米軍艦艇の国内入港 去年12回 この10年で最多 石垣港でストも

去年、アメリカ軍の艦艇が国内の港湾に入港した回数は12回と、この10年で最も多くなったことが都道府県などへの取材で分かりました。沖縄と鹿児島で過半数を占め、南西地域で活動を活発化させている状況がうかがえます。

NHKが国際戦略港湾や重要港湾など全国125の港湾を管理している都道府県などに取材したところ、去年1年間にアメリカ軍の艦艇が入港した回数は12回と、この10年で最も多かった2014年と2016年の7回を上回り、最多となりました。

都道府県別の内訳は、▽沖縄が4回、▽鹿児島と北海道がそれぞれ3回、▽大阪と宮城がそれぞれ1回と、沖縄と鹿児島で過半数を占め、南西地域で活動を活発化させている状況がうかがえます。

このうち沖縄では、▽本島の中城湾港が3回、▽石垣島の石垣港が1回で、中城湾港への入港は記録が残る2007年以降では初めてだということです。

入港の目的は鹿児島の3回が「訓練」で、それ以外は「補給」や「給油」「乗組員の休養」「親善」などでした。

アメリカ軍艦艇の入港はことしも相次いでいて、先月には▽北海道の小樽港にイージス艦が、▽大阪港に強襲揚陸艦がそれぞれ入港しました。

日米両政府は去年1月、港湾や空港の柔軟な使用が有事において重要だと確認していて、今後さらにアメリカ軍による使用が増加する可能性が指摘されています。

<年別内訳>
▽2014年…7回 ▽2015年…3回 ▽2016年…7回 ▽2017年…2回 ▽2018年…4回 ▽2019年…5回 ▽2020年…0回 ▽2021年…3回 ▽2022年…4回 ▽2023年…12回

米海軍の艦艇 沖縄 石垣島寄港 抗議のスト続き影響広がる

11日午前、沖縄県の石垣島に寄港したアメリカ海軍のイージス艦「ラファエル・ペラルタ」は、12日も岸壁から少し離れた沖合での停泊を続けています。

12日は午前中、乗組員が石垣市役所を訪問する予定でしたが、市によりますと、沖合の波が高くイージス艦から小型の船を使って陸地に渡れず、訪問が中止になったということです。

一方、石垣港では今回の寄港に抗議するため、港湾労働者で作る組合が11日午後からストライキを行っていて、ふだん荷揚げなどが行われるエリアでは作業員はいるものの働いている姿は見られません。

組合は、ストライキの継続はイージス艦の動向や石垣市の対応次第だとしていて、物流への影響も広がっています。

米海軍の強襲揚陸艦 大阪港に先月入港

大阪市の大阪港には先月、空母に次ぐ大きさがあるアメリカ海軍の強襲揚陸艦が入港しました。

先月27日から今月2日にかけて大阪港に入港したのは、長崎県のアメリカ軍佐世保基地に配備されている強襲揚陸艦の「アメリカ」です。

乗組員の休息や親善などが目的だとしていて、先月28日、岸壁の周辺には多くの地元の人などが集まり、戦闘機やヘリコプターを搭載することができる巨大な艦艇の姿を写真に収めるなどしていました。

一方、岸壁の周辺では、アメリカ軍の関係者が出入りする車を金属探知器のようなもので確認するなど、警備にあたっていました。

大阪港湾局によりますと、アメリカ軍の艦艇が大阪港に入港したのは記録が残る1991年以降18回目で、強襲揚陸艦は去年に続いて2回目だということです。

大阪市に住む62歳の会社員の男性は「これまでの平和な世界情勢であれば、寄港は決して褒められたものではないと思いますが、今の情勢の中では、寄港は抑止力になるのではないかと思います」と話していました。

伊丹市に住む50代の男性は「アメリカ軍としては、いざというときに入港できる場所を探しているという話もあるので、そういう意味では少し怖いなとも思います」と話していました。

海自の元海将 “米軍艦艇の入港 今後も増加か”

アメリカ軍の艦艇による日本の港湾への入港が増えていることについて、海上自衛隊の元海将は、有事も念頭に艦艇や乗組員に被害が出た場合を想定して、使用できる港を増やしたいというねらいがあり、今後も増えていくとみられると指摘しています。

