石川 穴水町 家屋の公費解体始まる 約1900棟が全半壊

能登半島地震でおよそ1900棟の家屋が全半壊した石川県穴水町では、所有者に代わって自治体が公費で家屋を解体する工事が8日から始まりました。

能登半島地震の被災地では、全半壊した建物の解体や撤去を自治体が費用を負担して行う「公費解体」が進められています。

このうち、およそ1900棟の家屋が全半壊した穴水町では、8日から工事が始まりました。

現場には町から委託を受けた業者が入り、住民が見守る中、重機を使って家屋の壁や屋根を解体していました。

穴水町によりますと、町には7日までに1000件余りの公費解体の申請が寄せられているということです。

審査が完了したあとは、道路などに崩れる危険性がある家屋を優先して工事を進めていくことにしています。

穴水町の荒木秀人 環境安全課長は「大切な家を解体することは被災者にとってつらいことだと思うが、生活再建のスタートとなるよう、町としても全力で取り組んでいきたい」と話していました。

一方、石川県は、能登半島地震で被害を受け解体・撤去が必要となる建物は奥能登地域を中心におよそ2万2000棟に上ると推計していて、来年10月までに工事を完了させたい考えです。

解体を見守る被災者「この場所にもう一度家を」

公費解体が始まった穴水町の現場では、大田宏さん(62)が全壊した自宅の前で工事の様子を見守っていました。

住み慣れた自宅は学生時代の一時期を除いて離れたことがなく、地震の前まで妻と2人で暮らしていたということです。

大田さんは屋根や壁が重機で次々と解体されていく様子をさみしそうに見守っていました。

大田さんは「通学路にも面していてこのままだと危険だと感じていたので、解体作業が始まりほっとしています。一方で子どもの時から住んできた家が取り壊されていく様子を見るとさみしく、複雑な気持ちです」と話していました。

そのうえで「さら地になれば気持ちにふんぎりがつくのではないかと思います。生まれ育った場所なので、いずれはこの場所にもう一度家を建てたいです」と話していました。