あなたの地域の男女格差は? “ジェンダーギャップ”公表

国連が定めた「国際女性デー」にあわせ、大学教授らのグループが政治や経済などの分野ごとの男女比を分析した結果が公表され、特に政治の分野では女性の比率が低く、ジェンダーギャップ=「男女間の不平等」が浮き彫りになりました。

※記事の後半では「政治」「行政」「教育」「経済」の分野ごとに、上位5つと下位5つの都道府県を掲載しています。

(※2024年4月 修正されたデータに基づき、3月8日に公開した記事を再公開しました。)

“男女不平等” それぞれの都道府県の現状は

上智大学の三浦まり教授らによるグループは政治、行政、教育、経済の4つの分野で男女比を都道府県ごとに分析して毎年、国際女性デーにあわせて公表しました。今回は3回目となります。

政治の分野は、都道府県議会や市区町村議会などにおける男女比を分析し、「0」が男女不平等、「1」に近づくほど男女平等を意味する指数を都道府県ごとに算出しています。

それによりますと、最もジェンダーギャップが小さいのは▼東京都で0.352、続いて▼神奈川県で0.257、▼千葉県で0.252などとなっています。

一方で、ジェンダーギャップが大きかったのは、▽山梨県で0.138、次いで▽宮崎県で0.139、▽佐賀県で0.144などとなりました。

また、分析した三浦教授は指数は0.1台にとどまるものの▽大分県は44位から26位に香川県は31位から18位に鹿児島県は46位から36位と去年よりも順位があがったことを注目点とし、改善する傾向がみられたとしています。

▽大分県では参議院議員や市長に女性が当選したほか、▽香川県では県議会議員で女性が2人から9人に増え、▽鹿児島県でも県議会議員で女性が5人から11人に増えたことなどが要因だとしています。

46位から36位に 順位上がった鹿児島は

政治の分野で去年の46位から36位と順位を伸ばした鹿児島県。
去年の県議会議員選挙で女性議員が5人から11人と2倍以上に増え、女性の視点を政策に生かそうとする党派を超えた新たな動きが出ています。

鹿児島県は去年4月に行われた県議会議員選挙で、女性議員の数が改選前の5人から2倍以上の11人に増えて過去最多となり、定員51人のうちの21.6%となりました。この選挙への女性の立候補は12人と前回よりも5人多く、過去最多でした。

都道府県議会の女性議員の割合(去年4月時点)
▼東京都 31.1%
▼香川県、岡山県、京都府、鹿児島県 20%を超える

※内閣府まとめ

女性議員からは「今のこの閉塞感や地方が抱える課題を女性の力で解決できるのではないかという期待を感じている」とか、「政治でも女性の活躍に期待する声は以前より広がっていると感じ、女性の声を多く届けてほしいという期待が大きかったのではないか」という声が聞かれました。

女性議員が増えたことで、改選後の去年6月からこれまでに県議会で質問を行った女性議員はのべ20人で、改選前の1年間はのべ9人だったのと比べて倍以上となり、子どもの医療費の給付など子育てや教育に関する質問が多く上がりました。

さらに、去年5月、党派を超えて女性議員の連携を図り、政策立案に女性の視点を生かすことを目的として懇話会が発足しました。懇話会での議論がきっかけとなり、▽新たに傍聴に訪れた人も使える授乳用のスペースを設けることになったほか、▽これまで男性用が多かった議会棟のトイレを女性用に転換して男女同数にしたということです。

懇話会では女性職員が少ない県の部署があることや、県内には女性議員がゼロの町村議会もあることなどの課題もあがり、「職業の選択肢が増えるよう教育から変えていかないといけない」とか「女性が働きやすく、子どもを生み育てやすくなるような政策を発信していくことが重要だ」などの意見が交わされていました。

懇話会では今後、県内の市町村のおよそ6割で制定されていない男女共同参画に関する条例の制定を呼びかけていくということです。

「県議会女性議員懇話会」世話役 柳誠子 議員
「政治の世界に女性が少ないという認識だったと思うが、このジェンダーに関する県民の意識を変えていきたい。男性も女性も、性別にかかわらず多様な人材が議会には必要で、県議会の女性議員がみんなで動いているのが目にとまってあの人たちに相談してみようという声がまた出てくるようになれば非常にありがたいと思う」

専門家 “自由に生きられる社会を作る責任がある”

