“文化遺産破壊は戦争犯罪” ウクライナ 国際会議でロシア批判

軍事侵攻を続けるロシアによる文化遺産の破壊や略奪は、戦争犯罪にあたるとしてロシアの責任を問う国際会議が開かれ、ウクライナの検事総長は「証拠は膨大にある」と述べ、国際社会に協力を呼びかけました。

国際会議は首都キーウで29日、ウクライナ政府などが主催し、各国の検察や市民団体、ユネスコなどの国際機関が参加しました。

はじめにあいさつしたウクライナのシュミハリ首相は、侵攻から2年の間に国内で900以上の歴史的建造物や宗教施設、教育関連施設などが被害を受けたと指摘した上で「ロシアは物理的な破壊だけでなく、遺産や民族の記憶を奪っている」と強く非難しました。

また、コスティン検事総長は「ウクライナの文化遺産に対する、破壊や略奪の証拠は膨大にある」と述べ、ロシア側の責任を追及していく姿勢を示しました。

そして「不法に略奪された遺産を取り戻すために行動しなければならない」と訴え国際社会に協力を呼びかけました。

ウクライナの検察はこの2年の侵攻で捜査対象になっているロシア側の戦争犯罪は市民への攻撃も含めて12万2000件以上にのぼるとしていて、徹底的な捜査を行うとしています。

100年以上前に建てられた博物館も被害

首都キーウ中心部の国立大学や劇場などが建ち並ぶ地区では、おととし10月にロシアによるミサイル攻撃を受け100年以上前に建てられた博物館で、議事堂としても使われた建物が被害を受けました。

この建物は1918年に、当時のウクライナの議会が独立を宣言した場所として知られ、ウクライナの50フリブニャ紙幣にも描かれています。

特徴はドーム型をしたガラス張りの屋根ですが、ミサイル攻撃による爆風でガラスは吹き飛ばされ、いまも作業員たちによる屋根の修復が続けられています。

博物館の代表のオレフ・ステシュク氏は「何よりもまず怒りがある。攻撃があった時、ここには人がいたのだ。私たちはすべてを復旧させる」と話していました。

ウクライナ検事総長「歴史さえも消し去ろうとしている」

ロシアの戦争犯罪について捜査しているウクライナのコスティン検事総長が29日、首都キーウでNHKの単独インタビューに応じ「ロシアはわれわれの歴史さえも消し去ろうとしている」と述べ、ロシア側がウクライナの文化遺産などを標的にしているとして強く非難しました。

この中で「ロシアの戦争犯罪は、民間人の意図的な殺害から、子どもの連れ去りや大規模な略奪まで、多岐にわたる」と非難しました。

そして「文化財を破壊することでわれわれの歴史さえも消し去ろうとしている」と述べ、徹底した捜査でロシア側の責任を明らかにし、被害額の賠償などをさせると強調しました。

その上で「ウクライナが戦場での戦いと正義のための闘いの両方で勝つために十分な支援を受けられれば、ほかの場所でも人々の命を救うことにつながる」と述べ、法や人権が守られる世界を実現するためにも、ロシアの戦争犯罪の追及に向けた支援を国際社会に呼びかけました。

また、コスティン検事総長は、ロシア軍がウクライナへの攻撃でこれまでに40件、北朝鮮製の弾道ミサイルを使ったケースが確認できたと明らかにし、実態の解明を目指しているとしています。