「徴用」めぐる裁判 原告側が企業の供託金を受領 韓国

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、日立造船に賠償を命じた判決が韓国で確定した裁判の原告側は、企業が裁判所に預けた供託金を賠償にあてるために受け取ったと明らかにしました。一連の裁判で、原告側に日本企業の資金が渡るのは初めてです。

韓国では去年12月、「徴用」をめぐる裁判で日立造船に賠償を支払うように命じた判決が確定し、その後、原告側は、企業が裁判所に預けていた供託金の差し押さえを申し立て、裁判所が認めていました。

これについて原告側は20日、ソウルの地方裁判所が供託金を出金する手続きを認め、賠償にあてるために受け取ったと明らかにしました。

供託金は、日立造船が韓国国内にある資産の差し押さえなどの強制執行を防ぐためのもので、6000万ウォン、日本円にして670万円余りが裁判所に預けられていました。

「徴用」をめぐる一連の裁判で、原告側に日本企業の資金が渡るのは初めてです。

韓国政府は一連の裁判で判決が確定した原告側に対し、日本企業に代わって、政府傘下の財団が支払うとする方針で、今回の原告側は供託金で足りない金額について財団から受け取ることを検討するとしています。

韓国外務省の報道官は20日の定例会見で「今回の事案は被告の企業が裁判の過程で供託金を預けて、関連の法令によって手続きが進められたものだ。財団が原告に支払いをするという政府の立場に変わりはない」と述べました。

日立造船「コメントできることはない」

これについて、日立造船は「事実関係の確認ができていないのでコメントできることはない」としています。

林官房長官「極めて遺憾 適切な対応を求める」

林官房長官は午後の記者会見で「日韓請求権協定第2条に明らかに反する判決に基づき日本企業に不当な不利益を負わせるもので、極めて遺憾だ。去年3月に韓国政府が発表した措置を踏まえ、適切な対応がなされるよう求めている」と述べました。

そのうえで「日韓両国の間に存在する諸懸案について、引き続き適切に管理し、相手方と緊密に意思疎通を図るべきことは政府として当然の責務で、わが国の一貫した立場に基づき適切に対応していく」と述べました。

また、記者団から韓国政府に抗議したのか問われたのに対し「わが国の厳重な抗議の意を韓国政府に対して、しかるべく伝達する考えだ」と述べました。