海上自衛隊で護衛艦隊司令官などを務めた元海将の池田徳宏さんは「艦艇が故障したり救急患者が出たりすることは平時でも起きるし、有事などいろいろな活動で起きる。そのときに基地ではなく近くにある民間の港湾に行くことは非常に有益だ」と話しています。

そのうえで、アメリカ軍の艦艇による日本の港湾への入港が増えていることについて「港に入港する前には浅瀬があるかないかや、浅瀬を認識できるようなブイの有無の確認など、非常に入念な準備が必要だ。また、夜間の視界については経験しているのとしてないのでは非常に違う。いろいろな港に入港してそうした資料を集めておく、あるいは経験しておくことが非常に重要だ」と述べ、艦艇や乗組員に被害が出た場合にすぐに使用できる港を増やしたいというねらいがあると指摘しています。

特に沖縄など南西地域での入港が増えていることについては「中国が力による現状変更をしていて、アメリカとしては抑止しなければならないと思っている。何か起こったときに対応できる準備をするというのは、相手の国に対してそんな簡単にはできないと思わせる抑止になる。アメリカと日本はこれからも南西地域における活動を積極的に行って、地域の平和と安定に寄与していこうとするだろう」と話しています。

林官房長官 “住民への影響 最小限にとどめるよう求めている”

林官房長官は午後の記者会見で「アメリカ軍と関係機関の間で必要な調整が行われており、石垣市長も入港を容認していると承知している。一方で、港湾への出入りにあたっては、公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきことは言うまでもない。政府としてはアメリカ側に対し、安全に最大限配慮するとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう求めているところで、引き続き適切に対応していく」と述べました。

仕入れ増やすなどしてストに備える精肉店

石垣島ではストライキの影響で海運関係の物流が止まっていて、店舗などが対応に追われています。

このうち、島の中心部にある精肉店「八重山食研」は、ふだんより仕入れを増やすなどしてストライキに備えていました。

実際にストライキが始まると、取引先の飲食店などから問い合わせが相次ぎ、対応に追われているといいます。

営業担当の桴海功一郎さんは「とても忙しいです。『店のメインの食材が入らないかもしれない』といった問い合わせがあり、影響は大きいです」と話していました。

また、在庫切れを懸念する顧客が買いだめをするために多くの商品を購入しているということで、12日の取り引きは、ふだんの1.5倍ほどになっているということです。

豚肉などを買いに来た飲食店を営む夫婦は「ものがないと料理も出せないので、島で物流が止まると困ります」と話していました。

桴海さんは「石垣島だけでなく、周辺のほかの離島でも影響が出るのではないか。ストライキをしている港湾関係者の気持ちもわかり難しい問題ですが、早く、平和的に解決してほしいです」と話していました。

また、2年続けてアメリカ軍の艦船が石垣島に寄港していることについては、「何をしているのか見えないしわからないので不安です。目的をはっきりしてほしい」と話していました。

青果店は果物や卵の在庫切れを懸念

また、島内の青果店は果物や卵が在庫切れしないか懸念を強めています。

このうち、保育園やホテルなどを取引先としている「石垣島青果」には、本来なら12日、到着しているはずの品物が届かず、船に野菜などが乗ったままの状況が続いているということです。

代表の王滝将弘さんは「どうしようもない状況です。いつ降ろせるのかわからないし降ろせたとしても野菜の状態も気がかりです」と話していました。

いまは旅行や卒業シーズンとなっていることから、特に、ケーキやデザートなどに使われるバナナと卵の在庫がほとんどなくなっている状況だということです。

王滝さんは「思っている以上に消費されています。ふだんから島のものだけだとまかなえず九州など全国から野菜を持ってきているので、このままだといつ冷蔵庫がカラになるのか、おそろしい状況です。島全体へのダメージを感じています」と話していました。

アメリカ軍のイージス艦が寄港したことについては「世界の情勢は大丈夫なのかと不安になりますし、いい気持ちにはならない。できれば違う場所に行ってほしい」と話してしました。

そのうえで「ストライキを起こす気持ちも分かりますが、子どもたちに野菜が行き届かないのは胸が痛いです。少しでも早く荷降ろしをしてもらえると助かります」と話していました。