【詳細】イラン イスラエルに無人機やミサイルで大規模攻撃

イランは、イスラエルに向けて多数の無人機やミサイルによる大規模な攻撃に踏み切り、4月1日にシリアにあるイラン大使館が攻撃を受けたことへの報復だとしています。イスラエル軍は300以上の無人機やミサイルが発射され、ほとんどを迎撃したとしていて、今後、イスラエルがどのような対応に出るのかが焦点となります。

一方、今回の事態を受けて、外務省はイランへの渡航を中止するよう求める注意喚起を出しました。

※イランのイスラエル攻撃に関する日本時間4月14日の動きを随時更新してお伝えします。

NHKプラスでニュースを配信

“イスラエルに向けて複数の無人機を発射”イラン国営メディア

イランの国営メディアは、革命防衛隊がイスラエルに向けて複数の無人機を発射したほか、イスラエル各地やイスラエルが占領するゴラン高原にミサイルが発射されたと伝えました。今月4月1日にシリアにあるイラン大使館が、イスラエルによるとみられる攻撃を受け、軍事精鋭部隊の革命防衛隊の司令官らが殺害されたことへの報復だとしています。イランからイスラエルの領土に向けた直接の攻撃は初めてとみられます。

一方、イスラエル軍は、イランが自国の領土からイスラエルに向けて複数の無人機を発射したと現地時間13日午後11時すぎ、発表しました。

これを受けてイスラエルのネタニヤフ首相は「防衛システムが配備されていてどのようなシナリオにも準備ができている。われわれを攻撃する者は誰であろうと攻撃し返す」とする声明を出しました。

イスラエル軍のハガリ報道官は14日、声明を発表しイスラエルに向けて300以上の無人機やミサイルが発射されたとしたうえで「99%を迎撃した」として、攻撃への対処の成果を強調しました。声明では、イランが発射した無人機およそ170機と巡航ミサイル30発以上はいずれもイスラエル領内には到達しなかったとしています。また、弾道ミサイル120発以上のうち、一部がイスラエル南部のネバティム空軍基地に着弾したものの、基地は引き続き機能しているということです。

また、アメリカのオースティン国防長官は声明のなかで「アメリカ軍はイランやイラク、シリア、そしてイエメンから発射され、イスラエルへ向かっていた数十の無人機やミサイルを迎撃した」としています。

エルサレムからの映像では、現地時間14日午前1時45分ごろ、上空を白っぽく光る筋が通過し、そのあと、爆発するような様子が確認できました。また、防空警報とみられるサイレンが鳴り響く様子も確認でき、イスラエル軍によりますと、各地に防空警報が発表されたということです。

イスラエルの救急当局は14日、SNSへの投稿で南部の町アラド近郊で7歳の女の子が重傷を負って治療を受けていて、詳しい状況を警察が調べていると明らかにしました。

今回の攻撃について、イランの軍全体のトップ、バゲリ参謀総長は14日、国営テレビの取材に対し「昨夜からけさにかけて行われた作戦は成功裏に完了し、すべての目的は達成された」とアピールしました。また、革命防衛隊のトップ、サラミ総司令官は「われわれは限定的な作戦を実施した。この作戦はもっと大規模に行うこともできたが、イスラエルがわれわれの大使館を攻撃するのに使った能力と同等のレベルまで抑えた」と述べ、攻撃は抑制的に行ったと主張し、これ以上、攻撃の応酬を望まない考えを示唆したものとみられます。

イランがイスラエルに対し大規模な報復攻撃に踏み切ったことで中東情勢のさらなる緊迫化が懸念され、今後、イスラエルがどのような対応に出るのかが焦点となります。

<14日の動き>

外務省 イランの首都含む大部分「渡航中止勧告」に

今回の事態を受けて、外務省は14日夜、イランの「危険情報」について、首都テヘランを含む大部分を、これまでのレベル1からレベル3の「渡航中止勧告」に引き上げました。

パキスタンとの国境地帯など一部には以前から最も高いレベル4の「退避勧告」が出されていて、これにより、全土にレベル3以上の情報が出されたことになります。

外務省は「当面、イラン国内でも不測の事態が発生するおそれがある」として、イランへの渡航をやめるよう求めるとともに、すでに滞在している日本人には、商用便が運航されている間の出国を検討するよう呼びかけています。

イスラエル エルサレムの市民の反応は

イランの報復攻撃から一夜明けたエルサレムでは、市民から攻撃に対するさまざまな反応が聞かれました。

このうち80歳の女性は「朝2時ごろに警報が鳴って、避難所に向かわなければならなかった。でもそれほどひどくはなかった」と話していました。

また43歳の商店主の男性は「攻撃は全く受け入れられない。私たちは自衛し、必要であれば攻撃もする。私たちには非常に強力な軍隊がある。政府は正しい決断を下すと確信している」と話し、イスラエル政府の判断を全面的に支持する考えを示しました。

