中国 王毅外相 アメリカけん制の一方 両国関係安定化にも意欲

中国の王毅外相は記者会見で、アメリカに対し「中国にひたすら圧力を加えれば最終的に必ずみずからを害する」と述べて、けん制する一方、両国関係の安定化にも意欲を示しました。

王毅外相は、北京で開かれている全人代=全国人民代表大会にあわせて、7日、記者会見しました。

この中で王外相は、アメリカとの関係について「中国に対する誤った認識がいまだに続いている」と指摘したうえで、「中国にひたすら圧力を加えれば最終的に必ずみずからを害する」と述べ、けん制しました。

そのうえで「アメリカには中国の発展を客観的かつ理性的にとらえるよう求める。われわれはアメリカとの対話と意思疎通を強化し、不必要な誤解や偏見を排除することに意欲を持っている」と述べ、両国関係の安定化に意欲を示しました。

一方、台湾でことし1月に行われた総統選挙などについて、王外相は「台湾地区の選挙は中国のひとつの地方選挙にすぎず、その結果は台湾が中国の一部であるという基本的な事実を変えることはできない」と主張しました。

そして「もしまだ『台湾独立』を容認する者がいるならば、それは中国の主権に対する挑戦だ」と述べ、「台湾独立」に反対する姿勢を改めて強調しました。

日中関係について言及なし 触れられないのは異例

王毅外相は7日の記者会見で、合わせて21の質問に答えました。

日本をめぐっては「日中韓3か国の協力を深めていく」という発言はありましたが、日中の2国間関係についての言及はありませんでした。

日本のメディアの質問に答えることもありませんでした。

日中間には、中国が続ける日本産水産物の輸入停止措置の問題や、中国で相次ぐ日本人の拘束など多くの懸案があり、王外相の発言が注目されていました。

全人代にあわせて行われる外相の会見では、これまで毎年のように日中関係について言及があり、触れられないのは異例です。

林官房長官「中国に大国の責任果たすよう働きかける」

林官房長官は、午後の記者会見で「米中両国の関係の安定は国際社会にとっても極めて重要だ。日本としては引き続きアメリカとの強固な信頼関係のもと、さまざまな協力を進めつつ、中国に対して大国としての責任を果たすよう働きかけていきたい」と述べました。

また、中国とロシアの関係について「軍事協力が緊密化しており、わが国と地域の安全保障上の観点から重大な懸念を持っている。今後の中ロ関係の進展を引き続き注意深く見極めていく」と述べました。

ウクライナ情勢「和平案を公平に議論の会議開催支持」

王毅外相は記者会見で、ウクライナ情勢について、「あらゆる紛争の終わりは交渉の場にある。話し合いを始めるのが早ければ早いほど、平和はより早く訪れる」と述べました。

そして「中国は、ロシアとウクライナの双方が認め、すべての当事者が平等に参加し、すべての和平案を公平に議論する国際会議の開催を支持する。中国はヨーロッパの平和と安定の早期回復を期待しており、そのために建設的な役割を果たし続ける用意がある」と述べました。

台湾情勢「台湾独立容認は中国の主権に対する挑戦」

王毅外相は、シンガポールメディアの記者の質問を受けて台湾情勢についても答えました。この中で、王外相はことし1月に行われた台湾総統選挙などについて「台湾地区の選挙は中国のひとつの地方の選挙にすぎず、その結果は台湾が中国の一部であるという基本的な事実を変えることはできない」と述べました。

そのうえで「もしまだ『台湾独立』を容認する者がいるならば、それは中国の主権に対する挑戦だ。各国が台湾との公的な関係の維持を主張するならば、それは中国の内政への干渉だ」と強調しました。

また「『台湾独立』という分裂行為は台湾海峡の平和と安定を破壊する最大の要素だ」としたうえで「われわれの政策は非常に明確であり、最大の誠意をもって平和統一の見通しを得ることだ。われわれのこえてはならない一線も非常に明確であり、絶対に台湾の祖国からの分裂を許さないということだ」と述べました。

さらに「国際社会で『台湾独立』を容認する者は必ず火に焼かれ、みずから悪い結果を招くだろう」と主張しました。そして、「民族の根源を切り離すことはできない」として、台湾の人々に対して「ともに『台湾独立』に反対し、平和統一を支持すべきだ」と呼びかけました。

ガザ地区情勢「いかなる理由であれ戦闘継続はできない」

王毅外相は記者会見でガザ地区の情勢をめぐって「いかなる理由であれ、戦闘を継続することはできないし、いかなる口実があっても、民間人を殺害することはできない」と主張しました。

そのうえで「パレスチナの領土が長期にわたって占領されているという事実を無視できない。『2国家共存』の実現こそが悪循環を断ち切り、過激な思想をうむ土壌を無くし、中東地域の長く続く平和の実現につながる」と述べ、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による和平を目指すべきだという考えを強調しました。

南シナ海情勢「武力による挑発 すみやかに対抗」

王毅外相は記者会見で南シナ海の情勢をめぐって「海洋をめぐる争いごとについて中国は高い自制心をもって、それぞれが受け入れられる解決方法を模索してきた。ただ、意図的な主権侵害に対しては法に基づき権利を守り、武力による挑発に対してはすみやかに対抗する」と述べ、領有権をめぐって対立が深まっているフィリピンなどを強くけん制しました。

その上で「域外の国には、南シナ海で問題を引き起こすトラブルメーカーとならないよう助言する」と述べ、中国の海洋進出を警戒する欧米などをけん制しました。

朝鮮半島めぐり「和平交渉再開を」

王毅外相は記者会見で、朝鮮半島をめぐって「情勢はますます緊迫している。中国はこれを望んでいない。世界はすでに混乱しており、朝鮮半島で再び戦争や混乱を起こしてはならない」と述べました。

そして「和平交渉を再開させ、すべての当事者が北朝鮮の合理的な安全保障上の懸念に配慮し、朝鮮半島問題の政治的な解決を推し進めることが急務だ」と述べ、北朝鮮に対しては圧力ではなく、話し合いで対応していくべきだという考えを示しました。

「ロシアと永久的な友好関係を堅持」

王毅外相は記者会見でロシアとの関係について、去年の2国間の貿易額が2400億ドルと目標を上回ったことに触れ「両国の協力の強じん性と将来性を十分に示した」と述べました。

その上で「世界の主要な大国として中国とロシアは冷戦構造とは全く異なる大国関係の新しいあり方を打ち出した。陣営を作らず、第三国に立ち向かうものではないという方針のもと、永久的な友好関係を堅持し戦略的な協力を深めていく」と述べ、ロシアとの関係を強化していく姿勢を強調しました。

また「大国は互いに対立すべきではなく、冷戦を繰り返してはいけない。中国とロシアの関係は世界の多極化という時代の流れにそっている」とも主張しました。