【詳しく】日経平均株価 終値で初の4万円台 史上最高値を更新

週明けの4日の東京株式市場、日経平均株価は半導体関連の銘柄を中心に値上がりし、取り引き時間中、終値ともに初めて4万円を突破して、史上最高値を更新しました。

初の4万円を突破した4日の各地の動きや経済界の反応などに加え、記事後半では、なぜ株価が上昇しているのかについて詳しく解説しています。

日経平均株価 終値で初の4万円台

4日の東京市場では、先週末のニューヨーク市場で、IT関連の銘柄が多いナスダックの株価指数が史上最高値を更新するなど、主要な株価指数がそろって上昇した流れを受けて、半導体関連の銘柄などに買い注文が出ました。

先週末に3万9900円台まで上昇していた日経平均株価は、取り引き開始直後に初めて4万円の大台を突破し、一時は4万300円台をつけ、史上最高値を更新しました。

その後は当面の利益を確定させようという売り注文も出て上昇幅は縮小しましたが
▽日経平均株価、4日の終値は先週末の終値より198円41銭、高い4万109円23銭で終値としても4万円を超え、史上最高値を更新しました。

一方▽東証株価指数、トピックスは3.14下がって、2706.28
▽1日の出来高は18億5955万株でした。

市場関係者は「日経平均株価は上昇したが、最上位のプライム市場でみると値上がりした銘柄の数は、全体の4分の1ほどにとどまった。急ピッチな株価の上昇には警戒感もある中、今の株価水準が定着するか見極める上で、市場では、今週、行われる日米の中央銀行の総裁による公の場での発言や、アメリカの雇用統計などの発表の内容が注目されている」と話しています。

「4万円を達成しました」証券会社で拍手

東京 中央区にある証券会社のコールセンターでは、午前9時前、株価を示すディスプレイに「60秒前」などとカウントダウンの表示が行われ、社員たちが取り引きの開始を待ちました。

そして、日経平均株価が4万円を超えると、「4万円を達成しました」という声が上がり、社員たちは拍手をしたり、クラッカーを鳴らしたりしていました。

36歳の男性社員は「最高値を突破したと思ったらあっという間に4万円を超えたので、証券マンとしてうれしく思います」と話していました。

岩井コスモ証券東京コールセンターの本間大樹センター長は「節目の4万円は1つの目標だったがここは通過点という見方をしている。1つ1つ節目を超えて値上がりしていくことが日本経済にもプラスの効果をもたらしていくと思っている」と話していました。

証券会社に売買注文などの問い合わせ増加

東京 港区にある証券会社のコールセンターでは、取り引き開始前から問い合わせの電話が鳴り始め、午前9時に取り引きが始まると、売買の注文などの問い合わせが一段と増えました。
この会社では、2月22日に、日経平均株価がバブル期につけた史上最高値を上回って以降、問い合わせの件数が前の年のおよそ1.7倍と過去最高のペースで増えているということです。
社員らは、顧客からの電話を受けるとすばやく注文内容を入力し、間違えないようパソコン画面を指さし確認しながら対応に追われていました。

みずほ証券東京第二コンタクトセンターの中山信和 副センター長は、「毎日電話が殺到していて、かなり忙しい状態だ。当然、常連さんからの電話は入ってきているが、口座を放置していたお客様の投資のマインドも上がってきている。この忙しい状況がしばらく続くだろうと意識しています」と話していました。

街の人は

日経平均株価が初めて4万円の大台を突破したことについて東京 新橋で聞きました。

40代の男性は「驚きました。まさかこんなに早く4万円を超えるとは思っていませんでした。このまま経済が上がり続けてくれればいいなと思います」と話していました。

60代の女性は「バブル以上になってしまったので、こんなことがあるんだと思いました。ただ、生活はそんなに良くなっているということはなく実感がありません」と話していました。