一方、71歳の女性は「私たちは殺されてしかるべき幹部を何人か殺したし、彼らも正当だと思う方法で報復した。もうやめることができるのではないか。双方がそれがわかるくらい賢明であると信じたい」と話し、イスラエルとイランの両政府に自制を求めました。

イギリス首相「今必要なのは冷静な頭脳」

イギリスのスナク首相は14日、イランがイスラエルに向けて発射した複数の無人機を、中東に展開しているイギリス空軍の戦闘機が撃墜したと明らかにしました。

イギリスはアメリカなどとともにイスラエルを支持する姿勢を示し、中東のイラクとシリアに展開している部隊に戦闘機や空中給油機を追加で派遣して、イランによる攻撃に備えていました。

スナク首相はイランの攻撃について「危険かつ不必要なエスカレーションで、最も強いことばで非難する」とした上で「今われわれに必要なのは、冷静な頭脳だ。状況の沈静化に向け、同盟国と協力していく」と述べ、14日にG7=主要7か国の首脳と対応を協議するとしました。

ドイツ首相「イランの攻撃を強く非難する」

ドイツのショルツ首相は14日、訪問先の中国内陸部の重慶で「イランの攻撃を強く非難する」と述べこれ以上緊張を高めるべきではないと警告するとしています。また、「緊張が高まらないようにできる限りのことをする」とも述べ、G7=主要7か国の各国と連携して対応にあたる考えを強調しました。

ドイツのメディアによりますと、ショルツ首相は14日、重慶で予定していた日程を一部変更し、現地からG7のオンライン会合に参加するということです。

ロシア外務省 “西側諸国が適切に対応できなかった”

ロシア外務省は14日声明を発表し、「イラン外務省は、イランの標的への攻撃に対抗して自衛権の枠組みで行われたものだとしている。ロシアはイラン大使館への攻撃を強く非難した」と強調した上で、西側諸国が適切に対応できなかったとして欧米側も批判しています。

そして「この地域の新たな危険な緊張の高まりに深刻な懸念を表明する。すべての当事者に自制を求める」としています。

イラン大統領「敵のイスラエルに教訓を与えた」

イランのライシ大統領は14日、声明を出し、今回の大規模攻撃について「イランの歴史の新たな1ページを開き、敵のイスラエルに教訓を与えた」としています。

その上で「イラン国民の利益に反するいかなる試みも、より激しい対抗措置を招き、後悔することになるだろう」として、反撃に出ないようイスラエルをけん制しました。

岸田首相「中東情勢をいっそう悪化 深く懸念」

イランによるイスラエルへの大規模な攻撃について、岸田総理大臣は「今回の攻撃は現在の中東情勢をいっそう悪化させるものであり、深く懸念し、こうしたエスカレーションを強く非難する」と述べました。

その上で「中東地域の平和と安定はわが国にとっても重要だ。政府として、まずは邦人保護に万全を期すとともに、さらなる事態の悪化を防ぎ、沈静化させるべく、あらゆる外交努力を続けなければならない」と述べました。

また、現時点で邦人の被害は確認されていないとした上で「関係省庁に対し引き続き緊張感を持って情報収集を行うとともに、邦人保護を含め各国と連携して対応するよう指示した」と述べました。

専門家“イランにはエスカレーション避けたい思惑あったか”

中東情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は、今回のイランの攻撃のねらいについて「意図は2つあり、1つはイスラエルに対しての報復攻撃で、別の言い方をすると自衛権の行使だ。もう1つは、イランは持っている装備を使ってイスラエルを攻撃できるということを実力行使して見せる必要があったということだろう」と指摘しました。

そしてイランの攻撃の標的について「攻撃対象が都市部から多少離れたところにある軍事施設などを狙ったので市民被害を拡大させないとか、イスラエルがガザで行っている攻撃とは違うということを示す意味があったと思う」という見方を示しました。

また無人機など到達までに時間がかかる兵器を使ったことについて「イスラエル側、あるいはアメリカ軍などが迎撃できる環境をあえて提供しているとも言える。本格的な国家同士の戦争に発展させるといったエスカレーションのための攻撃ではないというメッセージもあったのではないか」としてイランにはエスカレーションを避けたい思惑があったと分析しています。

ただ「イスラエルが再びイランを攻撃すれば、事態はエスカレートし、その後、同じような相互攻撃のサイクルが始まってしまうことになる」と懸念を示しました。

そのうえで今後はイスラエルを支援するアメリカの出方が焦点になるとして「エスカレーションをこれ以上させたくない、止めたいという思いは変わっていないと思うが、一方で、イスラエルに対して強固な安全保障を提供すると言ってきた立場もあるので、大統領選挙を控えたバイデン大統領としては、イスラエルを守らない大統領とアメリカ国民に見られるような行為はできないと思う」と述べ、アメリカがイスラエルの反撃を抑えるのは難しいという見方を示しました。

