「君たちはどう生きるか」アカデミー賞長編アニメーション賞に

アメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞の各賞が10日、ロサンゼルスで発表され、長編アニメーション賞に、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が選ばれました。
日本の作品が長編アニメーション賞を受賞したのは、2003年に同じく宮崎監督の「千と千尋の神隠し」が受賞して以来で、宮崎監督がこの賞を受賞するのは2度目です。

「君たちはどう生きるか」は宮崎監督が引退宣言を撤回し、原作と脚本も担当しておよそ7年の製作期間をかけて作り上げた作品で、太平洋戦争中に母親を失った少年が不思議な世界に迷い込む宮崎監督のオリジナルストーリーです。

これまでにアメリカでアカデミー賞の前哨戦とされるゴールデングローブ賞を受賞したほか、英国アカデミー賞でも日本の作品として初めてアニメ映画賞を受賞していて、国際的に高い評価を受けています。

鈴木敏夫プロデューサー「作るのもおもしろいよ」

宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」がアカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞したことについて映画のプロデューサーの鈴木敏夫さんが都内で会見を開き喜びを語りました。

鈴木さんによりますと宮崎駿監督は自身のアトリエで発表の様子を見守ったということで、「発表前は、『日本男子としてうれしい顔を見せてはならない』と言っていました。受賞後、電話で『おめでとうございます』と伝えたら、『お互いさまです』と言われました」と話していました。

また、鈴木さんは「オスカー像は注文すれば作ってくれるので3個注文しました。時の運だと思いますが、心の底からうれしかったです」と喜びを語ったうえで、「作品の内容は、日本よりもアメリカのほうが受け入れやすかったのではないか。宮崎監督は80歳を超えても、今の時代になぜこの作品が必要なのかを考えて映画を作っていて、今回もそれをやってのけたと思います」と話していました。

83歳になった監督の今後の映画制作については「宮崎監督は衰えをしらない。僕の本心では、もう一度長編映画を作るのは簡単ではないので、監督には、短編を作ってほしいと話しています」と明かしました。

最後に若い人たちへのメッセージを問われると「人間は作って人を楽しませる人と、作品を楽しむ人の2種類に分かれると思う。最近は以前と比べるとほかの人が作った物を楽しもうという人が増えているように感じるが、作るのもおもしろいよ、と言いたいです」と話していました。

米津玄師さん「偉大な作品に関われたこと誇らしく」

アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞した「君たちはどう生きるか」の主題歌「地球儀」を手がけたシンガーソングライターの米津玄師さんは、「アカデミー賞、長編アニメーション賞おめでとうございます。偉大な作品に関われたことを誇らしく思います。」と自身のXの公式アカウントに投稿しました。

スタジオジブリのスタッフから大きな歓声と拍手

アカデミー賞の授賞式で宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」の受賞が発表されると、朝からテレビで式の様子を見守っていたスタジオジブリのスタッフたちから大きな歓声と拍手が沸き起こりました。

中には、うれし涙をぬぐったり、ガッツポーズをしたりする人もいました。

鈴木敏夫プロデューサーがコメント「大変光栄」

受賞のあと、スタジオジブリの中島清文副社長は報道陣に対し鈴木敏夫プロデューサーからのコメントを代読し「賞をいただいたことを大変光栄に思います。この作品は宮崎監督の引退の撤回から始まりました。制作に7年もの歳月を費やしてしまいました。宮崎駿の前作「風立ちぬ」から10年ぶりで、映画の制作を取り巻く環境もすっかり変わってしまいました。本当に難産でした。それを乗り越えた作品が世界中の人に観てもらえたことをうれしく思います」と述べました。

韓国メディアも受賞を相次ぎ報道

宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」は、韓国でも去年10月に公開され、公開最初の週に観客動員数1位を記録するなど人気を博しました。

アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞したことについて、韓国メディアも相次いで報じていて、このうち通信社の「ニュース1」は「『巨匠』宮崎監督が2度目のオスカーを獲得した」と伝えたうえで「君たちはどう生きるか」は、韓国で201万人の観客を動員したなどと紹介しています。

また「国民日報」も、宮崎監督が2013年に引退を表明したものの、この作品で復帰を果たしたなどと伝えています。

「ジブリパーク」がある公園でも喜びの声

「ジブリパーク」のある愛知県長久手市の「愛・地球博記念公園」でも喜びの声が聞かれました。

このうち10代の男性は「アカデミー賞を受賞したと聞いて納得できる作品だと思いました。さすが宮崎さんだなと思います。日本人として誇らしいです」と話していました。

30代の女性は「どうしてあんなにいろんな作品を思いつくんだろうと、本当にすごい方だなと思う。ジブリの作品は大好きなので、これを機会に『君たちはどう生きるか』を見たいです」と話していました。

70代の男性は「漫画家の鳥山明さんが亡くなるなど、悲しいことのあった後だからうれしいです。受賞をきっかけに、海外の人がジブリパークを訪れることに期待したい」と話していました。

10代の男性は「映画を見ましたが、伝えたいことを直接伝えるのではなく、いろんなことで伝えようとしているのが深いと思いました。受賞は日本人としてもうれしいですし、ジブリ好きとしてもうれしいです」と話していました。