50代の男性は「株は上がっていますが給料はあまり変わっていないので実感はありません」と話していました。

40代の女性は「4万円を超えるとは思っていましたが、これから生活にどう直結するかが問題だと思います」と話していました。

大阪 中央区の証券会社が入る建物に設置された株価ボードの前では、立ち止まって株価の状況を確認する人の姿が見られました。

40代の会社役員の男性は「ついに4万円台の大台に乗ったので驚いた。このまま株価が上がってほしい」と話していました。

20代の若者からは「新NISAに興味があってやってみようかなと思っている」とか、「銀行に預けているだけではお金は増えないので、新NISAがスタートしたのを機に、投資を始めようといろいろ勉強している」という声が聞かれました。

一方で、65歳の会社員の男性は「物価高に給料が追いついておらず、景気がよいという実感はあまりない」と話していました。

経団連 十倉会長「実体経済の成長必要」

経団連の十倉会長は九州経済界との懇談後の記者会見で日経平均株価が初めて4万円を突破したことについて「日本が成長と分配の好循環に動き出したことがなければ資金も流入しないのでそれはそれで喜んで、ぜひこのチャンスを生かして今後ともやっていくべきだ」と述べました。
そのうえで「実体経済と株価がピタッと一致しているかというと、そうでないところもあるので、政府や民間企業の頑張りしだいだ。日本企業が成長と分配の好循環をしっかり回して実体経済が伸びなければ剥落するおそれもある」と述べ、株価の維持や持続的な上昇には実体経済の成長が必要だという認識を示しました。

岸田首相「市場関係者がポジティブな評価」

岸田総理大臣は参議院予算委員会で「私の政権になってから賃上げや投資の促進、科学技術イノベーションの推進に特に力を入れ、経済政策を考えてきた。日本経済の変革の足音に対し、マーケット関係者がポジティブな評価を行っていることは力強く思っており、こうした動きを定着させるため構造的な賃上げを含む好循環が実現できるよう政府として取り組んでいく」と述べました。

林官房長官「一喜一憂せず 日本経済の変革進める」

林官房長官は4日午前の記者会見で株価の日々の動向にコメントすることは差し控えるとした上で「より多くの資金を貯蓄から投資に振り向け、企業がその資金を成長や投資に回し、恩恵が資産所得という形で家計に還元され、さらなる投資や消費につながるという好循環を実現したい」と述べました。
そして「こうした日本経済の変革に向けた取り組みに対して、マーケット関係者を含めてポジティブな評価があることは大変心強く思っており、株価の水準に一喜一憂せず、着実に進めていきたい」と述べました。

海外メディア「さらなる上昇への扉を開いた」

東京株式市場で日経平均株価が初めて4万円を突破したことについて、海外メディアも伝えています。

このうち、アメリカのCNNテレビは、2月、バブル期の1989年につけた史上最高値を更新したことに触れ「この節目は、1989年のピークを上回り、史上最高値を記録してからまもなく訪れた。ことしに入り、日経平均株価は、世界の主要な株価指数の中で最もよいパフォーマンスを発揮している」と伝えています。

また、アメリカのメディア、ブルームバーグは「歴史的な急騰のなかで、さらなる上昇への扉を開いた」と報じた一方、株式市場の過熱感を懸念する見方もあると伝えています。

《株価上昇 なぜ?》

【要因1】アメリカの株高

要因としてまず指摘されているのが、アメリカの株高です。
ニューヨーク市場では堅調なアメリカ経済や、AIの需要拡大を背景にした半導体関連の業績の先行きへの期待から株価の上昇傾向が続いています。
ダウ平均株価が史上最高値を更新し続けているほか、2月29日にはハイテク関連銘柄の多いナスダックの株価指数がおよそ2年3か月ぶりに史上最高値を更新、その後も上昇しています。
これを受けて東京市場でも半導体を中心に精密機器、電機など関連する業種の株価が上昇するという流れができています。