攻撃の標的となった地域は

イスラエル軍などによりますと、今回の攻撃では、イスラエル南部にあるネバティム空軍基地に一部の弾道ミサイルが着弾したほか、南部の町アラド近郊で子どもがけがをしたということです。

イスラエル当局が発表した防空警報の情報をまとめたウェブサイトによりますと、攻撃が激しかった日本時間の午前8時前の時点で警報が出されていた地点は、イスラエルが占領する北部のゴラン高原のほか、エルサレムとその周辺、そして軍事施設がある南部のネゲブ砂漠に集中していたことが分かります。また、ユダヤ人の入植地がある、パレスチナのヨルダン川西岸の一部にも防空警報が出されていました。

一方で、イスラエル最大の商業都市のテルアビブやその付近には、この時間帯に警報は出されていなかったことがわかり、攻撃の標的となった地域に偏りがあったことがうかがえます。

ヨルダン 自国の空域で複数の飛行物体を撃ち落とす

イスラエルの隣国で、イランとの間に位置するヨルダンの政府は、イランによるイスラエルへの報復攻撃が行われた際、国民の安全を守るため自国の空域に侵入した複数の飛行物体を撃ち落としたと明らかにしました。ヨルダン政府は声明で「一部の破片が複数の場所に落ちたが、重大な被害やけがを負った市民はいない」としています。

ハマスが声明を発表 イランの攻撃を支持

イランによるイスラエルへの報復攻撃についてイランの支援を受けるイスラム組織ハマスは14日、声明を発表し「イランの革命防衛隊の幹部らを暗殺するなどした犯罪に対する当然の権利だ」として、攻撃を支持しました。そのうえで、イスラエルからの攻撃に対する自衛の権利としてイスラム諸国などにガザ地区での戦闘をめぐる支援を訴えました。

G7 オンライン形式で会合を開催へ

イランがイスラエルに対して大規模な攻撃に踏み切ったことを受けてG7=主要7か国の議長国であるイタリアは14日、G7の首脳が参加するオンライン形式での会合を現地時間の14日午後、開催すると発表しました。

イラン革命防衛隊 攻撃は抑制的に行ったと主張

今回の大規模攻撃について、イランの軍全体のトップ、バゲリ参謀総長は14日、国営テレビの取材に対し「昨夜からけさにかけて行われた作戦は成功裏に完了し、すべての目的は達成された」とアピールしました。

また、革命防衛隊のトップ、サラミ総司令官は「われわれは限定的な作戦を実施した。この作戦はもっと大規模に行うこともできたが、イスラエルがわれわれの大使館を攻撃するのに使った能力と同等のレベルまで抑えた」と述べ、攻撃は抑制的に行ったと主張しました。

イランとしてはこれ以上、攻撃の応酬を望まない考えを示唆したものとみられます。

イラン側がアメリカにメッセージ

イランの国営通信によりますと、イラン側は、アメリカの利益代表を務めるスイス大使館を通じて「もしアメリカがこの地域に持つ基地を使い、イスラエルによるさらなる違法行為に加担するようならその基地や人員、部隊は安全ではなくなる」とするメッセージをアメリカに送ったということです。

ヒズボラもゴラン高原に攻撃 SNSに投稿

イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、14日、午前0時35分にイスラエルが占領するゴラン高原にある防空とミサイル防衛の拠点に向けて数十発のロケット弾で攻撃したなどとSNSに投稿しました。

また、夜明けにもロケット弾での攻撃を行ったと明らかにしました。イランの攻撃に連動したかどうかは言及していません。

バイデン大統領「イランに対する攻撃作戦を支持しない」米報道

アメリカのニュースサイト「アクシオス」は13日、ホワイトハウス高官の話として、バイデン大統領がネタニヤフ首相との電話会談の中で「イランに対する攻撃作戦を支持しないと伝えた」と報じました。

それによりますとバイデン大統領は「イスラエルとアメリカなどによる合同での防衛努力が、イランによる攻撃を失敗に終わらせた」と評価し「あなたは勝利を収めたのだ」と述べ、成果を強調したということです。

そのうえでバイデン大統領は「アメリカは、イランに対するいかなる攻撃作戦にも参加しないし、そうした作戦を支持しない」と伝え、これに対しネタニヤフ首相は「理解した」と述べたとしています。

米国防長官「米軍が数十の無人機やミサイルを迎撃した」

アメリカのオースティン国防長官は13日、声明を出し「アメリカ軍はイランやイラク、シリア、そしてイエメンから発射され、イスラエルへ向かっていた数十の無人機やミサイルを迎撃した」として、成果を強調しました。

そのうえで「アメリカ軍はこの地域の自国の部隊を守り、イスラエルの防衛を支援するため、態勢を維持する」として、引き続き、イスラエルの防衛に関与し続ける姿勢を示しました。

