「より弱いものに攻撃」犬や猫、牛まで…動物虐待疑い事件急増

去年、動物への虐待の疑いで全国の警察が検挙した事件は181件。

これまでで最も多くなり、最近10年で4倍近くに急増していることが警察庁のまとめでわかりました。

ペットなどの動物の「遺棄」や「殺傷」、SNS関連の事件が相次ぐその背景について、専門家に聞きました。

(午後LIVE ニュースーン 午後5時台で放送)

NHKプラスで配信:午後LIVE ニュースーン 午後5時台

警察庁によりますと、去年、ペットなどの動物を虐待したとして、全国の警察が動物愛護法違反の疑いで検挙した事件は、おととしを15件上回る181件でした。

これは、統計がある2010年以降で最も多く、2014年以降の10年ではおよそ3.8倍に増えています。

「遺棄」や「殺傷」 SNS関連の事件も

動物の種類別では、猫が97件、犬が65件、その他、ニワトリやハムスター、ウサギやウシ、ウマ、カメやフェレットが虐待されたケースがありました。

猫と犬が虐待された162の事件のうち、
▽飼育を放棄して捨てるなどの「遺棄」が64件、
▽「殺傷」が41件、
▽餌を与えなかったり、不衛生な環境で飼育したりしたケースが57件でした。

通報の増加 動物愛護への関心の高まりからか

島根県では、牛を蹴るなどの暴行を加えて虐待し、撮影した映像を動画投稿アプリに投稿していた農場の元従業員が書類送検されるなど、SNSに関連した事件も起きています。

動物虐待の検挙が増えている背景について、警察庁は、コロナ禍のペットブームをはじめ、近年の動物愛護への社会の関心の高まりが、通報の増加という形でも表れているのではないかとしています。

「より弱い者に攻撃 人間社会の問題も影響」

動物虐待などの問題に取り組む弁護士や獣医師らのNPO法人「どうぶつ弁護団」で理事長を務めている細川敦史弁護士は「動物愛護への関心自体は近年、急速にではなく、ここ20年ほどかけて徐々に高まってきている」としたうえで、次のように話しています。

「社会の少子化や晩婚化が進む中で、ペットを家族の一員のような存在だと考える人が増えている。同時に、自分のペット以外の動物についても、ひどい扱いを受けることはよくないことだという考え方が広がり、通報が増えているのではないか」

細川弁護士によりますと、これまでNPOに寄せられた動物虐待の情報の半数ほどが「YouTube」や「インスタグラム」など、SNS上に投稿された写真や動画に関連するものだということです。

「虐待の動画で、再生回数を増やし、承認欲求を満たすことや金を手に入れたいという目的が感じられるケースもある。大きな動物ではなく、小さくて弱い動物ほど被害に遭いやすく、より弱い者に攻撃が向かいやすいという人間社会の問題も、動物虐待に影響を与えていると感じる」

飼い主から引き取り要請も…保護施設「最後まで責任を」

神奈川県平塚市にある「県動物愛護センター」の施設では、犬や猫、うさぎなどあわせて150匹以上の動物を保護しています。

飼い主から捨てられるなどしたペットを、新たな飼い主につなげる取り組みのほか、高齢になったり、経済的な余裕がなかったりしてペットを手放したいと考える人たちからの相談にも応じています。

高齢や経済的な事情を理由にした飼育放棄に加え、最近、増えているのが、数が多くなりすぎて適正な飼育ができない「多頭飼育崩壊」と呼ばれる状況で見つかったペットたちだということです。

施設の担当者は、こうした飼育環境では虐待へと事態が悪化するおそれもあると指摘します。

神奈川県動物愛護センター 飯川俊郎課長
「管理が行き届かず動物が死んでいたり、病気のまま放置されていたり、虐待につながりかねない事案もあります。飼われた動物にとっては飼い主がすべてです。

動物を飼う人には命を預かっているという強い自覚が必要で、最後まで責任を果たしてほしいですが、ちょっとでも自分が飼うのが大変だと思い始めたら頭数に関係なく最寄りの保健福祉事務所に相談してほしいと思います」