能登半島地震3か月 石川 生活再建に向けた支援が課題に

石川県で最大震度7の揺れを観測した能登半島地震の発生から4月1日で3か月です。今も8000人を超える人が避難所に身を寄せているほか、各地で断水が続くなど、被災者は厳しい環境での暮らしを余儀なくされていて、住まいの確保をはじめとした、生活再建に向けた支援が課題となっています。

元日に発生した能登半島地震で、石川県では、これまでに244人の死亡が確認され、3人の安否がわかっていません。

県によりますと、3月29日の時点で、8109人が避難所に身を寄せていて、このうち半数近い3956人は地元を離れ、宿泊施設などで避難生活を続けています。

7800件の申し込みがある仮設住宅は、これまでに完成したのがおよそ900戸で、県は、希望する被災者全員に入居してもらえる時期は、ことし8月ごろになるとしています。

また、被災地では、珠洲市や輪島市などの奥能登地域を中心に、およそ7860戸で断水が続いています。

被災者は厳しい環境での暮らしを余儀なくされていて、住まいの確保をはじめとした、生活再建に向けた支援が課題となっています。

自宅に再び住めるようになるめどが立たないことや、仕事や子育てなどを理由に、当面の間、地元から離れた地域で暮らすことを決断する被災者も増えています。

県などは、ふるさとに戻ってもらえるよう、復旧・復興を進めていきたい考えで、今後、人口の流出に、いかに歯止めをかけられるかも課題となっています。

避難者の現状は

石川県によりますと、3月29日の時点で合わせて8109人が避難所に身を寄せています。

このうち、
▽1次避難所に避難している人が4153人
▽地元を離れて宿泊施設などに避難している人が3956人
となっています。

避難所に身を寄せる人は、3万4000人余りだったピーク時と比べると、およそ4分の1となっています。

断水の長期化や、仮設住宅への入居待ちなどもあって、避難所での生活が長期化している被災者が多くなっています。

仮設住宅は

石川県は、能登半島地震の被害で、自宅に住むことができなくなった人たちに向けて仮設住宅の建設を急いでいます。

県によりますと、3月までの着工数はおよそ5000戸で、このうち、およそ900戸が完成して、順次、入居が始まっています。

一方、仮設住宅への入居の申し込みは、これまでに7800件にのぼっています。

県は、ことし8月ごろまでには、希望するすべての被災者が入居できるよう、必要な戸数を確保するとしていて、市や町の要請を踏まえながら、さらに建設を進めたいとしています。

断水の復旧は

石川県によりますと、県内では3月29日の時点で、5つの市と町のおよそ7860戸で断水が続いています。

自治体別にみると、断水が続いているのは、
▽珠洲市が市内のほぼ全域で、およそ4250戸
▽輪島市が市全体の4分の1にあたる、およそ2600戸
▽能登町がおよそ800戸
▽七尾市がおよそ140戸
▽内灘町がおよそ70戸
で断水しています。

県は3月末までに、おおむね断水を解消できるという見通しを示してきましたが、浄水場や配水管の被害が想定以上に大きく、復旧に時間がかかっているとしています。

多くの地域では、4月中の復旧を見込んでいますが、めどがたっていない地域もあるということです。

8割が“これまで住んでいた場所で暮らしたい”

能登半島地震から3か月を迎えるにあたり、2次避難者などを対象に、NHKが専門家と共同で行ったアンケートで、「これまで住んでいた場所や自治体で暮らし続けたい」と答えた人が8割に上りました。

一方、多くの人が、地域の復興には「住居の確保」が最も重要だと考えていて、いち早い住宅復旧や生活環境の整備を求める声が高まっています。

NHKは、ことし2月から3月にかけて、東京大学の関谷直也教授の研究室と共同で能登地方の被災者や2次避難している人など、合わせて258人を対象にアンケートを行いました。

今も4000人近い人が、自宅のある能登地方を離れ、2次避難を続けていますが、

【2次避難を決断・検討した理由について】(複数回答)
▽「水道が復旧しない」30%
▽「当面、暮らせないと思った」25%
▽「電気が復旧しない」21%
インフラなどへの被害で生活が困難になり、やむをえず能登地方を離れた人が多くみられました。

また、インフラなどの復旧が進んだあとの
【「将来住みたい場所」について】
▽全体の81%が「被災前に住んでいた場所や同じ自治体に住みたい」と回答しました。
▽「まだ具体的には考えられない」7%
▽「県内の別の自治体でもかまわない」4%
▽「県外でもかまわない」3%
などとなりました。

