家計調査 12か月連続減少 企業はどう消費を喚起?

総務省が発表したことし2月の家計調査で、2人以上の世帯が消費に使った金額は、物価の変動を除いた実質で前の年の同じ月と比べて0.5%減り、12か月連続の減少となりました。

記録的な暖冬で電気・ガス代が抑えられたことなどが要因で、物価高を背景に食料の支出を抑える動きも続いています。

消費者の節約志向に対して、どうやって消費を喚起するか? 企業の側は、さまざまな取り組みを行っています。

「うるう年」の影響を除くと 実質 2.7%減

総務省が5日発表したことし2月の家計調査によりますと、2人以上の世帯が消費に使った金額は、1世帯当たり27万9868円と物価の変動を除いた実質で前の年の同じ月と比べて0.5%減りました。

消費支出の減少は12か月連続となります。

また、ことしは「うるう年」で2月の日数が1日多かったため、その影響を除くと、物価の変動を除いた実質で2.7%の減少となります。

内訳を見ますと食料は2%の増加でしたが「うるう年」の影響を除くと0.8%の減少となっていて、物価高を背景に支出を抑える動きが続いています。

また、記録的な暖冬の影響で、エアコンやガスストーブの利用が減ったことから、電気代が25.4%、ガス代が14%それぞれ減りました。

このほか、一部の自動車メーカーが国の認証取得をめぐる不正から車の出荷を停止した影響で「自動車関係費」が2.2%減ったほか、新聞や雑誌などの印刷物は5.4%の減少となりました。

一方、「教育」は首都圏を中心に私立中学校の受験率が増えていることを背景に受験料などの支出が増え、41.5%の増加となりました。

消費者は物価上昇で節約の工夫

東京・品川区の商店街では物価が上昇するなか、買い物を工夫して節約しているといった声が聞かれました。

30代の女性
「子どもが3人いて食べ盛りなのですが、食料品だけでなくほかのものもすごく上がっているので大変です。外食は家族全員で行くと高くついてしまうので、なかなか行かなくなりました」

70代の男性
「野菜でも何でもみんな上がっていますね。なるべく安いところを探して買い物をしています」

30代の女性
「食事にかかる費用はけっこう増えています。いろいろな物の値段が上がっているので、3歳の娘のおもちゃを買う頻度を最近は減らしています」

従業員の投票で値下げ商品を決定

消費者のニーズに応えようと、従業員の投票で値下げをする商品を決めるスーパーも出ています。

愛知県に本社がある「ユニー」では、東海地方や関東地方などに131の店舗を展開しています。

会社によりますと、およそ2万3000人の従業員のうち、1万9000人ほどが主婦やお年寄りなどのパート従業員だといいます。

物価の上昇が続く中、消費者の節約志向が強まっていると感じていて、去年の既存店の客数は前の年と比べると96.5%と、来店頻度が減っていることなどが課題だといいます。

このため、消費者のニーズに応えようと130の店舗で買い物客が値下げしてほしいと思う商品について、店舗ごとに従業員が投票を行い値下げする取り組みを始めました。

このうち、横浜市戸塚区にある店舗では、2月から3月にかけて、従業員が値下げをしてほしいと思う商品を3品目、そして、その価格についてオンラインで投票しました。

30代のパート従業員
「従業員としては、自分たちの考えが反映されて、お客さんの手もとに届くとやりがいを感じるし、消費者としても、安く買えればその方がいいので、とてもうれしい」

50代のパート従業員(冷凍餃子とラーメンに投票)
「冷凍庫にあると便利なものや時間をかけずに作れて家族で食べられるものを選んだ。仕入れの値段を知っているだけに難しいところもあったが今後も自分なりに考えて投票していきたい」

この結果を踏まえて会社で検討した結果、この店舗では4月1日から、冷凍食品や納豆、油揚げなどの食品とシャンプーなどの日用品をあわせた300品目を、これまでの販売価格から1%から最大で25%値下げして販売を始めました。

これまでは会社の本部が特売日などで値下げする商品や金額を決めていましたが、消費者でもある従業員の意見を生かすことで、ニーズが高い商品を値下げし、他店との差別化を図る狙いがあるということです。

今回の商品の値下げは3か月間続けるということで、その後もこの取り組みを続けることにしています。

70代の買い物客
「物価高の影響で値上げだけでなく、値段は変わらないが量が減っている商品もある。従業員の意見も反映して値下げをしてくれれば家計にもやさしくなると思う」

アピタ戸塚店 丹澤寛之店長
「お客の代弁者が地元で働いている従業員になるので、地域密着の店として地域にあった品ぞろえと価格を打ち出して、消費を盛り上げていきたい」

自動販売機で夜間の消費喚起

都内に本社を置く菓子メーカーは、夜間の需要を新たに取り込もうと24時間、商品を購入できる自動販売機の設置を進めています。

全国で930店舗を展開する菓子メーカー「不二家」は、去年6月からケーキなどを24時間販売する自動販売機の設置を全国で進めています。

この会社では、物価の上昇などを背景に消費者の節約志向が続いているとして、店舗が閉まった後の夜間の需要を新たに取り込もうと自動販売機の設置を進め、4日までに店舗の外や駅などに123台を設置しました。

販売されているショートケーキやシュークリームは冷凍の状態で販売するため店頭に並ぶ商品とは別に新たに開発されたもので、それぞれの自動販売機では10種類の商品を購入できるということです。

会社によりますと、購入者の多くは10代から20代の女性とみられるということです。

売り上げは夜間の時間帯が特に多くなっているということで、新たな需要の取り込みにつながっているとしています。

このため、会社ではことし中に自動販売機の数を全国で350台にまで増やす計画だとしています。

不二家 広報室 宮永奈津紀さん
「夜になると店が閉まるので、帰宅時間が遅い方などは購入の機会がないという状況にあった。物価高で節約志向がある中、今後も客との接点を増やす取り組みをしていきたい」