さらに「われわれは、イランとその支援を受ける勢力による、こうした無謀でかつてない攻撃を非難する。イランとの衝突は望まないが、自国の部隊を守り、イスラエルの防衛を支援するために行動することはためらわない」として、イランをけん制しました。

また、アメリカ国防総省はオースティン長官がイスラエルのガラント国防相と電話で会談したと13日、発表しました。2人による電話会談はこの日、2回目で、オースティン長官はイスラエルの防衛に対するアメリカの支援は揺るぎないと伝えたということです。

ネタニヤフ首相「我々は迎撃し、阻止した」

ネタニヤフ首相は14日、自身のSNSを更新し、「我々は迎撃し、阻止した。ともに勝利するだろう」として、イランからの攻撃について対応の成果を強調しました。

イスラエル軍「99%を迎撃」

イスラエル軍のハガリ報道官は14日、声明を発表しイスラエルに向けて300以上の無人機やミサイルが発射されたとしたうえで「99%を迎撃した」として、攻撃への対処の成果を強調しました。

声明では、イランが発射した無人機およそ170機と巡航ミサイル30発以上はいずれもイスラエル領内には到達しなかったとしています。

また、弾道ミサイル120発以上のうち、一部がイスラエル南部のネバティム空軍基地に着弾したものの、基地は引き続き機能しているということです。

中国外務省 事態の悪化に強い懸念示す

中国外務省は14日、報道官の談話を発表し、イランによるイスラエルへの報復攻撃について事態の悪化に強い懸念を示したうえで、「関係国に対し、冷静さを保って自制し、事態がさらに悪化するのを避けるよう呼びかける」としています。

また、ガザ地区の情勢について「できるだけ早く安定させることが急務だ」と指摘し、「とりわけ影響力のある国は地域の平和と安定に向けて建設的な役割を果たすよう呼びかける」と強調しました。

上川外相「深く懸念し、強く非難する」

上川外務大臣は談話を発表し、「今回の攻撃は中東情勢を一層悪化させるもので、深く懸念し、強く非難する。中東地域の平和と安定はわが国にとっても極めて重要であり、当事者に対して事態の沈静化を強く働きかけていく」としています。そのうえで「政府としては、在外邦人の保護に万全を期すとともに、事態の更なる悪化を防ぐべく、必要なあらゆる外交努力を行っていく決意だ」としています。

イラン国連代表部「この問題は完了したとみなしうる」SNS投稿

イランの国連代表部はSNSへの投稿で、今回の大規模攻撃について「この問題は完了したとみなしうる」としてイランとしては、大使館攻撃に対するイスラエルへの報復はひとまず果たしたという考えを示しました。

一方で「しかし、イスラエルがまた過ちを犯せばイランの対応はより厳しいものになる」と述べ、イスラエルをけん制し、報復の応酬は避けたい考えをにじませました。

バイデン大統領「可能なかぎり最も強いことばで非難」

アメリカのバイデン大統領は13日、イランによるイスラエルへの攻撃について声明を出し「可能なかぎり最も強いことばで非難する」と強調しました。

そして「私の指示により、イスラエルの防衛を支援するため、アメリカ軍はここ1週間、航空機やミサイル駆逐艦をこの地域へと移動させてきた。こうした部隊の展開のおかげで、われわれは、イスラエルが、ほぼすべての無人機やミサイルを撃墜するのを支援した」と強調しました。

バイデン大統領とネタニヤフ首相が電話会談

ホワイトハウスによりますと、バイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が13日夜、日本時間の14日午前に電話で会談しました。現時点で内容は明らかになっていませんが、イランがイスラエルを攻撃したことを受け、今後の対応などをめぐって意見を交わしたものとみられます。

空の便に影響 イスラエルやイランなどの空域が閉鎖

アメリカのFAA=連邦航空局がまとめている各地の航空情報や、複数の海外メディアによりますとイスラエルやイランなどの空域が閉鎖され、民間の航空機が欠航するなど空の便に影響が出ています。

FAAなどによりますと、空域が閉鎖されているのは、イスラエルのテルアビブや、イランのテヘラン、レバノンの上空などで、各地でフライトが欠航しています。

このうちスイス・インターナショナル・エアラインズは、NHKの取材に対し、イスラエルのテルアビブを離着陸する便について、当面、安全上の理由で運航を見合わせると回答しました。ほかの便についても、中東の上空を避けて飛行するため通常より時間がかかる場合があるとしています。

また海外メディアによりますとアメリカのユナイテッド航空も、テルアビブに向かう便の少なくとも一部について欠航を決めたということです。

イスラエル軍 “防空システムでミサイルの大部分を迎撃”

イスラエル軍は14日、SNSを更新し、イランから発射された数十発の地対地ミサイルがイスラエルの領内に近づいたことが確認され、防空システム「アロー」を使ってイスラエル領内に入る前に大部分を迎撃したと明らかにしました。一方で、イスラエル南部の軍の基地を含む数か所での着弾が確認され、軽微な被害が出ているとしています。

