自民39人処分 “政治不信招いた責任 厳正に処分” 岸田首相

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で自民党が処分を決定したことについて、岸田総理大臣は派閥幹部などの立場にありながら、結果として長年にわたり不記載の慣行を放置し大きな政治不信を招いた責任を踏まえ、厳正に処分したと重ねて説明しました。

今回の問題で自民党は4日、党紀委員会を開き、安倍派と二階派の議員ら39人の処分を決定しました。

これについて岸田総理大臣は5日の衆議院内閣委員会で「派閥幹部などの立場にありながら適正な対応をとらず、結果として長年にわたり不記載という慣行を放置し、大きな政治不信を招いた責任を党として厳正に処分した」と説明しました。

また立憲民主党の山岸一生氏は岸田総理大臣が処分の対象にならなかったことについて「党総裁の道義的、政治的責任も問われるべきだ。岸田総理大臣自身は、なぜ処分を免れたのか」と追及しました。

これに対し岸田総理大臣は「私自身は個人的な政治資金の修正はなく、派閥の不記載も他の政策集団とは内容が異なる。ただ党総裁として今回の事案の責任は重く受け止めなければならない。信頼回復のため先頭に立って努力し、その努力を最後は国民と党員に判断してもらう」と述べました。

さらに「『党員の判断』とは、ことし秋までに行われる自民党総裁選挙に再選を目指して立候補するということか」と問われたのに対し「信頼回復への道のりはまだ道半ばで、その責任を果たしていかなければならない。具体的な日程などを念頭に置いたものではない」と述べました。

一方、かつて派閥会長を務めた森元総理大臣に電話で行った聴き取りについては「今週頭の段階で私が電話で連絡を取り話を聴いた。従来のさまざまな指摘について聴いたが、従来、自民党として把握していた事実以上のことは何も確認されなかった」と述べました。

離党の世耕氏 安倍派の参院会合で陳謝

自民党から離党勧告の処分を受けて離党した世耕 元経済産業大臣は、5日安倍派の参議院議員らおよそ30人と会合を開き、今回の問題について改めて陳謝しました。

会合のあと世耕氏は記者団に対し「皆さんにご迷惑をかけたので、心からおわびした。出席者から『処分の根拠は何なのか』という質問も出たが、私も処分を受けた立場なので『よく分からない面もある』と答えた」と述べました。

離党勧告受けた塩谷氏 再審査の請求実施を検討する考え

今回の問題で自民党は、4日に党紀委員会で39人の処分を決定し、安倍派の座長を務めた塩谷・元文部科学大臣は離党勧告となりました。

これを受けて塩谷氏は5日に国会内で記者会見を開き「処分の理由は『不正な会計処理について座長という枢要な立場にありながら適切な対応を取らなかった』とのことだが、私たちが何かを画策し、指導したことはなく、事実誤認の中で処分が下されたことは甚だ心外だ」と述べました。

そして
▼座長に就任したのは去年8月で、党が収支報告書への不記載などの金額を確認したおととしまでの5年間は、派閥をとりまとめる立場ではなく、
▼会計処理にはほかの幹部も含めて関わっていないなどと説明しました。その上で、総裁である岸田総理大臣に対し、再審査の請求を行うことを検討する考えを示しました。

再審査の請求が行われると、総務会で扱いが協議され、相当の理由があると認められた場合には党紀委員会で再度審査が行われます。また塩谷氏は、岸田総理大臣の党総裁としての責任のあり方について「政治不信を招いたことは党全体の責任だとも言っており、岸田総理大臣の責任はある」と述べました。

林官房長官「不信の声を受け止め 結果を出す」

林官房長官は閣議の後の記者会見で「政府としても政治に対する不信の声を真摯に受け止めながら、引き続き内政や外交の諸課題に全力で取り組み、一つ一つ結果を出していきたい」と述べました。

松本総務相「法令順守で信頼回復を」

松本総務大臣は閣議の後の記者会見で「改めて、国民の皆様に政治活動への信頼をいただくという意味で、政治資金規正法の趣旨を踏まえた行動を心がけなければならない。私自身、関係法令を順守することは極めて大事にしてきたつもりであるが、そういう姿勢で信頼回復に努めたい」と述べました。

上川外相「信頼回復の必要性を重く受け止める」

上川外務大臣は記者会見で「一政治家として、国民からの信頼回復の必要性を大変重く受け止めている。内政と外交を分けて考えることはできず、国民に理解・支持される外交を展開するという姿勢でこれからも臨んでいきたい」と述べました。

鈴木財務相「決定を受け入れなければ」

鈴木財務大臣は5日午前に開かれた衆議院の財務金融委員会で「党内にさまざまな角度から意見があることは、新聞報道などで承知している。しかし、党紀委員会で決定されたものは、いろいろな思いが心にあったとしても、受け入れなければならない。もし、それを受け入れられないとなると、党の規律が成り立たなくなってしまう」と述べました。

その上で鈴木大臣は「これは幕引きというよりもけじめだと思っている。私が確たることは申し上げられないが、まだいろいろな疑義があれば、それにお答えしなければならないと思う」と述べました。

盛山文科相「信頼回復 難しく厳しい状況」

盛山文部科学大臣は閣議の後の記者会見で「大臣の立場でのコメントは差し控えるが、世の中の人が大変厳しい目で見ているのは強く感じている。自民党や内閣、各政党も含めて、政治が信頼回復をしていくことができるのか。こつこつやっていくしかないと思うが、大変難しく厳しい状況だ」と述べました。

齋藤経産相「国民に判断していただく段階」

齋藤経済産業大臣は閣議のあとの会見で「今回の事態についてはいち国会議員として極めて深刻に受け止めている。処分された人もされてない人も自民党の国会議員一人一人がそれぞれの選挙区においてしっかりと説明責任を果たし、今度は国民に判断していただく段階になっていると思う」と述べました。