分析を行った上智大学の三浦まり教授は調査結果について「とりわけ男女格差が大きいのが政治の分野だった。これは女性が意思決定、政治の場に十分に参画していないことを意味する。政治というのは政策や予算配分を決めたりする場になるので、そこに女性が参画していないということは、女性にとって不利になってしまう政策が立案されるおそれがある」と指摘しています。

こうした中で鹿児島県が去年の46位から36位と順位を上げたことについて「女性の参画が難しい地域の風土があると思っていたが、県議会で女性が2割を超えた。地域全体で女性を押し出そうという機運が高まって、女性議員がネットワークを作ってお互いに支え合って出る人を押し出していく、そういった取り組みがあると、女性が出やすくなってくる」と評価しました。

その上で、三浦教授は女性の議員を増やすには仕組み作りが必要だと指摘し「何らかの形で女性が議会や行政に関わる機会を増やすことも有効だ。たとえば模擬議会を開く、行政や地域の課題を話し合うような市民参加の取り組みを行う、それに自治体の政策に対して意見を言える仕組みをつくって女性に参加してもらうなどさまざまな取り組みを積極的に行うことが重要だ」と話しています。

また、ジェンダーギャップを解消する取り組みを進める意義について「ジェンダー平等であるべきという『規範』と『実態』が今、すごくかい離している。やはり若い世代はジェンダー平等が当たり前だと思っている中で現実が違うというのは未来に対して希望を失ってしまう。男性であれ女性であれ、どのような性であれ、自由に生きられる社会を作っていく責任があると思う」と話していました。

「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」詳細

ことしの「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」で公表された政治、行政、教育、経済4つの分野での上位5つと下位5つの都道府県です。

「0」が男女不平等、「1」に近づくほど男女平等を意味する指数を都道府県ごとに算出

政治分野の1位は東京都

政治分野は▽選挙区選出の国会議員、▽都道府県議会、▽歴代知事の在職年数の男女比など6つの指標を使用しています。

上位は1位 東京都(0.352)2位 神奈川県(0.257)3位 千葉県(0.252)4位 大阪府(0.248)5位 山形県(0.244)

下位は47位 山梨県(0.138)46位 宮崎県(0.139)45位 佐賀県(0.144)44位 富山県(0.146)43位 石川県(0.147)

行政分野の1位は鳥取県

行政分野は▽都道府県や市区町村の管理職や▽都道府県職員の育休取得率の男女格差など10の指標を使用しています。

上位は1位 鳥取県(0.439)2位 福井県(0.372)3位 徳島県(0.357)4位 福岡県(0.343)5位 島根県(0.339)
(※当初は「4位島根県、5位福岡県」としていましたが、2024年4月8日、データをまとめたグループが「4位福岡県、5位島根県」に修正しています。)

下位は47位 北海道(0.211)46位 山梨県(0.218)45位 千葉県(0.233)44位 宮崎県(0.236)43位 鹿児島県(0.237)

教育分野の1位は広島県

教育分野は▽4年制大学の進学率の男女差、▽小中学校や高校の校長や▽都道府県教育委員会の委員の男女比など7つの指標を使用しています。

上位は1位 広島県(0.68)2位 徳島県(0.675)3位 東京都(0.674)4位 富山県(0.669)5位 神奈川県(0.667)

下位は47位 北海道(0.519)46位 大分県(0.533)45位 埼玉県(0.542)43位 福島県(0.543)43位 山梨県(0.543)

経済分野の1位は鳥取県

経済分野は▽フルタイムの仕事に従事する男女間の賃金格差、▽共働き家庭の家事・育児などに使用する時間の男女格差、▽社長の人数の男女比など7つの指標を使用しています。

上位は1位 鳥取県(0.452)2位 高知県(0.45)3位 東京都(0.449)4位 徳島県(0.448)5位 沖縄県(0.447)

下位は47位 北海道(0.403)46位 三重県(0.405)45位 長崎県(0.413)44位 滋賀県(0.414)42位 千葉県(0.415)42位 静岡県(0.415)

加藤女性活躍相「当事者としての感覚を持ちながら」

加藤女性活躍担当大臣は閣議のあとの記者会見で「政治分野では立候補や議員活動と、家庭生活との両立という困難があり、まさに私自身も体験している。人材育成の機会の不足や候補者などへのハラスメントの存在もあり、困難に直面する女性政治家の卵も多くいると思う」と述べました。

その上で「女性が政治参画しやすい環境を整えるため、地方議会で議員活動と家庭生活の両立を支援する会議規則の整備を促すなど努力を続けたい。当事者としての感覚を持ちながらしっかり応援していきたい」と述べました。