この投稿の中で、イスラエル軍は空軍の作戦センターの様子だとする30秒の動画を公開しました。動画の中では、多くのモニターがある部屋で何かを指しながら話し合う様子や、連絡をとりあっているような様子が確認できます。また、イスラエルに接近するあらゆる脅威を迎撃するため、戦闘機を運用しているとしています。

同時に投稿されたここ数週間のイスラエル空軍の準備の様子だとする1分ほどの映像では、機体などを整備する様子や軍用機が深夜に飛び立つ様子が映っています。

日本政府関係者「邦人に被害が生じることがないよう呼びかけ」

政府関係者は、NHKの取材に対し「岸田総理大臣には随時、状況は報告している。イスラエルをはじめ各国に滞在中の邦人に対し現地の大使館から注意喚起を行っており、引き続き邦人に被害が生じることがないよう呼びかけていく」と述べました。

国連安保理 緊急会合開催へ イスラエルが議長国などに開催要請

イスラエルに向けてイランからとみられる複数の無人機やミサイルが発射されたことを受け、イスラエルは国連安全保障理事会の緊急会合を開催するよう要請する書簡をグテーレス事務総長と今月の議長国のマルタに送りました。議長国マルタは14日午後、日本時間のあす午前5時から緊急会合を開催する方向で調整しています。

国連事務総長「敵対行為を直ちにやめるよう求める」

国連のグテーレス事務総長は13日、声明を発表し、「イランが今晩、イスラエルに対して行った大規模な攻撃に代表される深刻な事態の悪化を強く非難する。こうした敵対行為を直ちにやめるよう求める」と述べました。

そのうえで「中東の複数の戦線で大きな軍事衝突につながる行動を避けるよう、すべての当事者に対し最大限の自制を求める。この地域も世界も、もう一つの戦争に対応する余裕はないと繰り返し強調してきた」と訴えました。

米国防総省「米軍が無人機を中東地域で撃墜し続けている」

アメリカ国防総省の当局者は13日、NHKの取材に対し「イスラエルの安全に対するわれわれの鉄壁の関与に基づき、アメリカ軍は、イランがイスラエルを標的に飛ばした無人機を中東地域で撃墜し続けている」と明らかにしました。

そのうえで「アメリカ軍は態勢を維持し、さらなる防衛支援を提供するとともに、この地域で活動するアメリカ軍の部隊を守る」としています。

バイデン大統領「イスラエルの安全への関与は揺るがない」

アメリカのバイデン大統領は13日、旧ツイッターのXに「イランのイスラエルに対する攻撃について最新情報の報告を国家安全保障チームから受けた。イランやその支援勢力の脅威に対するわれわれのイスラエルの安全への関与は揺るがない」と投稿し、イスラエルを支援する姿勢を鮮明にしました。

また、ホワイトハウスで危機管理にあたるための「シチュエーション・ルーム」にオースティン国防長官やサリバン大統領補佐官ら国家安全保障チームを集めて対応を協議している様子を写した写真もあわせて投稿しました。

イスラエル軍のラジオ局“100機以上の無人機が迎撃”

イスラエル軍のラジオ局は現地時間午前1時半ごろ、日本時間の午前7時半ごろ、関係者の話として100機以上の無人機がイスラエルの領土の外で迎撃されたと伝えました。

“防空システムが複数のイランの無人機を撃墜”

アメリカのCNNテレビなど複数のメディアは13日、アメリカ政府当局者の話として、アメリカが中東に展開している防空システムが複数のイランの無人機を撃墜したと伝えました。ただ、当局者は、どこでどのように撃墜したのかなど詳細は明らかにしていないとしています。

“無人機は「シャヘド136」も含まれている”

革命防衛隊とつながりのあるメディアの「タスニム通信」は今回発射された無人機のタイプについて、「シャヘド136」も含まれていると伝えました。これは自爆型の無人機で、イランがロシアに供与し、ウクライナへの軍事侵攻に使われて甚大な被害をもたらしていると欧米などから指摘されているものです。飛行可能な距離は2000キロ前後と推定され、1機ごとの攻撃力は限られるものの、大量に飛ばすことで一部の機体が防空システムをかいくぐるような運用方法が特徴だとされています。

イスラエル南部で7歳の女の子が重傷

イスラエル各地でイランからの無人機によるとみられる攻撃が相次ぐ中、イスラエルの救急当局は14日、SNSへの投稿で南部の町アラド近郊で7歳の女の子が重傷を負って治療を受けていると明らかにしました。

イラン国連代表部「アメリカは距離を」

イランの国連代表部は、SNSへの投稿で「イスラエルが再び過ちを犯すならば、イランの対応は一層厳しいものになるだろう」として、イスラエルをけん制しました。そのうえで「これはイランとイスラエルの戦いだ。アメリカは距離を取らなければならない」として、アメリカに対し、イスラエルを支援するのを控えるよう求めました。

