能登地方への道路で規制続く 被害全容把握できず 働き手も不足

能登半島地震の被災地の復旧や復興に向けては、物資や資材の運搬や災害廃棄物の運び出し、それにボランティアや復旧作業にあたる人たちの移動などを迅速に行う必要があります。しかし能登地方につながる道路はいまも通行できない区間があり、支援を進めるうえでの課題になっています。

石川県内では能登半島地震で主要な道路が被害を受け、通行止めや規制が続いています。

このうち自動車専用道路「のと里山海道」は、金沢市と能登半島を結ぶ交通の大動脈ですが、道路が崩れるなどしていて、いまも通行できない区間があります。

17日の時点で、越の原インターチェンジと穴水インターチェンジの間の上下線と、越の原インターチェンジから徳田大津インターチェンジまでの間の金沢方面へ向かう上り線で、通行止めが続いています。

また、柳田インターチェンジから越の原インターチェンジまでの輪島方面へ向かう下り線は、通行できるのが緊急車両に限られています。

さらに能越自動車道は、穴水インターチェンジと、のと三井インターチェンジの間が輪島方面への一方通行となり、南に向かう穴水方面は通行止めになっています。

国土交通省の北陸地方整備局は、石川県から要請を受けて復旧工事を進めていて、このうち上下線ともに通行止めになっている「のと里山海道」の越の原インターチェンジと穴水インターチェンジの間では15日、大阪や名古屋から集まった建設業者が、地震で崩れた道路の土台部分にあたる盛り土を、重機を使って撤去する作業などを行いました。

この区間では、地震で盛り土が崩れて道路の表面のアスファルト部分が割れ、道路と橋の間におよそ1.5メートルの段差ができるなどの被害があったということです。

北陸地方整備局は作業を急いで、まずは輪島方面へ向かう下り線について3月中旬をめどに緊急車両が通行できるようにしたいとしています。

北陸地方整備局の奥村忠史さんは「山あいを縫うように走っている道路で、今回の地震による被害も大規模なものだった。物資を届けることを命題に、まずは輪島、珠洲方向への1車線を確保できるよう、一刻も早く、一日でも早く作業を進めていきたい」と話しています。

国道でも、能登半島の沿岸を囲むように通る国道249号には輪島市内と珠洲市内のあわせて8か所で大規模な土砂崩れやトンネルの崩落などの被害が出ていて、復旧には時間がかかると見られています。

石川県によりますと、県が管理する道路では、16日時点で23路線、52か所で通行止めが続いているということです。

珠洲市 道路被害の全容把握できず

石川県珠洲市では、市内各地の道路で地震による隆起や亀裂による通行止めが続いていますが、1か月半たったいまも被害の全容が把握できておらず、復旧の見通しも立っていません。

珠洲市では、地震で崩れた土砂や倒壊した家屋が道を塞ぐなどして各地で通行止めが続いているほか、段差や亀裂などができた道路も多く、市内を行き交う車の多くが徐行運転する状況が続いています。

珠洲市は地元の建設会社30社でつくる「珠洲建設業協会」と協定を結び、大規模な災害時の復旧工事は入札ではなく協会を通じて建設会社に発注し、速やかに復旧工事ができるようにしていましたが、地元の建設会社も被災したため人手が足りず、国を通じて富山県や新潟県の建設会社に応援に入ってもらって工事を進めているということです。

しかし珠洲市によりますと、道路の被害状況は国を中心に調査が行われている段階で全容はつかめておらず、全面的な復旧の見通しは立っていないということです。

珠洲市の泉谷満寿裕市長は「道路は数メートルおきに亀裂や段差が発生していて、被害か所を把握できないぐらい甚大な被害だ。応急的な復旧を随時進めているが、全面的な復旧にはもうしばらく時間がかかるだろう」と話しています。

建設会社では人手不足 働き手確保の工夫も

石川県珠洲市では地元の建設会社が連日、道路の復旧工事にあたっていますが、社員も被災して人手不足が深刻になっているため、建設会社は仮設の住宅を建てたり、別の会社と協力したりする工夫で働き手を確保しようとしています。

珠洲市の建設会社で働く蔵宗茂夫さん(60)は、同居する高齢の母親と2人で地震に見舞われ、住宅が倒壊しました。

蔵宗さんが勤務する建設会社では、他にも自宅が被害を受けた社員が多くいたため、会社は仮設の住宅を建設することを決め、およそ10平方メートルの仮設住宅8棟と、キッチンやトイレなどを備えた共有スペースの1棟を会社の近くに建設しています。

蔵宗さんは市外への避難も検討していましたが、残ることを決めたということで「会社が住宅を用意してくれることで安心して仕事に打ち込めます。地元に残って仕事をすることが珠洲市の復興につながればいいなと思います」と話していました。

建設会社の明星加守暢社長は「2次避難をしている社員もいれば、家族を亡くした社員や避難所生活を続けている社員もいて、働くのは簡単な状況ではない。社員の環境を少しでも整えることで、退職を防ぎ、人手も確保して街の復旧作業を進めたい」と話していました。

また、同じように人手が足りなくなったほかの会社と急きょ、ジョイントベンチャー=企業共同体を組んで、復旧作業に当たっている建設会社もあります。

珠洲市で主に道路の舗装工事を行う建設会社では、現場で作業にあたる社員10人のうち2人が地震後に市外に避難するなどして出勤できなくなり、復旧工事を請け負うことが難しくなりました。

そこで、同じように人手が足りなくなった別の地元の建設会社と急きょ、ジョイントベンチャーを組んで復旧作業に当たっています。

用平定光工事部長は「本来なら1社でできる仕事だが、両社で力をあわせている。救援物資も入ってきているが、少しでも通りやすい道にしないと荷崩れもすると思う。復旧を早く進めて、通りやすく事故のない道路にしたい」と話していました。