河野デジタル相「政治資金のさらなる透明化を」

河野デジタル大臣は閣議のあとの記者会見で「これをきっかけに改めて国民からの信頼回復につながるよう、自民党所属の議員としてしっかり活動していきたい」と述べました。

その上で「『政治とカネ』に関しては処分で終わりではない。政治資金のさらなる透明化に向けて法改正などが行われれば、政治資金収支報告書のデジタル化など、デジタル庁としてできることをしっかりやっていきたい」と述べました。

土屋復興相「党総裁として重い決断」

土屋復興大臣は閣議の後の記者会見で「私は無派閥で政治活動をしてきたのでコメントする立場にはないが、自民党がしっかりとけじめをつけて次へ進んでいくことを希望している」と述べました。

また岸田総理大臣が処分の対象にならなかったことについては「岸田派では安倍派と同じような問題は出てきておらず、党の責任者としては総合的な処分という決断が、とるべき姿で私自身は異論はない。党総裁としてここまでの処分をしたことは大変重い決断で、今後どのようにまとめ上げていくかが大切だと思う」と述べました。

加藤こども政策相「引き続き与えられた職務に全力で取り組む」

加藤こども政策担当大臣は記者会見で「大臣の立場として自民党の処分についてコメントすることは控える。政治に対する不信の声をしっかりと真摯に受け止めながら、引き続き与えられた職務に全力で取り組み、1つ1つ結果を出していきたい」と述べました。

新藤経済再生相「重く受け止め信頼回復を」

新藤経済再生担当大臣は閣議の後の記者会見で「厳しい処分を含め、これだけ多くの処分者が出たことを重く受け止めている。国民の信頼をきちんと取り戻し、仕事を進めていくことが鉄則であり、一刻も早く信頼回復がなされるよう、それぞれの役割を果たしていかなければならない」と述べました。

梶山幹事長代行「信頼を取り戻すのは大変と認識」

自民党の梶山幹事長代行は記者会見で「党への国民の声が大変厳しいことは肌で感じており、深く反省し、強い危機感を持って対応していかなければならない。なくした信頼を取り戻すのは大変だという認識のもと、岸田総裁とともに再発防止策などの徹底に取り組んでいきたい」と述べました。

その上で、岸田総理大臣の党総裁としての責任のあり方について「党のガバナンス・機能強化や、政治資金規正法の改正などに責任を持ってしっかり対応することも責任の取り方の一つだと思う」と述べました。

与党 筆頭幹事 佐藤参院議員「国会での説明責任はまだ道半ば」

参議院政治倫理審査会の幹事懇談会が開かれ、新たに審査会で弁明したいという意向を示している議員は、いないことが報告されました。

このあと与党側の筆頭幹事を務める自民党の佐藤正久 参議院議員は記者団に対し「野村会長が文書で出席を促した意義は非常に重いが、1人も弁明をしたいという回答がなかったことは極めて残念だ。国会での説明責任はまだ道半ばだと思っているので、どう真相解明につなげるか引き続き協議したい」と述べました。

各党反応

立民 泉代表「国民が選挙で総理を処分するしかない」

立憲民主党の泉代表は記者会見で「萩生田 前政務調査会長に象徴されるが、すでに党の役職を辞している議員に役職停止の処分をしても、何の苦しみもなく甘すぎる。甘さの最大の象徴は、岸田総理大臣に何の処分もないということであり、100人弱の『裏金議員』を出した組織のトップとしての責任の取り方や身の処し方という意味で0点だ。選挙で国民が岸田総理大臣を処分するしかない」と述べました。

その上で「自民党には国会で説明する気持ちが全くなく、これからも証人喚問や政治倫理審査会の開催に後ろ向きであり続けるだろう。今後、政治改革特別委員会の中で、野党が主導して政治改革を実現しなければならない」と述べました。

公明 山口代表「国民の受け止め 注意深く見守る」

公明党の山口代表は党の参議院議員総会で「自民党が主体的に行った取り組みについて今後、当事者や国民がどう受け止めていくかを注意深く見守っていきたい。国民が求めているのは再発防止策であり、今の国会中に政治資金規正法の改正を成し遂げるよう議論をリードしていきたい」と述べました。

また、山口代表は記者団に対し「処分対象の当事者の受け止めはいろいろあると思うが、党として政治責任をはっきりさせるという一種のけじめを示したので、信頼回復の妨げとならないように大局観に立って対応していくことを期待したい」と述べました。その上で「政治不信を招いている最大の責任は自民党にあり、政治資金規正法を改正して信頼回復が図られなければ批判されるのも自民党だ。一刻も早く具体案を示し、岸田総理大臣がリードして法改正を成し遂げる姿勢を期待したい」と述べました。

共産 山添政策委員長「党の対応 国民が理解できるはずない」

共産党の山添政策委員長は記者会見で「党の対応に不信感を公言する自民党議員がおり、議員が納得できていない処分を国民が理解できるはずはない。 今回の処分にあたって党に弁明書を出した議員もいるようなので、政治倫理審査会でも弁明し、語ってほしい。事実解明が不十分なままでは、十分な政治改革の議論にならない」と述べました。

国民 榛葉幹事長「処分ありきで納得感はゼロ」

国民民主党の榛葉幹事長は記者会見で「真相究明がされないまま、なぜ処分できるのか。まさに処分ありきで、臭い物にふたをすればいいという考えで納得感はゼロだ。安倍派や二階派だけでなく、自民党全体の問題となっており、トップの岸田総理大臣がどう責任をとるかも極めて大事だが、何もせずスルーしてきのうの処分で終わりということであれば不適切にもほどがあると言わざるを得ない」と述べました。