モスクワ テロ事件死者137人に プーチン大統領 側近集め協議か

ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールで起きたテロ事件は犠牲者がさらに増え、137人が死亡しました。プーチン大統領は側近を集めた安全保障会議を開催する予定だと伝えられ、テロを受けた対応を協議するとみられます。

ロシアの首都モスクワの北西にあるクラスノゴルスク市のコンサートホールで、22日夜、複数の人物が銃撃を行って火災が発生し、ロシアの連邦捜査委員会は24日、死者がさらに増え、137人が死亡したと発表しました。

また、保健省は182人が病院に運ばれ治療を受けているとしています。

ロシアは24日、追悼の日とし、プーチン大統領もモスクワ郊外の公邸の教会でろうそくに火をともし、犠牲者を悼みました。

事件をうけて国営メディアはプーチン大統領が今後、側近を集めた安全保障会議を開催する予定だと伝え、対応を協議するとみられます。

ロシアの当局は実行犯とみられる4人を含め11人の容疑者を拘束したと発表し、容疑者を連行する映像なども公開してテロ攻撃を行った疑いで捜査を行っていて、このうち2人についてはテロに関わった罪で起訴したとしています。

一方、過激派組織IS=イスラミックステートとつながりのある「アマーク通信」は、実行犯だとする4人の写真などを公開し、ISの戦闘員による犯行だと伝えています。

ロシア側からは容疑者の車からタジキスタン人のパスポートが見つかったなどと伝えられていて、ロシア大統領府によりますとプーチン大統領は、タジキスタンのラフモン大統領と電話で会談し、テロ対策を強化することで合意したということです。

一方、プーチン大統領は実行犯らについて「ウクライナに向かっていた。ウクライナ側には国境を越えるための窓口が用意されていた」と述べていて、ロシアの独立系メディアは「プーチン政権に近いメディアがウクライナとのつながりの痕跡を探している」と指摘しています。

ウクライナ側は関与を否定していて、ロシア側が軍事侵攻を強化する口実としないか警戒を強めています。

アマーク通信 実行犯が撮影したとする動画公開

ISとつながりのある「アマーク通信」は実行犯が撮影したとする動画をSNSに公開しました。

映像では、人々に向かって自動小銃を乱射する様子や、倒れている男性をナイフで執ように切りつける様子などが写っています。

また、映像には男らが話す様子も写っていて、アラビア語に訳した字幕では「容赦なく殺せ。異教徒は敗北するだろう」などと書かれています。

過激派組織IS プーチン政権を敵視か

2014年に「イスラム国家」の樹立を一方的に宣言し、シリアやイラクなどで勢力を広げた過激派組織ISは、欧米だけでなくロシアも攻撃の対象としてきました。

シリアのアサド政権を支援するロシアは2015年9月、ISなどのテロ組織と戦うとしてシリアでの空爆に乗り出します。

その年の10月、エジプトを出発したロシアの旅客機が墜落して220人以上が死亡し、ISに関連する武装組織が犯行を認める声明を出しました。ロシア政府は爆弾テロと断定してシリアで戦略爆撃機による集中的な攻撃を行う一方、ISはロシアへの反撃を予告する内容の映像をインターネット上に公開しました。

やがてISはロシアのほかアメリカ主導の有志連合などによる攻撃によってシリアやイラクでの拠点を失い、弱体化しました。

一方でアジアやアフリカなどでもISの地域組織をうたうグループがテロを繰り返し、ISの過激な思想は世界各地に広がりました。

とりわけアフガニスタンでは、2015年に東部を拠点に設立された地域組織「ISIS-K」が活動を活発化させます。アフガニスタンやパキスタンなどにまたがる地域の古い地名からISの「ホラサン州」と位置づけ、2021年にアフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが再び実権を握ってからもテロを繰り返しています。

ロシアのプーチン政権を敵視しているとされ、おととし9月には首都カブールにあるロシア大使館の前で大使館職員など6人が死亡した自爆テロ事件を起こしたとされています。

今月7日にはロシアの治安機関FSB=連邦保安庁が、首都モスクワのユダヤ教施設に対するテロを計画していたとして「ISIS-K」の関連組織を摘発し銃や爆発物を発見したと発表しました。

同じ7日、モスクワにあるアメリカ大使館は自国民に対し「過激派が、モスクワでコンサートなどの大規模な集会を標的にする差し迫った計画があるとの報告がある」として、7日からおよそ2日間にわたって大規模な集会への参加を避けるよう呼びかけていました。

アメリカの有力紙ワシントン・ポストはアメリカの当局者の話として、こうした呼びかけは「ISISーK」がロシア国内で活動している可能性があったためだと伝えています。