ロシア大統領選開票へ 反対派は抗議呼びかけ 政権側警戒強める

ロシアの大統領選挙は17日、最終日の投票が行われ、日本時間の18日未明に締め切られ、開票されます。一方、反対派は現地時間の17日正午にあわせて抗議の意思を示すよう呼びかけ、モスクワなど各地では投票所に行列もできていて、当局に拘束される人も出ています。

ロシアの大統領選挙には、プーチン大統領など合わせて4人が立候補していて、15日から3日間にわたる投票は17日、最終日を迎えました。

投票は極東から順次、終了し日本時間の18日午前3時に締め切られ、全土で開票されます。

ロシアの中央選挙管理委員会は17日、日本時間の17日10時過ぎの段階で有権者の70%以上が投票したとしていて、国営メディアなどは前回2018年の大統領選挙の投票率67.54%をすでに上回ったとしています。

一方、先月死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻のユリアさんや支援団体は、現地時間の17日正午にあわせてプーチン大統領以外の候補者に投票したり、投票用紙にナワリヌイ氏の名前を書いたりして、プーチン政権に抗議の意思を示すよう支持者に呼びかけています。

独立系メディアは、首都モスクワをはじめ都市部の投票所で、抗議活動に参加するため市民が長い列を作る様子を伝えています。

ロシアの人権団体によりますと、17日、投票を妨害したなどとして、国内の17の都市で少なくとも74人が当局に拘束されたということです。

プーチン政権側は選挙での圧勝を演出したい考えで、抗議の動きが広がらないよう警戒を強めているとみられます。

立候補認められなかった候補が投票「態度示すチャンス」

ロシアの大統領選挙で、ウクライナへの軍事侵攻を批判し立候補を表明していたものの認められなかった、ナデジディン元下院議員は17日の正午を前に、モスクワ市内の投票所で投票しました。

ナデジディン氏は、投票後、地元メディアに対し「きょう、ロシアの国民は、わたしと同じようにプーチンではなくほかの誰かに投票することで起きていることに対する態度を示すチャンスがある」と述べ、プーチン大統領以外に投票するよう呼びかけました。

ナデジディン氏は、これまでに政党「新しい人々」のダワンコフ下院議員に投票するつもりだと明かしていました。

またロシアのSNS上では、ナデジディン氏が授業を行っていた大学に設けられた投票所に、17日の正午、若者の行列ができていて中にはナデジディン氏の名前を連呼する姿も見られました。

併合されたクリミアではウクライナ側の抗議も

ロシアは10年前に一方的に併合したウクライナ南部クリミアでも選挙だとする活動を行っていて、ロイター通信が15日に撮影した軍港都市セバストポリの映像では、投票所とみられる場所に制服姿の複数の男性が訪れている様子や、高齢の女性が投票している様子が写っています。

これに対しクリミアではウクライナ側による抗議の活動も広がっていて、ウクライナメディアによりますと地元の活動家たちはこの1週間でロシア側が配布した投票を呼びかけるビラなど2000枚以上を燃やしたということです。

また、クリミアの中心都市シンフェロポリやヤルタでは、投票箱に緑色の液体をかけるなどしたということです。

さらに、「クリミアはウクライナ」という文字やロシアの軍艦が沈没する絵が描かれた偽のロシア紙幣を1000枚以上つくってばらまいたとSNSで写真付きで公開し、ロシアによるクリミアの一方的な併合に対し抗議の意思を示しています。

ウクライナはこれまでに外務省が声明で現地のウクライナ国民に対して選挙だとする活動に参加しないよう求めているほか、シュミハリ首相が今月行われた会見で「国際社会はロシアによる『偽の選挙』の結果を認めないと信じている。各国にはロシアの活動を非難し、否定してほしい」と呼びかけています。

ウクライナの首都・キーウでの市民の反応は?

ウクライナの首都キーウの広場では、ロシア軍がおととしキーウに迫った戦闘の際、ウクライナ軍が破壊した戦車などが展示されています。

展示を見に訪れた市民からは、ロシア大統領選挙への冷めた声や怒りの声が聞かれました。

電気技師の男性は「ロシアの政治体制は腐敗しているので、プーチン以外の候補者にチャンスはない。まるでショーのようなものだ」と話していました。

また、日系の自動車会社に勤める女性は「ウクライナでは私たちが選挙で大統領を選んだが、偽の選挙しか行われないロシアでは国民が選ぶことはできない。プーチンが再び大統領になるだろうが、権力を永遠に握り続けることは不可能だ。いつか審判が下ることを信じている」と話していました。

ロシアが10年前、一方的に併合したクリミア出身の薬剤師の男性は「クリミアには今も母や家族がいるが、治安機関に傍受され危険が及ぶおそれがあるので、今回の『選挙』と称する活動については話していない。占領地域にいるウクライナ人は力ずくで投票させられることもある。ロシアは民主国家ではなく完全に独裁国家で、プーチンは私のふるさとを奪った犯罪者だ」と憤っていました。

世界各地の大使館などで在外投票 日本でも

ロシアの大統領選挙は、世界各地にある大使館などで在外投票が行われ、ロシア外務省は日本時間の17日午後4時までに合わせて12万人以上が参加したとしています。

東京の大使館でも17日午前8時から投票が行われ、ロシア国籍を持つ人たちが続々と訪れました。

先月、刑務所で亡くなった反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻ユリアさんが、正午に投票所に行ってプーチン政権に抗議の意思を示すよう呼びかけたことを受け、昼ごろには訪れる人がひときわ多くなり、大使館の前では350人ほどが列を作りました。

呼びかけに応じて正午に合わせて来たという男性は「同じ時間に集まり結束を示すことが大事だと思う。プーチン氏にも戦争にも反対だ。ロシアに未来を見いだせない」と話していました。

また、1時間半ほど待っているという男性は「こんなに多くの人が並んでいるのは少し驚いた。国民の義務として投票すべきだとは思う」と話していました。

一方、プーチン大統領に投票したという女性は「家族や友人と一緒にプーチン氏に投票した。ロシアを守り、私たちをアメリカの奴隷状態から救ってくれるリーダーはプーチン氏しかいない」と話していました。