イスラエル エレズ検問所を一時的に開放へ 米側要求に応じたか

イスラエルは人道危機が深刻化するガザ地区に人道支援物資を搬入するためとして、ガザ地区北部の検問所を一時的に開放する方針を決めました。ガザ地区で食料支援にあたる国際的なNGOのスタッフが死亡したことを受け、アメリカがイスラエルに対し対応を強く迫ったためとみられ、実際に物資の搬入につながるのかが焦点です。

4日夜に開かれたイスラエルの戦時内閣は、ガザ地区への人道支援を拡大する措置として、イスラエルのアシュドッド港からガザ地区北部のエレズ検問所を通じて物資の搬入を認めるとして、去年10月に戦闘が始まって以来封鎖されてきたエレズ検問所を、一時開放することを明らかにしました。

これについて戦時内閣は「支援の拡大は人道危機を防ぐためのもので、戦闘を継続し戦争の目的を達成するためにも不可欠だ」としています。

エレズ検問所

ガザ地区で1日、食料支援にあたる国際的なNGOのスタッフ7人がイスラエル軍の攻撃で死亡したことを受け、アメリカのバイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相に、対応を改めなければ政策を見直す可能性があると警告したことから、今回の措置はアメリカ側の要求に応じたものとみられています。

ただ、エレズ検問所が開放される時期や期間は明らかでなく、今後十分な物資が搬入され人道危機の解消につながるのかは依然として不透明です。

一方、アメリカのニュースサイト「アクシオス」は、CIA=中央情報局のバーンズ長官が今週末にエジプトを訪れ、イスラエルの情報機関モサドの長官や仲介に当たってきた関係国と協議にあたる見通しだと、伝えました。

バイデン大統領はネタニヤフ首相に対して、モサドの長官に十分な権限を与え交渉を速やかに進めるよう求めたとも伝えられていて、アメリカが働きかけを強める中、人質解放と戦闘休止に向けた交渉が進展するのか注目されます。

エレズ検問所とは 戦闘開始後は半年近くにわたって封鎖

エレズ検問所は、イスラエルとガザ地区北部との境界にあり、主に人の往来を管理する検問所です。

過去にはイスラエル側に向かうパレスチナ人の労働者や、ガザ地区に出入りする各国の外交使節やジャーナリストなどが利用してきました。

去年10月7日のイスラム組織ハマスによる攻撃の際には戦闘員が検問所を襲撃してイスラエル側に侵入したとされ、周辺で撮影されたとみられる映像には、ガザ地区とイスラエル側を分離する壁が爆破され戦闘員たちが走って行く姿などが写っていました。

検問所はガザ地区での戦闘が始まってから半年近くにわたって封鎖されていましたが、開放されれば人道状況が深刻化するガザ地区北部に陸路でより多くの支援物資を搬入できるようになることから、開放の時期や期間が焦点となります。

米「イスラエル政府発表の措置を歓迎」

アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議のワトソン報道官は4日、声明を発表し「われわれはバイデン大統領の要請を受けてイスラエル政府が発表した措置を歓迎する。ガザ地区北部に新たな支援ルートを確保するためのエレズ検問所の開放などは完全かつ迅速に実施されなければならない」と強調しました。

その上で「アメリカのガザ地区に関する政策は、こうした措置や、市民や人道支援関係者の保護など、イスラエルの迅速な行動に対するわれわれの判断で決まる」として、イスラエル側の対応を引き続き注視する姿勢を示しました。

国連「前向きなニュース」

国連のデュジャリック報道官は4日、NHKの取材に対し「これまでわれわれはガザへの検問所を増やし、より多くの支援物資を搬入することができるよう求めてきた。これは前向きなニュースだ」として、検問所の開放を歓迎しました。

その一方で「これがどのように実施されるかを見極めなければならない」として、実際に人道支援物資の搬入につながるのか注視していく必要があると指摘し、「人道目的の停戦と大規模な援助が必要だ」として即時停戦の必要性を改めて強調しました。