イスラエル首相「どのようなシナリオにも準備できている」

イランから複数の無人機が発射されたことを受けて、イスラエルのネタニヤフ首相は現地時間13日深夜、「ここ数年、特にここ数週間、イスラエルはイランによる直接攻撃に備えてきた。防衛システムが配備されていてどのようなシナリオにも準備ができている」とする声明を出しました。

米ホワイトハウス“攻撃は数時間にわたる可能性高い”

アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議のワトソン報道官は13日、声明を出し「イランがイスラエルに対する攻撃を開始した。バイデン大統領は、国家安全保障チームから定期的に状況の報告を受けており、このあと、ホワイトハウスで協議する予定だ。安全保障チームはイスラエルやパートナー国、同盟国と定期的に連絡を取り合っている。攻撃は数時間にわたって行われる可能性が高い」としています。

そのうえで「バイデン大統領は、イスラエルの安全に対するわれわれの支持は揺るぎないと明言している。アメリカはイスラエルの人々とともにあり、イランからのこうした脅威に対する防衛を支援する」として、アメリカによるイスラエルの防衛への関与を強調しました。

イギリス首相 EU上級代表が攻撃を非難

イギリスのスナク首相は、イランがイスラエルに向けて複数の無人機を発射したことを受けて「イスラエルに対するイランの無謀な攻撃を最も強いことばで非難する」と声明を発表しました。スナク首相は「イランは自国の裏庭に混乱の種をまくつもりだということを改めて示した。イギリスはイスラエルの安全、ヨルダンやイラクを含む地域のパートナーのために立ち向かう」などとして、状況の安定化とさらなる緊張の拡大の防止に緊急に取り組んでいるとしています。

また、EUの外相にあたるボレル上級代表もSNSに投稿し「EUはイスラエルに対するイランの容認しがたい攻撃を強く非難する。これは前例のないエスカレーションであり、地域の安全に対する重大な脅威だ」としています。

バイデン大統領 予定切り上げホワイトハウスへ

アメリカ・ホワイトハウスは、バイデン大統領が、13日、急きょ、予定を切り上げホワイトハウスへ戻り、中東情勢をめぐって、国家安全保障チームと協議すると明らかにしました。

バイデン大統領は、今月14日まで東部デラウェア州に滞在する予定でした。

一方、アメリカ国防総省は13日、オースティン国防長官とイスラエルのガラント国防相が電話で会談したと発表しました。

会談の中で、オースティン長官は「イスラエルの防衛に対するアメリカの支援は揺るぎない」と強調したとしています。

その上で「イランやその支援を受ける勢力によるいかなる攻撃からも、アメリカはイスラエルを防衛するため、全面的に支援することを約束する」と伝えたとしています。

また、ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官はみずからのSNSに投稿し、イスラエルのハネグビ国家安全保障顧問と電話で会談し、中東情勢をめぐって協議したと明らかにしました。

会談の中でサリバン補佐官は「アメリカによるイスラエルの安全に対する関与は鉄壁だ」と強調したとしています。

<イランとイスラエル>

イランとイスラエルのこれまで

激しく対立するイランとイスラエルはかつてイランが親米国家だった王政時代には、友好的な関係にありました。

しかし、1979年のイスラム革命で宗教指導者が統治する現体制を確立して以来、イランはイスラエルをイスラム教の聖地でもあるエルサレムを奪った敵とみなして国家としても認めていません。

これに対し、イスラエルもイランがパレスチナのイスラム組織ハマスや、レバノンのシーア派組織ヒズボラを支援し、国の安全や存亡を脅かしているとして敵視してきました。

2000年代にイランが核兵器を開発している疑惑が持ち上がると、イスラエルは、イランの核開発を阻止する動きを強め、対立は一層先鋭化しました。

近年は双方によるとみられる暗殺や攻撃が相次ぎ、「シャドー・ウォー=影の戦争」とも呼ばれる状態が続いてきました。

イランでは2020年、核開発を指揮してきた研究者が何者かに殺害された上、核関連施設での火災などがたびたび起き、イラン側はいずれもイスラエルの犯行だと主張しました。

一方、近海のオマーン湾ではイスラエルの企業や経営者が関わる船舶が相次いで攻撃され、イランによる報復と見られています。

ガザ地区でイスラエルとハマスの戦闘が始まると、対立はさらに深まり、イスラエルは隣国シリアにあるイランの軍事精鋭部隊・革命防衛隊の拠点などへの攻撃を強めています。

去年12月には革命防衛隊の幹部で、国外の特殊任務を担う「コッズ部隊」の軍事顧問としてシリアで活動していたムサビ准将がミサイル攻撃で殺害されたほか、ことし1月にもシリアで革命防衛隊の軍事顧問5人が殺害され、イランはいずれもイスラエルによる攻撃だと非難しています。

