体操 全日本選手権 男子 橋本大輝が4連覇

パリオリンピックの代表選考を兼ねた体操の全日本選手権は男子の決勝が行われ、22歳のエース、橋本大輝選手が4連覇を果たしました。

パリオリンピックの代表選考を兼ねて個人総合で争われる体操の全日本選手権は大会最終日の14日、群馬県高崎市で男子の決勝が行われました。

パリ大会の男子の日本代表は5人で、すでに代表に内定している橋本選手を除く4人が、全日本選手権の予選と決勝の合計得点を持ち点に争う5月のNHK杯で選ばれます。

12日の予選でトップだった橋本選手は、1種目目のゆかで冒頭、G難度の大技「リ・ジョンソン」を高い完成度で決めるなど着地までほぼ完璧に決め、15.000とこの種目トップの得点で好スタートを切りました。

2種目目のあん馬は、磨いてきたという手足の先まで伸びた雄大な旋回を見せて15.133をマークしたほか、4種目目の跳馬も大技の「ロペス」を高さのある跳躍で決めて15.100と、合わせて3種目で15点台の高得点をたたき出しました。

しかし、最後の得意の鉄棒は、腕がつっていたため難度を下げた演技構成で臨んだということで、着地も大きく乱れ、得点を伸ばせませんでした。

それでも橋本選手は、予選と決勝の合計で176.164をマークし、4連覇を果たしました。

大会4連覇は、2008年から2017年に史上最多となる10連覇を達成した内村航平さん以来です。

2位は20歳の岡慎之助選手で、2種目目のあん馬で落下のミスが出たものの、磨いてきた3種目目のつり輪で立て直し、得意の平行棒で15.200の高得点をマークするなど、合計172.264でした。

3位は萱和磨選手で、持ち味の安定感を発揮し合計171.596で、オリンピック出場へ1歩リードしました。

橋本大輝「体力面の部分が課題として出た」

4連覇を達成した橋本大輝選手は「あまり連覇は意識せず、試合の内容を重視した中で4種目目まではすごく調子がよかったが、2日間通しきる練習があまりできておらず、1番心配だった体力面の部分が課題として出てしまった。平行棒の途中で腕がつってしまったがやりきるしかないという気持ちだった」と淡々と振り返り、反省のことばを口にしました。

そして「安定性は高まってきているし、やりきれる力は少しずつついてきたと思うが体力面も含めてここで満足してはいけないし、一番の目標であるパリオリンピックでの金メダルに向けて、きょうの演技を客観的に見返して意識できるポイントを探し重点的にやっていきたい。NHK杯はオリンピック前最後の試合になるので自信を持ってパリにいけるような演技をしたい」と話していました。

パリの金メダル見据え 難度を上げた構成に

腕がつるアクシデントがありながらも、橋本大輝選手が圧倒的な強さを見せて4連覇を果たし、パリオリンピックへ大きな弾みをつけました。

橋本選手がこだわってきたのが、技の難度を示す「Dスコア」です。去年、パリオリンピックを前に、強い危機感を抱いたからでした。

きっかけは、ライバルで中国のエース、張博恒選手の存在です。

去年の世界選手権の個人総合で橋本選手は2連覇を達成しましたが、張選手は出場を見送り、同じ時期に中国で開催されたアジア大会に出場しました。この時の橋本選手と張選手の得点を単純に比べると、橋本選手は張選手に大きく及ばなかったのです。

「去年の世界選手権の内容ではパリオリンピックで勝つのは到底難しいと思い、この冬場で自分の演技をもう一度組み直してきた」

橋本選手がパリ大会での金メダル獲得を見据えて、取り組んできたのが、平行棒とゆかで演技の難度を上げた構成に臨むこと。なかでも平行棒は、E難度の「マクーツ」という技を新たに組み込むことにしました。

片手で体を支えながら体をひねるこの技。なかなかバランスを取ることができず、落下してしまうことも多くあったといいます。体重移動のコツをつかむまで、繰り返し練習を重ねてきました。

また、去年までは腰の疲労骨折など、さまざまな痛みと闘ってきましたが、それ以降は大きなけがもなく、充実した練習を積めるようになったことも橋本選手を後押ししています。

「去年は練習できないまま試合に臨んでしまうこともあり悔しい思いをした。今は練習できることがうれしくてしかたなく、練習時間をオーバーしてしまう。調整しながらやっているつもりだが、体操が楽しくてその気持ちを抑えきれない」

全日本選手権の前、橋本選手はこう話していました。

おとといの全日本選手権予選では、難度を上げた構成で臨み、6種目の合計で、88.199の高得点をマークして2位に2点以上の差をつけました。

そして、14日の決勝。ゆかとあん馬、跳馬で15点台の高得点をマークし、腕がつった状態で臨んだ鉄棒はミスが出ながらも、6種目の合計87.965で圧勝しました。

演技を終え、橋本選手は「冬場で準備してきて試合で出したいというところで出し切れたのは本当によかったと思っている。自信になるし体操が楽しい」と充実した表情で語りました。

オリンピックイヤーの初戦で一定の成果を得た橋本選手。オリンピックに照準を合わせ、来月のNHK杯は予選と決勝ともに89点台の高得点を目指します。

岡慎之助「代表入りは絶対にかなえたい」

2位の岡慎之助選手は「内容的にはあまりよくなかったが結果はよかった。あん馬でのミスはふだんないミスなので少し焦ってしまったが、そのあとしっかり気持ちを切り替えることができたのでよかった」と振り返りました。

そのうえで、5月のNHK杯に向けて「オリンピック代表入りは絶対にかなえたい目標なので、絶対にミスなく終えるという気持ちをもって調整していきたい。細かいところまで意識する大切さをこの大会で知ることができたので、すべて着地までしっかり決めきれるようにしたい」と話していました。

萱和磨「大きなミスなく終えられたことはよかった」

3位の萱和磨選手は「6種目すべて14点台に乗せられたし、大きなミスなく終えられたことはまずよかった。跳馬が少し危なかったのでそこは次へ向けての課題になると思う」と振り返りました。

来月のNHK杯に向けては「1週間程度、少し休んで気持ちと体に負荷をかけすぎないようにしつつ、この大会で出た課題を1か月じっくりと使って演技を磨いていきたい。NHK杯で100%を出せるように調整したい」と意気込んでいました。

日本体操協会 男子強化本部長「全体的にレベル上がっている」

日本体操協会の水鳥寿思 男子強化本部長は「橋本選手は非常にいい状態だと感じたし、ほかの選手たちもDスコア、Eスコアともに点数が出てきていて、去年に比べ全体的にレベルは上がってきていると感じる。まだ粗削りというか、ミスはあるがそれをしっかりやりきればかなり強いチームになることができると思う」と手応えを口にしました。

そのうえで、5月のNHK杯に向けては「パリオリンピックではまず団体で金メダルを取りたいと思うし、そこをねらえるくらい層は厚くなってきていると思う。NHK杯では2日間を通してしっかりと戦うことのできる体力と安定性を選手たちに求めていきたい」と話していました。