米 貨物船が橋に衝突し橋崩落 6人不明 船の電気系統に問題か

アメリカ東部メリーランド州のボルティモアで大型の貨物船が橋に衝突し、橋が崩落した事故では6人の行方が分かっていません。

一方、州政府は、衝突前に貨物船の乗組員から電気系統にトラブルが生じたとの通報があったことを明らかにしました。

アメリカ東部メリーランド州の最大都市ボルティモアで26日未明、パタプスコ川にかかる橋の橋脚に大型の貨物船が衝突し、橋の大部分が崩落しました。

この橋の下はボルティモア港を出入りする船舶の通り道になっています。

州政府やボルティモア市によりますと、橋の上には当時、補修作業をしていた作業員8人がいて、1人が重体、6人の行方がわかっておらず、現場で救助活動が続いています。

現場近くで記者会見したメリーランド州のムーア知事は、貨物船の乗組員から衝突の前に電気系統にトラブルが生じたとの通報があったことを明らかにしました。

貨物船からの通報を受けて急きょ、橋の通行を止めたため、多くの車が転落を免れたとしています。

また、バイデン大統領もホワイトハウスで緊急の記者会見を開き「船は制御不能になった」と述べ、何らかのトラブルが起きたという認識を示しました。

そのうえでバイデン大統領は港への船の出入りができなくなっていることを受けて現場にアメリカ陸軍を派遣し、崩落した橋を取り除いて航路の確保を急ぐ考えを示しました。

崩落した橋は首都ワシントンとニューヨークを結ぶ大動脈の1つで、1日平均3万台以上の車両が通行しています。

州政府は、橋の再建には長い時間がかかるとの認識を示しました。

「バーンという大きな音」

橋が崩落した際の様子を捉えた映像では、貨物船が橋脚に衝突し、橋が10秒ほどで崩れ落ちていく様子が確認できます。

地元の19歳の男性は「バーンという大きな音がして起きたが、そのまま寝てしまった。朝起きて携帯電話を見てみると、ネットで騒がれていて、冗談かと思った」と話していました。

男性は通勤で橋を利用しており「けさは渋滞が起きていて、仕事に行くのにいつもより20分も長くかかってしまった」と話していました。

交通への影響も懸念

ロイター通信や船の位置情報を公開している「マリントラフィック」によりますと、この船はシンガポール船籍の貨物船「ダリ号」で、26日午前1時ごろボルティモアを出港しインド洋の島国スリランカの最大都市コロンボに向かおうとしていたということです。

崩落した橋は「フランシス・スコット・キー橋」で通称「キーブリッジ」として知られているということです。

地元メディアによりますと、この橋は、1977年に開通し全長はおよそ3キロで、メリーランド州とワシントンやニューヨークなどを行き来する人が多く利用していて交通への影響も懸念されています。

ボルティモアはアメリカの国歌が誕生した地とされ、橋の名前の由来となっているフランシス・スコット・キー氏はかつての米英戦争中にアメリカの国歌「星条旗」を作詞した人物です。

シンガポール港湾当局 “アメリカ沿岸警備隊の調査に全面協力”

事故を起こした貨物船はシンガポール船籍の「ダリ号」です。

シンガポールの港湾当局は26日、この貨物船には当時、22人が乗り組んでいたと発表しました。

また、必要な支援の提供に向けてアメリカの沿岸警備隊や貨物船の管理会社と連絡をとっているということです。

そして沿岸警備隊の調査に全面的に協力するほか、シンガポールの港湾当局としても調査を行う予定だとしています。

貨物船「衝突直前に針路変更」 米報道

アメリカのCNNテレビは、船の位置情報を公開している「マリントラフィック」のデータや映像をもとに分析した内容として、貨物船が衝突する直前に針路を変更し、橋脚部分に向かってかじを切ったほか、衝突前に貨物船から黒煙が上がっていたとも伝えています。

さらに、イギリスのテレビ局、スカイニュースは橋に衝突する直前の映像から、貨物船で2回停電が起きていた可能性があると伝えています。

1回目は衝突の4分前で、60秒ほど船内の明かりが消えたとしています。

復旧後、針路を調整していたとみられるということですが、衝突する2分前に2回目の停電が起きたとしています。

東海岸最大級の海運拠点 経済への影響は

崩落した通称「キーブリッジ」、「フランシス・スコット・キー橋」は首都ワシントンとニューヨークをむすぶ交通の要衝で、1日平均3万台以上の車両が通行しています。

ボルティモアの港湾を横断する3つの道路のうちの1つで、メリーランド州当局によりますと崩落した橋の通行量は、全体のおよそ20%程度だということです。

今後は残る2つのトンネルを経由した道路にう回することになりますが、ABCテレビによりますと危険物を運搬する車両はもともと崩落した橋しか通行できないことから影響が出ることも予想されています。

また、崩落した橋の下はボルティモア港を出入りする船舶の通り道になっています。

メリーランド州によりますとボルティモア港の去年の自動車の取り扱い量はおよそ85万台で、13年連続で全米トップとなっており、東海岸最大級の海運拠点です。

崩落した橋を海中から取り除くまで港への船の出入りは当面できなくなる見通しで、アメリカのメディアは今後、多くの船舶がニューヨークやバージニアなど、東海岸のほかの港を利用することになると伝えています。

バイデン大統領 航路確保を急ぐ考え

バイデン大統領は26日、ホワイトハウスで緊急の記者会見を開きました。

このなかでバイデン大統領は、橋の崩落により船がボルティモアの港に出入りできなくなっているとして航路を確保するため、現場にアメリカ陸軍を派遣し、崩落した橋を海中から取り除く作業を急ぐ考えを示しました。

また、ボルティモアの港について自動車の取り扱い量が全米トップであり、1万5000人が港に従事しているとし「港に関わる仕事や労働者を守るためにできるかぎりのことをする」と強調しました。

そのうえでバイデン大統領は崩落した橋について「アメリカ北東部の経済や生活にとってもっとも重要な部分だ。連邦政府として再建にかかる費用の全額を負担したい」と述べ、議会に資金の拠出を認めるよう訴えました。