【要因2】日本企業の好調な業績

日本企業の好調な業績も株高の要因です。
ことしになって発表された企業の決算では、円安に加えて商品の価格転嫁が進んだことなどで幅広い業種で業績を伸ばす企業が相次ぎました。

【要因3】株価を意識した経営

日本企業が市場の評価を意識して改革に取り組むとの期待が高まっていることも株価上昇の要因と指摘されています。
背景には東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営に取り組むよう企業に求めていることがあります。
株高の局面にもかかわらず株主への還元策としていわゆる「自社株買い」などを打ち出す企業も相次いでいます。

【要因4】円安の進行

2月中旬以降、1ドル=150円前後の円安水準が続いていることで、輸出関連の企業の収益拡大への期待から株価が上昇しているほか、海外の投資家が割安な日本株を買う動きにつながっています。

【要因5】中国からの資金シフト

中国からの資金シフトが日本の株高につながっているという指摘もあります。海外の投資家が景気が減速する中国から日本に資金を移しているという見方です。

【要因6】日銀の緩和継続姿勢

金融政策に対する安心感も好調な相場を支えています。
市場関係者の間では、日銀がマイナス金利を解除し、利上げに踏み切れば株安につながるのではないかとの懸念もみられますが、2月、日銀の植田総裁と内田副総裁が仮にマイナス金利を解除しても緩和的な金融環境を維持すると発言したことが投資家の安心材料となり買い注文につながっています。

《バブル後の株価の推移 詳しく》

バブル絶頂期の1989年、1年の取り引きを締めくくる12月29日に日経平均株価は、取り引き時間中に3万8957円44銭をつけました。この日は3万8915円87銭で取り引きを終えました。

その後、バブルは崩壊。金融機関が相次いで経営破綻するなどのいわゆる金融危機も起き、株価は長い低迷の時代に入ります。日経平均株価はリーマンショック後の2008年10月には、バブル崩壊後の最安値を更新して一時、7000円を割り込みました。

この流れが変わったのが、2012年。当時の安倍政権の経済政策、いわゆる「アベノミクス」です。2013年4月には当時の日銀・黒田総裁が大規模な金融緩和を打ち出しました。海外の投資家を中心に日本株を買う動きが強まり、株高が進みました。

その後、新型コロナの感染拡大で株価が大きく値を下げる場面もありましたが、日本やアメリカなど各国が金融緩和策を強化したことなどから、2021年2月には3万円台に到達しました。

日経平均株価はことしに入って、アメリカの株高や日本企業の業績への期待を背景に急ピッチで上昇しています。年明けに3万3000円台の取り引きで始まりましたが、2月22日に、史上最高値を34年ぶりに更新。その後も上昇を続け、4日、初めて4万円の大台を突破しました。

市場関係者 “急激な値上がりに過熱感”

市場関係者の中には急激な値上がりに対する過熱感を指摘する声もあります。

日経平均株価はことしに入ってから2月末までの2か月間の値上がり幅が5700円を超え、上昇率は17%となっています。
月末どうしの株価を比較した2か月間の値上がり幅としては過去最大となっています。

特に、株価の水準が高く、日経平均株価全体の値動きに大きな影響を与える半導体関連の銘柄が値上がりを支えてきました。
このうち
▽半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンが2か月間でおよそ46%
▽半導体の検査装置を製造するアドバンテストが44%ほど
▽イギリスの半導体開発会社Armを傘下に持つソフトバンクグループがおよそ40%上昇しています。

こうした中、株価が割高か割安かを示す指標に注目する市場関係者もいます。
1株あたりの将来の利益に対して株価が何倍かを示す予想PERは数値が高い場合、その銘柄は割高、低ければ割安だとされています。
3月1日時点で、半導体関連では40倍近くから50倍ほどとなっている銘柄もあります。
日経平均株価の全体で見ると16倍となっていて、これを大きく上回っています。
予想PERの高さは、生成AIの技術などに対する期待を表しているという受け止めがある一方で、「年明け以降、買いが買いを呼ぶ相場で株価は想定を超えて急ピッチに上昇していて過熱感はある」といった声も出ています。

専門家「想定より急上昇 乱高下の可能性」【Q&A】

日経平均株価が4万円を突破し史上最高値を更新したことについて、株式市場の動向に詳しいみずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストに聞きました。

Q.バブル期の史上最高値更新に続き4万円も突破。背景は?

