応じた交付金が用意され、はじめの「文献調査」では最大20億円、次の「概要調査」では最大70億円が支払われます。

ただ、調査への応募を巡っては、自治体の議会で勉強会を開くなど、検討の動きが表面化するたびに住民や周辺自治体などから反発を招き、断念するケースが相次ぎました。

【2007年】
高知県の東洋町が全国で初めて調査に応募しましたが、賛成派と反対派の対立の末、その後の選挙で町長が落選し調査が始まる前に応募は撤回されました。その後、2011年の東京電力福島第一原発の事故などを経て、調査の受け入れが表立って議論される機会はなくなっていきました。

【2017年】
このため政府は、文献などをもとに火山や活断層の有無などを確認し調査対象の有望地を色分けして示した「科学的特性マップ」を公表して、全国で説明会を開くなどして改めて調査への理解を求めてきました。

【2020年】
北海道の寿都町と神恵内村が調査への応募や受け入れを決め、全国で初めてとなる「文献調査」が行われた結果、ことし2月、次の「概要調査」に進めるとする報告書案がまとめられました。ただ、地元からは、最終処分地の選定が「北海道だけの問題」とならないよう、調査地域の拡大を求める声が上がっています。

【2023年】
政府は、最終処分の実現に向けた基本方針を8年ぶりに改定し、NUMOや電力会社と合同で、全国の自治体を訪問するなどして働きかけを強めています。ただ、9月には、長崎県対馬市の市議会が調査の受け入れを求める請願を採択したものの、市長が調査を受け入れない意向を表明するなど、調査地域の拡大は具体化していません。

玄海町 これまでも町議会の一般質問などで議論

2016年には当時の岸本英雄町長がNHKの取材に対して「現実に原発が立地している自治体として核のごみの問題について、住民の不安を取り除く作業をやらないといけない。そういう状況になれば、当然住民の皆さんにも説明会は開かないといけない」と述べて、町として検討する考えを示しました。

一方、2017年に国が調査対象の有望地を色分けして示した地図では、玄海町は、将来、資源の掘削が行われる可能性があることから、その多くが「好ましくない特性があると推定される」地域になりました。

こうしたことから、現在の脇山伸太郎町長は去年12月の町議会一般質問で「文献調査を行うという考えはない」と述べていました。

そのうえで仮に請願書が議会に提出された場合は議会での議論を踏まえ判断するとしていました。

旅館組合の組合長“まずは原発立地自治体で調査受け入れを”

玄海町議会に請願書を出した団体のうち、旅館組合の50代の組合長はNHKの取材に対して「まずは原発の立地自治体で調査を受け入れないといけないのではないかと思い、全員の総意で請願書を提出した」と話しました。

組合長によりますと団体では、去年11月に資源エネルギー庁などが町内で開いた説明会などを受けて、請願書の提出に向けた議論を進めてきたということです。