皆既日食 アメリカで7年ぶりに観測 数分間 夜のように暗くなる

太陽が月と重なり完全に隠れる皆既日食が8日アメリカを横断する形で見られ、晴れた地域では、皆既日食になった数分間、あたりが夜のように暗くなりました。

皆既日食は、太陽と月と地球が一直線に並び、地球から見た太陽が月と重なって完全に隠れる珍しい天体現象で、8日、北米の一部の地域で見られました。

このうちアメリカでは、南部テキサス州から東部メーン州にかけて大陸を斜めに横断する形で見られ、晴れた地域では太陽が徐々に欠けていく様子が観測され、皆既日食になった数分間、あたりが夜のように暗くなりました。

アメリカで皆既日食が観測されたのは2017年以来です。

皆既日食が見られた場所には大都市も含まれ、ほかの広い地域でも太陽の一部が欠ける部分日食になったことから、各地では大きな盛り上がりを見せました。

アメリカでは各地でさまざまなイベントや商品が企画され、アメリカの民間調査会社は、経済効果をアメリカ全体でおよそ60億ドル、日本円でおよそ9000億円に上ると試算しています。

NASA=アメリカ航空宇宙局や日本の国立天文台によりますと、アメリカ本土で次に皆既日食が見られるのは20年後の2044年、日本では11年後の2035年だということです。

ナイアガラの滝の近くでも多くの人が

アメリカとカナダの国境沿いにある観光名所、ナイアガラの滝の近くでも、皆既日食を見ようと、多くの人が集まりました。

集まった人たちは、日食を安全に見るための「日食グラス」などをかけて空を見上げながら様子を見守り、皆既日食が見られると、大きな歓声をあげていました。

南部ジョージア州のアトランタから訪れた女性は「暗くなっていく様子を見て、忘れられない経験になった」と興奮気味に話していました。

NASA=アメリカ航空宇宙局によりますとナイアガラの滝付近では、3分半ほどにわたって、皆既日食が見られたということです。

テキサスでも 「圧倒されて涙が出ました」

アメリカ南部テキサス州アーリントンでも、多くの人が皆既日食を見届け、月の影から太陽の光が漏れて指輪のように輝くダイヤモンドリングと呼ばれる現象が見られると大きな歓声が上がっていました。

皆既日食を見た32歳の女性は「本当にすばらしかったです。いままでにない経験で、真っ暗になったとき、ずっと叫んでいました。圧倒されて涙が出ました」と話していました。

西部ニューメキシコ州から訪れた72歳の男性は「ここで皆既日食を見られるのは一生に一度です。とても特別な経験でした」と話していました。

NASA=アメリカ航空宇宙局によりますとアーリントンでは、3分20秒ほどにわたって、皆既日食が見られたということです。

東部バーモント州ニューポートにも多くの人が

カナダとの国境沿いにあるアメリカ東部バーモント州のニューポートにも多くの人が集まり、安全に見るための「日食グラス」をかけて皆既日食の瞬間を待ちました。

集まった人たちは、次第に太陽が欠けていく様子をじっと観察したり、紙に開けた丸い小さな穴を通った光が日食で欠けた太陽と同じ形になるのを確かめたりしていました。

皆既日食が起きる直前には、上空で太陽に向かって西から大きな月の黒い影が近づいていき、空を次第に覆っていく現象も見られました。

そして、あたりが夜のように暗くなると、お互いに顔を見合わせて歓声を上げていました。

東部ペンシルベニア州から訪れた姉妹は「皆既日食になるとすごく寒くなった」とか「世界一きれいだと思った」などと興奮した様子で話していました。

NASA=アメリカ航空宇宙局によりますとニューポートではおよそ3分半にわたって、皆既日食が起きたということです。

NY中心部では「部分日食」 国連本部でも職員らが楽しむ

ニューヨーク中心部では太陽が90%近く欠ける「部分日食」が観測され、マンハッタンにある国連本部でも、国連の職員やスタッフ、それに各国の国連大使や外交官らおよそ500人が国連内の庭に集まりました。

この日も国連では、安全保障理事会や総会の会合が開かれていましたが、部分日食が起きた時間帯には多くの人たちが屋外に出て、ニューヨークでは品薄になった、安全に見るための「日食グラス」を交代で使うなどして、珍しい天体現象を楽しんでいました。

国連職員の女性は「はじめての経験だったのでとても感動しました」と話していたほか、インターンとして働いているドイツ出身の女性は「忙しいスケジュールの合間を縫って日食を見るために集まり、すべての人が興味をかきたてられたんだと思います」と話していました。

ISSからも日食観測

今回の日食は、地球の上空およそ400キロを周回しているISS=国際宇宙ステーションからも観測されました。

NASA=アメリカ航空宇宙局が公開した映像では、太陽の光を月が遮ることでできたとみられる大きな月の黒い影が地球の表面を覆い、ゆっくりと移動していく様子が確認できます。

NASAは旧ツイッターのXに「宇宙から皆既日食を見たことがありますか?これが宇宙ステーションからの宇宙飛行士の眺めです」とメッセージと動画を投稿しました。