一方、イランはことし1月、隣国イラクにあるイスラエルの情報機関モサドの拠点を弾道ミサイルで攻撃したと発表し、革命防衛隊の幹部を殺害された報復だとしていました。

イラン大使館攻撃と報復宣言

今月1日、シリアの首都ダマスカスの中心部で、イラン大使館の領事部の建物がミサイルによる攻撃で破壊されました。

イランの国営メディアは軍事精鋭部隊の革命防衛隊で、国外の特殊任務にあたる「コッズ部隊」の司令官1人と副官を含むあわせて7人が殺害されたほか、シリア人の市民6人も死亡したと伝えています。

現地の映像には、通りに面した建物が大きく崩れ、がれきが散乱している様子が写っています。

攻撃についてイランの最高指導者ハメネイ師は2日に出した声明で「憎しみに満ちたイスラエルの政権による犯罪だ」としてイスラエルによる攻撃だと非難しました。

その上で「邪悪な政権は罰せられるだろう。われわれは神の力によってこの犯罪を後悔させる」として報復を誓いました。

また、今月10日には「イランの領土への攻撃とみなされる。邪悪な政権は罰せられなければならない」と演説し、改めてイスラエルへの報復を宣言しました。

一方、イスラエルはこの攻撃への関与を明らかにしていませんが、イスラエル軍の報道官は、アメリカのCNNの取材に対し「建物は領事館でも大使館でもない。ダマスカスにあるコッズ部隊の軍事施設だ」と主張しています。

“イランがイスラエル関係の船舶を拿捕(だほ)”

イランの国営通信は13日、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海上交通の要衝、ホルムズ海峡付近で、イランの軍事精鋭部隊・革命防衛隊の海軍が、イスラエルに関係のある船舶を拿捕(だほ)したと伝えました。

イラン側は、これまでのところ正式な声明などは出していませんが、シリアにあるイラン大使館を攻撃されたことへの報復措置の一環である可能性があります。これに対して、イスラエルのカッツ外相はSNSでイランに対し「ハマスの犯罪を支援するばかりか、国際法に違反して海賊行為をしている」と非難した上で、国際社会に対し、イランに制裁を科すよう呼びかけました。

一方、イスラエル北部では前日に、イランの支援を受けるヒズボラが複数の攻撃を行ったのに続き、13日も、イスラエル北部で防空警報が断続的に出されました。イスラエル軍は「ヒズボラの無人機2機がレバノンから飛来し、爆発した」として、レバノン南部を砲撃したとしています。

こうした状況の中、イスラエル軍のハガリ報道官は13日、声明を発表し、「イランがこれ以上、事態を緊迫させる選択をするなら、その責任を負うことになる。イスラエル軍は同盟国とともに、必要な措置を取るだろう」と、警告していて、中東地域では緊張状態が続いています。

ゴラン高原とは

ゴラン高原はもともとシリアの領土ですが、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが大部分を占領し、1981年に一方的に併合しました。

国連の安全保障理事会の決議ではこの併合を無効だとして、イスラエルに撤退を求めましたが、イスラエルはその後も占領を続けています。

2019年にはアメリカの当時のトランプ大統領が歴代の政策を覆し、ゴラン高原についてイスラエルの主権を認める宣言に署名し、国際社会からの批判を招きました。

ゴラン高原に設けられた非武装地帯には、シリアとイスラエルの停戦を監視するPKO=平和維持部隊が展開し、日本の自衛隊も1996年から参加していましたが、シリアの内戦による情勢の悪化を受けて、2013年までに撤収しています。

イランの軍事力は

イランは中東有数の軍事大国とされます。

その軍事力は1979年のイスラム革命以前から国防を担ってきた「正規軍」と、革命後に成立した政治体制を保持する目的で発足した「革命防衛隊」の2つの組織で構成されます。

それぞれが陸海空軍を持ち、イギリスのシンクタンク、国際戦略研究所が発行する「ミリタリー・バランス」によると、総兵力は61万人。

内訳は正規軍が42万人で、革命防衛隊が19万人とされています。

近年、特に力を入れてきたのが、ミサイルと無人機の開発です。

そうした兵器の多くを公開した去年9月の軍事パレードで、ライシ大統領は「われわれの軍隊は兵器を輸入する側から、輸出する側になり、その能力を世界から認められるようになった」と自信をのぞかせていました。

このうち、ミサイルについてイランは、敵対するイスラエルの全土を狙うことができる射程およそ2000キロの弾道ミサイルを持っているほか、去年(2023年)6月には音速をはるかに超える速さで飛行する極超音速ミサイルを開発したとして公開しています。

また、イラン産の無人機をめぐっては、イランは否定しているものの、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに供与されて、甚大な被害をもたらしていると欧米から指摘されるなど、開発能力の高さが注目されています。