三浦豊氏
円安による企業の好調な業績に加え、東証の要請を受けて企業が資本コストや株価を意識した経営に前向きに取り組み始めたという国内的な要因があり、さらに直近ではアメリカのハイテク・IT関連の株価が非常に上昇している。日本株にとってよい材料がそろっていて、特にアメリカの株高が非常にポジティブな要因として捉えられている。

Q.株価の急ピッチな上昇、予想していた?

2月に入ってからこれまでの約1か月で日経平均株価はおよそ4000円上昇していて、正直、想定より上昇のピッチは速い。ここまで短期間で急騰するとは見通せていなかった。

Q.株価の先行きを見る上でのポイントは。

アメリカの株価と日米の金融政策を受けた為替の動向が重要だ。
まず、アメリカの株高が続かなければ日本の株高も続かないと思う。
アメリカの金融政策については、FRB=連邦準備制度理事会がいつ利下げを始めるか、年内に何回、利下げがあるかが注目で、金利が下がれば株価にとってプラスに働く。

一方、日本では日銀がこの春にマイナス金利を解除するという見方が強まっていて、その後に金利がさらに上昇するか、為替が円高方向に進むかがポイントだ。
企業業績は円安で伸びている部分があり、円高が進めば業績への影響が出てくる。
日米の金融政策と、それを受けた円相場の動きにマーケットは注目している。

Q.バブルの懸念はないのか。今後の株価の見通しは。

1989年のバブル当時は企業のPER=株価収益率が60倍を超えていたが、現在は、これだけ株価が上がっても16倍程度だ。
企業の業績もバブル期を超える水準で、現状ではバブルではないと考える。
業績が今後も伸びて、企業の価値向上が伴った株価上昇であればバブルではない。

一方、市場では株価の短期的な急騰に対する警戒感があり、利益を確定させようという売りも出てくるだろう。
ただ、直近の急上昇に対して買い遅れている投資家は株価が少し下がれば買いに入る、というように、今後は売り買いが交錯してマーケットが乱高下する可能性がある。

今後のポイントは?

市場では日銀が、17年ぶりの利上げにあたるマイナス金利の解除など金融政策の転換に近く動くという見方が広がっています。
利上げが実施されれば景気に対してマイナスになると懸念する声も出ていますが、日銀は仮に利上げを行っても当面は緩和的な金融環境を続けるという姿勢を示しています。
一方、アメリカではFRBが利下げに転じるという観測が出ています。
また、それぞれの金融政策によって日米の金利水準が変われば、為替の変動や企業業績への影響も見込まれます。
このため、3月や4月に行われる日銀の金融政策決定会合やそれに向けての情報発信、FRBの高官の発言などに関心が集まっています。

また、不動産不況などを背景に減速傾向が続く中国経済の動向も焦点の1つです。
経済の減速傾向を背景とした中国市場の株安は、投資家が中国から日本に資金を移す動きにつながり、年明けからの日本株の上昇の要因になっているという見方もあります。
ただ、中国は世界第2位の経済大国で、減速傾向が続けば、日本経済や世界経済にとってリスク要因になるとも指摘されています。
今後、発表される中国の経済指標の内容や、5日から始まる全人代=全国人民代表大会で経済成長率の目標がどの程度の水準に設定されるのかもポイントになります。
さらにことし11月にはアメリカの大統領選挙も予定されています。
その結果次第では、アメリカの経済政策が大きく変わる可能性もあり、市場関係者が注目しています。