LSDに似た成分入りの製品摂取後 飛び降り死亡 ことし相次ぐ

法律で規制されていない合成麻薬のLSDに似た成分が入った製品を摂取した人が、マンションから飛び降りて死亡するケースがことしに入って2件、相次いでいたことが捜査関係者への取材でわかりました。
危険ドラッグをめぐっては、法律で規制されると、未規制の類似の成分が作られるいたちごっこの状態が続いていて専門家は「安易な使用は絶対に避けてほしい」と注意を呼びかけています。

捜査関係者によりますと、ことし1月から翌月にかけて、西日本の大学に通う20代の男子学生と、都内に住む20代の女性が、合成麻薬のLSDに似た成分が入った製品を摂取したあと、マンションから飛び降り、死亡していたことが相次いで確認されたということです。

マンションの部屋からは、いずれも「1DーLSD」という法律で規制されていないLSDに似た成分の名前が書かれた製品などが見つかっていて、警視庁や厚生労働省の麻薬取締部は、この製品を摂取したことで錯乱状態に陥り、飛び降りにつながった可能性があるとみているということです。

厚生労働省は2人の死亡が確認されたあと「1DーLSD」の名称で流通している薬物が含まれる製品など6種類について、医薬品医療機器法に基づき全国の店舗やインターネットでの販売を禁止する命令を出しました。

しかし、大麻やLSDなどの違法薬物に類似した危険ドラッグをめぐっては、法律で規制されると、未規制の類似の成分が作られるいたちごっこの状態が続いているということです。

薬物の有害性に詳しい湘南医療大学の舩田正彦教授は「新たに合成された危険ドラッグの中には規制薬物よりも強い作用を示すものがあり、規制されていないからといって安全なわけではない。危険ドラッグを使用することは、自分の体を使ってその有害性を調べるような非常に危険な行為で、安易な使用は絶対に避けてほしい」と注意を呼びかけています。

都内で摂取した影響とみられる事案が相次ぐ

捜査関係者によりますと、都内では去年からことしにかけて「1D-LSD」という法律で規制されていないLSDに似た成分を摂取した影響とみられる事案が相次いで確認されています。

ことし2月には、東京・新宿区で22歳の女性が「1DーLSD」と書かれた製品を摂取したあと、マンションの8階から飛び降りて死亡しました。

一緒にいた男性の説明では、女性は摂取後に急に様子がおかしくなり、「新しい自分になる」とか「飛んじゃう」などと意味のわからないことを話したあと、男性が目を離した隙に飛び降りたということです。

「1D-LSD」はインターネットで購入したものでした。

また、去年8月には町田市で16歳の男子高校生が「1DーLSD」を摂取したあと意味のわからない言動を繰り返し、通行人に暴行を加えたり、路線バスや車を壊したりして逮捕されています。

このほか同じ去年8月には、台東区で「1D-LSD」を摂取した27歳の男性が屋外で全裸でいたところを警察官に保護されました。

男性には首を切った痕が5か所あり、病院で手当てを受けたということです。

危険ドラッグによる死者数と検挙数

「危険ドラッグ」が社会問題になったのは10年前の2014年で、警察庁によりますと危険ドラッグを使ったことが原因で死亡したとみられる人は1年間で112人に上りました。

東京・池袋では危険ドラッグが原因の暴走事故で歩行者7人が死傷し、取り締まりや規制が強化されました。

その後、危険ドラッグを使ったことが原因で死亡したとみられる人は2015年は11人に減り、2016年は6人、2017年は3人、2018年と19年はそれぞれ1人、そして、2020年から去年までの4年間はひとりも確認されていませんでした。

一方、危険ドラッグを使ったなどとして検挙された人は
▼2015年の1196人をピークに、
▼2021年には145人まで減りましたが、
▼おととし(2022)は279人、
▼去年(2023)は424人と再び増加傾向になっています。