ChatGPT開発 オープンAI 東京に新拠点設立 日本のAI事情は?

生成AIのChatGPTを開発したアメリカの企業、オープンAIが東京に新たな拠点を設立し、日本での事業を強化する方針を明らかにしました。

オープンAI 東京に新拠点を設立

アメリカのオープンAIは、おととし11月に生成AIのChatGPTを発表し、世界での生成AIの拡大のきっかけとなりました。

「ChatGPT」とは、人間のように自然な受け答えができる高度な性能を備え、世界で急速に利用が広がる対話式AIです。

会社は15日、東京都内に新たな拠点を設立し、今後の日本での事業方針について記者会見を開きました。

会社はアメリカのカリフォルニア州サンフランシスコに本社を置き、海外拠点はイギリスとアイルランドに続き、東京が3か所目となります。

東京を拠点に日本での事業を強化し、企業向けの生成AIサービスを展開するとともに、日本語や日本文化に特化したモデルの生成AIの開発を強化する方針を明らかにしました。

一方、日本政府が進める生成AIの開発や活用にあたってのルールづくりについて、事業者の立場から協力していく考えを改めて示しました。

サム・アルトマンCEO「“拠点を日本に”は自然な選択」

オープンAIのサム・アルトマンCEOは、ビデオメッセージを寄せました。

「こんにちは」と日本語で挨拶したあと、東京のオフィスがアジアで初めてのオフィスだと強調し、日本に法人を設立した意義について語りました。

「日本は、公共の利益のために人々と技術が協力してきた豊かな歴史を持っており、私たちはAIによって、皆さんがさらに創造的で、生産性を向上し、世界の進歩にさらに貢献すると信じています。東京は、技術とイノベーションのリーダーシップからすると、拠点として自然な選択でした。私たちが日本の皆さんにパートナーとして迎えていただき、AIが前例のないイノベーションとポジティブな社会変革の触媒となる未来に向けて出発できることに感謝します」

ライトキャップCOO「日本でたくさん成長したい」

また、オープンAIのブラッド・ライトキャップCOOは、日本市場の魅力について次のように説明しました。

「われわれにとっても日本は重要なマーケットです。1週間あたり200万以上のアクティブユーザーがいる日本への投資は非常に可能性があり、企業、政府、教育などにも広げていきたいと思います。また、日本語に特化したカスタムモデルを開発しました。現在のモデルの3倍の速度です。日本の需要に応えながらたくさん成長したい。日本にも貢献していきたい」

日本法人社長「日本の生成AIの記念すべき一歩」

会見には、オープンAIの日本法人の長崎忠雄社長も出席し、日本では営業や技術などのチームを立ち上げ、年内に十数名規模にする方針を示しました。

「やっと、生成AIの第一歩を日本という地で進める記念すべき日だと思っています。特に新しいテクノロジーを日本のマーケットにどう普及・浸透させていくかに取り組んできた私の経験が生かせると考えています。オープンAIが普及浸透することで生活の質の向上だけではなく、社会全体の生産性の向上や創造性につながると信じています」

生成AIの開発 日米で競争激化

オープンAIが世界に先駆けた生成AIの開発は、日本国内での事業の強化を加速させるアメリカのIT大手と、日本企業の間で競争が激しさを増しています。

日本の企業の間で生成AIのビジネスでの活用が広がるなか、日本が有望な市場とみていち早く巨額の投資を打ち出したのはアメリカのIT大手です。

▽マイクロソフトは先週、今後2年間で日本円にしておよそ4400億円を日本事業に投資する計画を発表しました。生成AIの開発や事業に欠かせない国内のデータセンターを増強するほか、東京に研究拠点を新たにつくる計画です。

▽AWS=アマゾンウェブサービスは、2027年までの5年間で日本事業に2兆2000億円あまりを投資する計画で、日本国内でデータセンターの建設や増強を進める方針です。

▽グーグルは、ことしまでの4年間におよそ1000億円の投資を日本で行うことを決めています。千葉県内でデータセンターを新たに開設したほか、日本とカナダを結ぶ海底ケーブルを敷設しました。

世界での高いシェアと豊富な資金力で先行するこうした動きに対して、日本企業は、業種や分野に特化する形でデータ処理の量を抑え、大規模なデータセンターを必要としないいわば“小回りがきく”戦略を進めているのが特徴です。

▽NTTと▽NECは、それぞれ自社で開発した生成AIの企業向けサービスを先月相次いで開始しました。

▽KDDIは今月、国産の生成AIを開発する東京大学発のスタートアップ企業、「イライザ」を子会社化し、企業や自治体向けの事業に新たに参入します。

このほか、▽ソフトバンクや▽楽天グループも生成AIの開発や事業化に向けた準備を進めていて、アメリカのIT大手と、日本企業の間で競争が激しさを増しています。

国内でもAIの研究開発や安全性に向けた動き活発

国内でもAIの研究開発や安全性に向けた動きが活発になっています。

透明性や信頼性の高い国産のAIの研究開発を進めていくための拠点として、国立情報学研究所は「大規模言語モデル研究開発センター」を今月、開設したほか、2月には、AIの安全性を確保するための機関も設立されています。

生成AIの課題の1つとして挙げられるのが、「ブラックボックス問題」です。これは、AIが生成したテキストや画像などが、どのように導かれたのか、その根拠や推論が不明だという問題です。

国立情報学研究所が今月設置した「大規模言語モデル研究開発センター」は、こうした課題について、AIの透明性や信頼性を確保するための先進的な研究を行っていきます。

センターでは、AIや法律の専門家などが参加し、独自の大規模言語モデルを構築するなど、国産のAIの開発に力を入れるほか、AIの回答の根拠を探ったり、回答の偏りなどの影響を抑えるための技術開発を行ったりします。

また、ことし2月、AIの安全性を確保するための機関として「AIセーフティ・インスティテュート」が設立されました。

ここでは、AIの安全性に関して、偽情報の対策技術の調査や安全な評価基準の策定などを、海外の関連機関と連携して進めていくとしています。

センター長“新しいAI 受け入れには安全性の担保が重要”

大規模言語モデル研究開発センター 黒橋禎夫センター長

「大規模言語モデル研究開発センター」の初代センター長となった国立情報学研究所の黒橋禎夫所長は「我々自身でAIのモデルを作成・分析し、透明性や信頼性、高度化に関する研究を進めていくことが、我が国の研究開発を底上げし、産業化を加速するものと考えている」と述べ、センター開設の意義と必要性を訴えました。

また、生成AIのChatGPTを開発したアメリカの企業、オープンAIが東京に新たな拠点を設立したことについては、「AIモデルの賢さやそれを支えるデータ、安全性の確保などについて、積極的にコミュニケーションを行い協力できる部分が多いと思う」と述べ、意見交換などを進めていきたい意欲を示しました。

そして、安全性を巡る動きについて「AIは非常に良い側面もあるが悪用される側面もある。例えば爆弾の作りかたを教えてくださいというと、あまりトレーニングされていないモデルでは答えてしまう。あるいは差別や偏見などバイアスを助長してしまう懸念もある。社会が新しいAIのテクノロジーを受け入れていくために安全性の担保が重要だ」と指摘していました。