イラン主導「抵抗の枢軸」とは

去年10月にイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、活動を活発化させているのが、イランが主導し、「抵抗の枢軸」と呼ばれる中東各地の武装組織のネットワークです。

イランは直接的な軍事介入は行っていませんが、イランが支援するこうした武装組織はイスラエルや中東に駐留するアメリカ軍への攻撃を繰り返しています。

「抵抗の枢軸」はハマスのほか、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやイエメンの反政府勢力フーシ派、それに、イラクやシリアの民兵組織などで構成されています。

このうち、ヒズボラはレバノン南部からイスラエルに対し、ロケット弾や無人機での攻撃を続けているほか、フーシ派はイスラエルへのミサイル攻撃や紅海周辺を航行する船舶への攻撃を続けています。

また、イラクやシリアでは民兵組織が、駐留するアメリカ軍への攻撃を繰り返してきました。

イスラエルとイランの報復の応酬が激しさを増せば、こうした武装組織も巻き込んで、中東情勢がさらに緊迫化するおそれがあります。

<イランとアメリカ>

アメリカのこれまでの対応

去年10月にイスラエルとハマスの衝突が始まってから、アメリカは、イスラエルと敵対するイランが混乱に乗じて介入し、中東地域に戦闘が拡大することを強く警戒してきました。

衝突のおよそ1か月後の去年11月には、イランを念頭に、抑止力を高めるため、空母2隻を一時、イスラエルに近い地中海に展開させました。一方、イランが支援する民兵組織はハマスとの連帯を掲げ、イラクやシリアに駐留するアメリカ軍の部隊に対し無人機やロケット弾などで攻撃を始めたほか、イランが後ろ盾となっているイエメンの反政府勢力、フーシ派も紅海を航行する民間の船舶やアメリカ軍の艦艇への攻撃を繰り返すようになりました。

ことし1月にはシリアとの国境に近いヨルダンにあるアメリカ軍の拠点が親イランの武装組織に攻撃され、兵士3人が死亡し、アメリカは2月、その報復措置として、イラクとシリアの領内にある、イランの軍事精鋭部隊の関連施設などを空爆しました。さらに、アメリカ軍はイギリス軍とともにフーシ派の拠点を攻撃するなど、イランが支援する武装組織への圧力を強めてきました。ただ、バイデン大統領は「中東地域での戦闘の拡大は望まない」と繰り返し強調し、イラン領内への直接的な攻撃は控えてきました。

シリアにあるイランの大使館がイスラエルによるとみられる攻撃を受け、イランがイスラエルに対する報復措置をとる構えを見せる中、今月10日、バイデン大統領は「イランやイランが支援する組織からの脅威に対するイスラエルの安全保障へのわれわれの関与は揺るがない。イスラエルの安全のためにできるかぎりのことを行う」と述べ、イランを強くけん制しました。また、ブリンケン国務長官も、イランと友好関係にある中国の王毅外相のほか、中東各国の外相とも電話で会談し、イランの報復措置を防ぐため、外交的な働きかけを強めていました。

米軍 空母打撃群を中東地域に展開

アメリカが現在、イランへの対応を念頭に中東地域に展開しているのが、空母「アイゼンハワー」を中心とする空母打撃群です。

空母「アイゼンハワー」を中心とする空母打撃群は、緊急事態などに海上兵力を機動的に展開することが主な任務で、ミサイル巡洋艦「フィリピン・シー」やミサイル駆逐艦「メイソン」などで構成されています。空母「アイゼンハワー」には、F18戦闘機やE2早期警戒機などが搭載されています。「アイゼンハワー」を中心とする空母打撃群はこれまで紅海で、イランが支援するイエメンの反政府勢力フーシ派への対応にあたり、ことし2月、アメリカ軍とイギリス軍がフーシ派の支配地域を攻撃した作戦にも参加しています。

イラン 過去にも大規模な報復攻撃

イランは、過去にも、軍事精鋭部隊・革命防衛隊の著名な司令官が殺害されたことを受けて敵対する国に対して大規模な報復攻撃を行ったことがあります。

2020年1月、アメリカ軍は当時のトランプ大統領の指示にもとづいて、イランの革命防衛隊のソレイマニ司令官を隣国のイラクで殺害しました。

ソレイマニ司令官は、イランでは、中東での自国の影響力を拡大する上で大きな役割を果たしたとして、国内で英雄視されていたため、イランは激しく反発し報復すると宣言しました。

殺害から5日後に、イランは、イラクにあるアメリカ軍の拠点を10発以上の弾道ミサイルで攻撃し両国の間で全面的な軍事衝突に発展するおそれが高まりました。

ただ、アメリカ人兵士らに死者は出ず、当時のトランプ大統領はさらなる反撃は行わず、イランへの対抗措置としては新たな経済制裁を科すことを選びました。

結果として、両国の対立はその後も続いたものの、軍事的に事態がそれ以上、エスカレートすることは避けられました。