石川 珠洲の小中学校で卒業式 学校に避難の住民たちも門出祝う

石川県珠洲市にある小中学校で卒業式が行われ、能登半島地震を受けて地元を離れている子どもたちや学校で避難生活を送っている住民たちが卒業生の門出を祝いました。

卒業式が行われたのは、珠洲市大谷町にある大谷小中学校です。

式には地元を離れ2次避難している児童・生徒や、学校で避難生活を送っている住民たちが出席し、卒業生2人の門出を祝いました。

式では、上田辰美校長が卒業証書を手渡したあと「地震で痛々しい姿となってしまいましたが、ここで育ったことや、優しい、美しいふるさとを忘れないでください」と式辞を述べました。

これに対し、卒業生の中島來槻さんと前山陽菜さんは「家が壊れ、日常が奪われ、『これからどうなるんだろう』と不安でしたが、みんなで遊んだ思い出が救いになりました。たとえ離れ離れになってもどうか忘れないでください。必ずまた会いましょう」と答辞を述べました。

在校生や住民たちは、2人のことばに静かに耳を傾け、大きな拍手を送っていました。

学校によりますと、この地区では、当面は自宅に戻ることを断念し、金沢市などで暮らすことを決めている家族も多く、児童・生徒は減っていく見通しだということです。

地元を離れる親子の思い

珠洲市の大谷小中学校では、小学1年から中学3年までの全校児童・生徒23人のうち、およそ半数が避難のため地元を離れています。

卒業式にあわせてほとんどの子どもたちが家族とともに一時的に戻ったほか、この学校で避難生活を続けている人たちも加わったため、地震の発生以降初めて、多くの住民たちが一堂に会する機会となりました。

再会した子どもたちや住民たちは、卒業式のあと、集まって一緒に昼食をとり、近況などを報告しあっていました。

このうち中学1年の和田晃太郎さんは、家族で避難している金沢市から一時的に戻ってきました。

久しぶりに会う友人たちと話をしたり、ふざけあったりして楽しそうに過ごしていました。

晃太郎さんは「きのうからこちらに来ていますが、一緒に卓球をしたりゲームをしたりして遊びました。やっぱり大谷小中学校はいいところで、来られてうれしいです」と話していました。

晃太郎さんは地震のあと、大谷小中学校の授業をオンラインで受けていましたが、当面は金沢市で暮らすことになったため、新年度からは金沢市内の中学校に通うことが決まっているということです。

晃太郎さんは「離れ離れになりますが、大谷小中学校の仲間とはこれからも連絡を取り合いたいです。そしていつかまた大谷に戻ってきたいです」と話していました。

一方、晃太郎さんの父親で、大谷小中学校のPTA会長を務める和田丈太郎さんは、過疎化が進む地区の今後を心配しています。

インフラの復旧や住宅再建などにはまだ時間がかかる見通しとなっていて、地域を離れざるをえないと考えている人が多いためです。

丈太郎さんは住民どうしで力を合わせ、コミュニティーを維持していきたいと考えていて、「住民たちが離ればなれになっても、定期的に集まる機会をつくるなどしてつながりを絶やさないようにしていきたいです」と話していました。