金沢で将棋「棋王戦」第2局 倒壊家屋で発見の駒と盤を使用へ

将棋の八大タイトルの1つ、「棋王戦」の第2局が、24日に金沢市で行われます。連覇を目指す藤井聡太八冠(21)は、23日に能登半島地震の被災者にお見舞いのことばを述べたうえで、「被災地のかたに楽しんでもらえるような将棋を見せられるよう全力を尽くしたい」と意気込みを語りました。

対局を前に、23日に藤井聡太八冠と挑戦者の伊藤匠七段(21)が対局場や駒などを確認する「検分」を行いました。

使われる駒と盤は、能登半島地震で被災し、妻の紀美子さんを亡くした石川県珠洲市の塩井一仁さん(63)が提供したものです。

将棋の愛好家で、収集した駒と盤を長年、県内で行われる棋王戦に提供してきた塩井さんは、倒壊した家屋の隙間から無事だった駒を見つけたということで、23日は対局場を訪れて検分の様子を見守りました。

その後、金沢市内のホテルで開かれた前夜祭で、藤井八冠は能登半島地震の被災者にお見舞いのことばを述べたうえで「現在も大変な状況で生活をされている方が多くいると思います。いち早く復興し、日常が戻ってくるよう願っています。被災地の方をはじめ多くの方に楽しんでもらえるような将棋を見せられるよう全力を尽くしたい」と意気込みを語りました。

駒と盤を提供した塩井さんは「最前線の2人の戦いを彩る盤と駒であってほしいです。20代の2人のパワーを地元の皆さんや県内の将棋ファンにいただいて、復興の契機になればこんなにうれしいことはありません」と話していました。

「棋王戦」五番勝負は、先に3勝したほうがタイトルを獲得し、富山県で行われた第1局は互いの「玉」が詰む見込みがなくなる「持将棋」となり、規定によって引き分けとなっています。

24日の対局は、金沢市内で午前9時から始まります。

提供した駒と盤 倒壊した家屋の隙間から

今回の「棋王戦」第2局で使われる駒と盤を提供した石川県珠洲市の塩井一仁さんは、1月1日に自宅で被災しました。

1階部分がつぶれ、一緒に家の中にいた妻の紀美子さん(64)が下敷きになり亡くなりました。

金沢市で紀美子さんの火葬を終えて珠洲市に戻ってきたあとの1月22日、悲しみに暮れて倒壊した家屋の上に立ったときに、隙間から偶然見つけたのが、今回提供した将棋の駒でした。

塩井さんは将棋の愛好家で、将棋の駒と盤も収集していて、石川県内で行われる「棋王戦」の対局に2009年から、ほぼ毎年、駒と盤を提供してきました。

塩井さんは「妻が亡くなり、華やかな場所に関わるのはやめておこう」と、一度は、今回の棋王戦に駒と盤を提供するのを見送ろうと思ったといいます。

しかし、将棋にのめり込む塩井さんをいつも応援してくれていた紀美子さんの姿を思い出し、提供したいと考えたということです。

塩井さんは「棋王戦に駒と盤を提供することは、ある意味、私の日常です。妻も、これが私の日常だときっと好意的に受け止めてくれるのではないかと思い、その日常を取り戻す意味でも提供しようと思います」と話していました。