JR根室線 富良野~新得 きょう最終運行 多くの人が鉄路に別れ

利用者の減少を受けて、JR根室線の富良野駅と新得駅の区間が31日夜の運行を最後に廃止されます。富良野駅には廃線を惜しむ多くの住民や鉄道ファンが詰めかけ、鉄路に別れを告げました。

JR根室線の富良野駅と新得駅の区間は沿線人口の減少などによって利用者が減り、31日が最終運行日で、4月1日からバス輸送に転換されます。

沿線には鉄路との別れを惜しむ大勢の鉄道ファンが全国各地から訪れ、富良野駅では朝から切符を買い求める人たちの長い列ができたほか、記念品を販売する特設ブースも設置され、お目当ての商品を購入した人たちは満足そうな表情を浮かべていました。

苫小牧市から訪れた70代の男性は「親が国鉄の職員だったので、中学生のころはここ富良野駅からよく根室線に乗っていました。当時を懐かしみつつ、最後の日を楽しみたいです」と話していました。

また、午後にはホームでセレモニーが行われ、JR北海道の綿貫泰之社長が「富良野・新得間が開通した時代、根室線は特急列車や貨物列車が走る北海道の大動脈だった。地域の足として長く利用していただいたことに深く感謝したい」とあいさつしました。

このあと、「ありがとう根室線」と書かれた記念のヘッドマークをつけた東鹿越行きの4両編成の列車がゆっくりと出発し、大勢の人たちが手を振って見送りました。

JR根室線の富良野駅と新得駅の区間は、31日夜9時すぎに富良野駅に到着する列車を最後に、明治40年(1907年)の開通から続く117年の歴史に幕を下ろします。

沿線の駅では最終列車の運行にあわせて、地元の人たちや鉄道ファンなどがペンライトを振って列車を見送ることにしています。

「北の国から」のロケに使われた“聖地” 布部駅も廃止

JR根室線の富良野駅と新得駅の区間の廃線に伴い、民放のテレビドラマ「北の国から」のロケに使われ、ファンの間で“聖地”とされる駅も廃止されます。

富良野市にある布部駅は民放のテレビドラマ「北の国から」の第1話で、田中邦衛さんが演じた黒板五郎が子どもたちと降り立つシーンで知られ、ファンの間では“聖地”と呼ばれています。

駅舎の前にはドラマの脚本を手がけた倉本聰さんが「北の国 此処に始る」と記した記念碑があり、31日も大勢のファンが訪れて写真を撮影していました。

帯広市から中学生の息子と訪れた60代の男性は「五郎さんが降り立ったドラマの舞台がなくなってしまうのはさみしいです」と話し、駅舎との別れを惜しんでいました。

映画「鉄道員」のロケに使われた幾寅駅も廃止

JR根室線の富良野駅と新得駅の区間の廃線に伴い、高倉健さん主演の映画「鉄道員」のロケで使われた駅も廃止されます。

南富良野町にある幾寅駅は1999年に公開された映画「鉄道員」の中で、高倉健さんが駅長を務める「幌舞駅」として登場し、舞台の中心となりました。

一方、幾寅駅を含む狩勝峠を挟む区間は8年前の台風による水害で列車が通れなくなり、代行バスが運行されてきました。

列車が発着することなく廃止となる幾寅駅には、別れを惜しむ映画ファンや鉄道ファンが代行バスに乗って訪れ、駅舎内に展示しているロケセットを写真に収めたり、記念グッズを買い求めたりしていました。

「さようなら幾寅駅」と書いた手作りの横断幕を持って訪れた50代の男性は「『鉄道員』を見て興味を持ち、初めて幾寅駅を訪れたときに味わいのある駅だなとほれ込みました。廃止は残念ですが、これからも観光施設として大切にしてもらいたいです」と話していました。

幾寅駅は年間およそ3万人が訪れる観光地となっていて、南富良野町は観光資源として駅舎を保存することを決め、今後、ロケセットを含む土台や屋根を補修する予定です。

映画の撮影当時、出演者やスタッフへの炊き出しに協力した幾寅婦人会の元会長の佐藤圭子さんは「ついにこの日が来てしまったと朝から胸がいっぱいです。南富良野町から鉄道がなくなってしまうのは残念でたまりませんが、地元のみんなで力をあわせて、少しでも元気な幾寅にしていきたいです」と話していました。