小林製薬「紅麹」 供給受けた173社の自主点検 きょう報告期限

小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で厚生労働省は、小林製薬の紅麹原料を仕入れていた企業名を公表し、健康被害の情報が寄せられた製品がないかなどを自主点検するよう求めています。
このうち、小林製薬から原料を直接仕入れた52社については、該当する製品が無かったことがわかっていますが、これらの会社から原料の供給を受けた173社は、5日が自主点検の報告期限になっていて厚生労働省は結果がまとまり次第、公表することにしています。

小林製薬をめぐっては、大阪市が「紅麹」の成分を含む「紅麹コレステヘルプ」など3つの製品に対し回収命令を出していて、厚生労働省は小林製薬の紅麹原料を仕入れていた企業名を公表し、自主点検を求めています。

自主点検は、
▽命令の対象になった3製品に含まれるのと同量以上の紅麹を1日当たり摂取することになる製品や、
▽過去3年間に医師から健康被害が1件以上報告された製品があるかどうかについてで、
これまでに小林製薬から紅麹原料を直接仕入れた52社については、該当する製品がなかったことがわかっています。

一方、これらの52社などから紅麹原料の提供を受けた173社も自主点検を行っていて、5日が点検結果の報告期限になっています。

厚生労働省は、結果がまとまり次第、公表することにしています。

想定しない「プベルル酸」とみられる成分 確認

小林製薬では、去年製造した「紅麹原料」のうち、1割あまりのロットで、製造工程で想定しない成分が確認されています。

ロットは製造時期や量などに応じた一定のまとまりを示す単位で、5日の時点での会社の説明によりますと、去年1年間に製造した「紅麹原料」は88ロット、あわせて18.5トンでした。

この88ロットが最終的にどんな製品に使われたのかを見ると、▼自社もしくは他社の健康食品などにあわせて34ロット、▼他社の食品の着色や風味づけなどに54ロットが使われました。

そして、▽自社もしくは他社の健康食品などに使われた34ロットのうち、10ロットで、想定しない「プベルル酸」とみられる成分が確認されました。

この10ロットのうち、自社の製品に使われたのが4ロット、他社の製品に使われたのが6ロットだったということです。

一方、他社の食品の着色や風味づけなどに使われた54ロットからは「プベルル酸」とみられる成分は確認されていないということです。

原料を仕入れていた会社は

健康被害の原因が特定されない中、小林製薬の紅麹原料を仕入れていた会社では、取引先への対応に追われるなど影響が広がっています。

厚生労働省が自主点検を求めた173社のうち、茨城県に本社がある食品の製造加工などを手がける会社では、小林製薬の紅麹原料を含む食用インクで描いた柄などを食品に貼り付けることができる「食べられるシート」を製造し、8つの会社に卸しています。

確認したところ、小林製薬が「プベルル酸」とみられる成分が見つかったと公表したものとは別のロットのものだったとわかり、これまで健康被害の情報が寄せられたこともなかったということです。

しかし、小林製薬からは、「原因が完全に究明できていない」などとして、原料の使用を控えるとともに販売した製品を自主回収するよう求められています。

仲谷健太郎社長は、「安全宣言が出ればぜひそのまま使いたいと言ってくれる顧客もいますが、安全宣言を出してくれないために自主回収しなくてはならないところまで追い込まれています。どこまで責任を負ってくれるのかと言われても、回収方法や期限、それに費用についての話が一切出てこないので、小林製薬から回答があるまで保管するよう頼むしかありません」と話していました。

そのうえで、「うちの製品だけなら回収にかかる費用は少ないですが、まんじゅうに貼って冷凍している場合は冷凍倉庫の費用、全国から回収するなら運送費などと費用が膨らんでいくので、どこまで請求されるかわからず不安です。あまりにも大きな金額になれば耐えきれないかもしれません」と話していました。

こうした状況について、小林製薬は、「健康被害の原因が現時点では100%特定できていないため、あらゆる可能性を否定せず、紅麹を使った商品の自主回収をお願いしています。ご迷惑をおかけしています」としています。

小売店で消費者への不安 対策

消費者の間で紅麹を使った食品への不安が広がる中、対策に乗り出した店舗があります。

東京 練馬区に本店があるスーパーマーケット「アキダイ」では、小林製薬の紅麹原料を使った商品は販売していませんでしたが、都内4店舗の取り扱い商品をすべて確認したところ、ほかの会社の紅麹を使った商品が2つ見つかったことなどから、陳列棚に「こちらの製品は紅麹を含みますが小林製薬の紅麹は使用しておりません」と張り紙をしました。

秋葉弘道社長は「風評被害のようになっているのが現状で、紅麹と書いてあるだけで『これ大丈夫なんですか』と問い合わせがあったり返品されたりといったことが起きています。お母さんが良いと思って買ったけど、紅麹が含まれていることに家族が気づいて問い合わせてきたケースもありました。しかたないですが、そういう手間はお互い嫌だろうから最初から告知する方が良い、紅麹は入っているけど小林製薬のものではないという理解のもとで買って頂ければトラブルや心配もないかと思ってやっています」と話していました。

このスーパーで1歳の子どもと買い物をしていた近くに住む40代の女性は「原材料を細かく見たりはしないので、こうした張り紙があると安心して商品を購入できます」と話していました。

また、区内に住む50代の男性は「ほかの会社の紅麹なら気にならないと言いたいところですが、ちょっと気にはなるので、張り紙はありがたいです。原因が究明されないかぎり消費者は紅麹を使ったほかの商品を信用できないと思うので、一刻も早く突き止めて欲しいです」と話していました。

東京都内で健康被害疑い46人確認

小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品をめぐる問題について、東京都は、都内では何らかの症状が出た人が3日までに46人確認されたと明らかにしました。

これは5日、東京都の小池知事が記者会見で明らかにしました。

都によりますと、小林製薬の「紅麹」の成分が含まれた健康食品を摂取したあと健康被害の疑いがある人について大阪市などから連絡を受け、都内の保健所が調査したところ、3日までに、46人に何らかの症状が確認されたということです。

具体的には手足のむくみや尿の異常といった症状が多く、亡くなった人や症状が重い人は確認されていないということです。

都は5日から症状が確認された人数などについてホームページで公表を始めたほか、回収の対象となっている食品については摂取せずに返品するとともに、万が一、摂取して体調が悪くなった場合は、医療機関を受診し最寄りの保健所に連絡するよう呼びかけています。

過去に大阪の工場で製造タンクに水 混入のトラブル

小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、過去に大阪市内の工場で紅麹原料を製造するタンクの中に水が混入するトラブルがあったことがわかりました。
会社は「今回の問題と関係があるかはわからない」としていて、大阪市などは工場の衛生管理の状況について調べています。

この問題では小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症し、去年、大阪市内の工場で製造された紅麹原料から青カビが作る「プベルル酸」とみられる成分が検出されています。

この工場は老朽化を理由に去年12月に閉鎖していますが、過去に紅麹原料を製造するタンクに水が混入するトラブルがあったことが会社への取材でわかりました。

会社によりますと、このタンクではコメに紅麹菌を加えて培養していて、タンクは外側の一部が温水につかる構造になっていました。
しかし、何らかの不具合で温水がタンクの内部に入ったとみられるということです。
会社ではタンクの部品を交換するなどして対応し、中の紅麹原料は廃棄したということです。
会社はトラブルが起きた時期を明らかにしておらず、「今回の問題と関係があるかはわからない」としています。

大阪市などは3月30日、この工場に立ち入り検査を行っていて、過去のトラブルの経緯を含め、工場の衛生管理の状況や製造工程などについて調べています。