ガザ地区 “支援物資待つ住民112人死亡 イスラエル軍攻撃で”

イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が続くなか現地の保健当局は、食料などの支援物資を待っていた住民112人がイスラエル軍の攻撃で死亡したと発表しました。

ガザ地区でのこれまでの死者は3万人を超えたとしていて、人道危機が一段と深まっています。

ガザ地区の北部では戦闘の影響やイスラエル軍によって通行を認められないなどの理由から食料などの支援物資を運ぶトラックがたどり着けない状況が続き、人道状況が悪化していました。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは29日、北部にあるガザ市で食料などの支援物資を運ぶトラックを待っていた住民がイスラエル軍に攻撃され、多くの死傷者が出たと伝えました。

現地の保健当局はイスラエル軍による攻撃で112人が死亡し、760人がけがをしたと発表しました。

これに対してイスラエル軍は上空からの監視映像を公開したうえで「住民がトラックを取り囲み、支援物資を略奪した。その過程で押し倒されたり、トラックにひかれたりして死傷した」と説明しています。

ガザ地区の保健当局は29日、これまでの死者が3万35人にのぼったと発表し人道危機が一段と深まっています。

戦闘休止と人質解放をめぐる交渉がカタールなどの仲介で続くなか、食料支援を求める住民への攻撃という情報が伝わったことで国際社会からの批判が高まり、交渉の先行きにも不透明感が漂っています。

国連 グテーレス事務総長 事件を非難する声明

ガザ地区で食料などの支援物資を待っていた住民100人以上が死亡したという現地からの発表を受けて国連のグテーレス事務総長は29日、報道官を通じて事件を非難する声明を出しました。

そして、ガザ地区の死者が3万人を超えたとされることについて、「悲劇的なガザの人的被害について、がく然としている」とした上で、「絶望的な状況にあるガザの人たちのために、緊急の支援が必要だ」と強調し、人道目的の即時停戦とすべての人質の解放を改めて呼びかけました。

一方、国連の安全保障理事会は、対応を協議する緊急会合を29日夕方、日本時間の1日午前に開くことを決めました。

ガザ地区で食料などの支援物資を待っていた住民が死亡したことについてイタリアのタヤーニ外相は、「ガザでの悲劇的な死は、より多くの人道支援と人質の解放、そして、市民の保護を進めるために即時停戦を必要とするものだ。われわれはイスラエルに対し、ガザの人々を守り、事実と責任を厳密に検証するよう強く求める」とSNSに投稿しました。

またトルコ外務省も声明を発表し、「戦争の武器としてガザの人々を飢餓に陥れてきたイスラエルが、支援の列に並ぶ罪のない市民を標的にしたことはパレスチナの人々を消し去ろうとしている証拠だ」としてイスラエルを厳しく非難しました。

国際的なNGO「オックスファム」もSNS上で、「ガザで食料支援を待つ人々が殺されたという報道にがく然としている。イスラエルが意図的に市民を飢餓に陥れた上で標的にすることは、国際人道法に対する重大な違反だ」と非難しました。

バイデン大統領 “戦闘休止の交渉 困難に”

ガザ地区でイスラエル軍の攻撃により住民100人以上が死亡したと発表されたことについて、アメリカのバイデン大統領は29日、記者団からイスラエルとハマスとの戦闘休止などを巡る交渉を難しくすると考えるかと問われ「そうなるだろう」と述べました。

また、戦闘休止について「月曜日まではないとみられるが望みをもっている」と述べ、週明けの4日までは交渉がまとまらず、早くても5日以降にならないと戦闘休止は実現しないとの見通しを示しました。

バイデン大統領は26日、交渉が近くまとまり、4日には戦闘休止が実現することに期待を示していました。