そのうえで、
【住んでいた地域の復興のため重要と思うこと】(複数回答)
▽「住居の確保」が最も多く64%
▽「過疎対策」42%
▽「医療・高齢者施設の充実」38%
▽「コミュニティーの維持」33%
▽「防災対策」31%
などとなり、住宅の復旧や安心して暮らせる環境の整備を求める声が多くなりました。

自由記述では、
▽穴水町の70代の男性が「仮設住宅を申しこんだが、2年しかいられない。家を再建したいが高齢者なので経済的な問題がある」と不安を伝えていました。

▽輪島市の70代の男性は「誰も帰らないと街が成り立たず、過疎に拍車がかかる。人が戻ってくる政策を進めてほしい」と訴えていました。

“不安あるも最終的には元の場所に住みたい”

アンケートに答えた石川県輪島市の谷内展明さん(54)も、住まいを確保できるのか不安を抱えています。

谷内さんは、輪島市の南志見地区で80代の母親と40代の妻の3人で暮らしていましたが、自宅が壊れたため、金沢市の2次避難所に身を寄せています。

長年暮らしてきた自宅は、柱の位置がずれたり、床板が抜け落ちたりするなど大きな被害を受け、さらに裏山で起きた土砂崩れが建物の近くに迫っていて危険な状態になっています。

家族で仮設住宅への入居を申し込んでいますが、いつ、どの場所に入居できるのか見通しはわかっていません。

いずれは自宅を再建したいと考えていますが、土砂崩れが起きた場所に建ててもいいのかわからず、再建できたとしても、地震で再び壊れるのではないかという懸念もあります。

再び強い揺れに襲われることに対する恐怖も感じていて、安心して暮らせる住まいを確保できるのか不安を抱えています。

それでも、豊かな自然の中で、住民どうしが支え合って暮らしてきたふるさとへの思いは、日に日に強くなっているということです。

谷内さんは「四季折々の景色がきれいで、友達もいるふるさとに戻りたいです。いろいろな不安はありますが、まずは仮設住宅に入って生活しながら自宅の再建を進め、最終的には元の場所に住みたいというのが正直な気持ちです」と話していました。

不動産会社には「地元」物件の問い合わせ相次ぐ

多くの建物が倒壊した能登半島北部・奥能登地域の不動産会社のもとには「地元で暮らしたい」という人たちから物件の問い合わせが相次いでいます。

石川県能登町の不動産会社「能登不動産」は、珠洲市や能登町を中心に、奥能登地域の中古住宅や賃貸住宅を扱っています。

元日に起きた能登半島地震のあとは、物件の被害の確認に追われていますが、住まいを探す人からの問い合わせに対応することも多く、問い合わせは、地震直後からの3か月間でおよそ140件にのぼり、地震の前と比べると3倍から4倍ほどに増えているということです。

復旧作業の関係者からの問い合わせもありますが、ほとんどは地元の人からで、地震の前から住んでいた場所や、近くで物件を探すケースが多いとしています。

ただ、奥能登地域では、もともと物件が限られているうえ、多くは地震の被害を受けているため紹介できる物件はほとんど残っておらず、本人の希望に沿った住まいが見つかる割合は、15件から20件ほどの問い合わせに対して、1件程度だということです。

最近では、空き家になっている住宅の所有者から「被災者の住まいになれば」と賃貸や売却の申し出を受けることもあり、会社では、速やかに調査して住める状態かどうかを確認しているということです。

「能登不動産」の代表の玉地正幸さんは「住み慣れた能登での生活を取り戻したいと、わらをもつかむような気持ちで問い合わせをしてくる方が非常に多いです。その気持ちに応えられるよう、新たな物件探しも進めつつ、少しでも多くの人に住まいを提供していきたい」と話しています。

専門家 “行政の具体的な復興情報の提供が重要”

今回のアンケート結果について、災害社会学を専門とする東京大学の関谷直也教授は「能登地方から一時的に人口が流出するのはやむをえないが、戻りたいと希望する多くの人が、数年後に戻れるかどうかが重要なポイントになる」と話しています。

そのうえで、「能登半島の特性などにより遅くなっている、震災がれきの撤去やインフラの復旧について、住民が納得できる情報提供が足りていない。どのくらいの時期に地域が復興し、元どおりの生活ができるようになるのかを示すことが、地域に住み続ける意欲を持続させることになる」と述べ、行政が復興に向けた具体的なスケジュールを示していくことの重要性を指摘しました。