香港「国家安全条例案」可決に 国際機関や各国から懸念相次ぐ

香港でスパイ行為など国家の安全を脅かす行為を取り締まる「国家安全条例案」が可決されたことを受けて、国際機関や各国からは懸念の声が相次いでいます。

香港の議会にあたる立法会は19日夜、「国家機密」を盗むことやスパイ行為、外国勢力による干渉などを国家の安全を脅かす行為として禁じる「国家安全条例案」を全会一致で可決しました。

これを受けて、国際機関や各国からは懸念の声が相次いでいます。

国連人権高等弁務官事務所は19日、条例の規定があいまいで政府に批判的な声をあげる人や、報道機関、人権活動家などが恣意的(しいてき)に標的にされる可能性があると指摘しました。

そのうえで、「このような法案が十分な時間や議論をへずに可決されたことは、香港の人権を後退させる一歩だ」と懸念を示しています。

また、イギリス外務省も「香港の人たちの自己検閲を定着させ、言論や集会、報道の自由をむしばむことになる」としたうえで、香港政府に対し、基本的な人権や自由を尊重するよう求めました。

このほか、EU=ヨーロッパ連合は、香港に暮らす外国人や外国の企業に甚大な影響を及ぼす可能性があるとしたうえで、「世界的なビジネスの中心としての香港の魅力に疑問符がつく」として、ビジネスへの影響に懸念を示しました。

中国外務省「条例は他国を十分に参考」

香港で「国家安全条例案」が可決されたことに国際機関や各国から懸念の声が相次いでいることについて、中国外務省の林剣報道官は20日の記者会見で、「個別の国と機関が条例を中傷することに強烈な不満を示すとともに断固反対する。条例は国家の安全の維持と、権利と自由、および経済発展の保障をバランスよく考慮していて他国の同様の立法例を十分に参考にしている」と反論しました。

そのうえで「中国政府が国家の主権や安全、発展と利益を守る決意と『一国二制度』を貫徹する決意は揺るがない。条例に対するいかなる攻撃や中傷も必ずや失敗に終わるだろう」と強調しました。