台湾東部の地震 太魯閣渓谷周辺で600人余足止め 日本人2人救助

台湾の東部沖で3日に起きた地震では10人が死亡したほか、震源地に近い花蓮県で土砂崩れや落石が起きて600人あまりが足止めされています。

消防などによる救助活動の結果、観光地の太魯閣渓谷の周辺で足止めされていた日本人の女性2人などが救助されました。

台湾東部の花蓮県沖で3日に起きたマグニチュード7.2の地震で台湾当局は、日本時間の5日午後9時の時点で10人が死亡し、1133人がけがをしたとしています。

また、外国人2人を含む10人と連絡が取れなくなっているということで消防などが捜索を行っているということです。

このほか震源に近い花蓮県では、台湾有数の景勝地、太魯閣渓谷の周辺で落石や土砂崩れが起きて道路が寸断され、681人が足止めされていて、現場では、消防のレスキュー隊や軍による救助活動が続けられています。

このうち5日午後には、旅行で訪れ足止めされていた日本人の親子が台湾当局のヘリコプターで救助されました。

救助されたのは、ニュージーランド在住の60代と40代の母親と娘の2人で、3日の朝、トレッキングをしようと、太魯閣渓谷を訪れた際に、地震が起きたということで取材に対し「台湾の方々のおかげで大きな不安を感じることもなく過ごすことができて感謝しています。戻ってくることができてほっとしています」と話していました。

このほか現地では、消防のレスキュー隊などに救助され救護所に到着した人たちの姿も見られ、心配していた家族との再会を喜んでいました。

このうち渓谷の周辺で働いているという女性は「車を運転している途中落石がありました。パニックでどうしたらいいかわからなくなりました。何とかトンネルに移動したら他にも人がいました。トンネルの中は安全でしたが外の道はひどい状況でした」と話していました。

消防のレスキュー隊によりますと5日に救助された9人は3日朝、太魯閣渓谷を車で移動していた際、地震が発生し、落石の危険があったためトンネルの中で動けなくなっていたということです。

9人は救助されるまでの2日間、携帯していた食料や水を分け合って過ごし、全員でけがをした2人の面倒をみていたということです。

救助に向かった消防の隊員は「取り残された人たちは不安な気持ちだったようですが救助隊の顔を見ると、安心した表情をしていました。ひとりでも多くの人を早く無事に救助できるように引き続き活動を続けたい」と話していました。

断層が約30キロ隆起

台湾付近を震源とする大地震について国土地理院が人工衛星のデータを分析した結果、台湾東部の断層がおよそ30キロにわたって隆起するなど、地殻変動が起きていたことがわかりました。

今月3日に発生した台湾付近を震源とするマグニチュード7.7の大地震について、国土地理院は人工衛星「だいち2号」のレーダーによる観測データから地震の前と後の地盤の動きを分析しました。

その結果、台湾東部を南北に走る「花東縦谷断層」の北側から、その北にある別の断層の一部にかけてのおよそ30キロの範囲で地面の隆起などの地殻変動が確認されたということです。

今回の震源の近くでは、2018年にマグニチュード6.7の地震が起きていますが、このときの地殻変動の範囲はおよそ15キロでした。

国土地理院は、今回の地震で断層がより広い範囲で破壊されたことで大きな揺れにつながったとみられるとしています。

日本政府 1億5000万円規模の緊急無償資金協力を実施へ

上川外務大臣は記者会見で、台湾で起きた地震の被害を受けて日本政府として100万ドル=日本円で1億5000万円規模の緊急無償資金協力を実施すると発表しました。

「日本台湾交流協会」を通じて送り、食料や水、衛生用品などの支援に充ててもらうということです。

上川大臣は「能登半島地震の際にも台湾の皆さまから心温まる多大なご支援を頂いた。被災地の1日も早い復旧・復興に向け、台湾側のニーズに沿った支援を積極的に行っていく」と述べました。

台湾 総統府が謝意

日本政府が、台湾で起きた地震の被害を受けて100万ドル=日本円で1億5000万円規模の緊急無償資金協力を実施すると発表したことを受けて、台湾の総統府は5日に報道官のコメントを発表し「台湾と日本はともに地震が多発する地域にあり、多くの困難をともに乗り越えてきた、互いに支え合うパートナーだ。日本政府と日本社会の心遣いと援助に心から感謝を示し、台湾と日本の友好が長く続くことを願っている」として謝意を示しました。