株価一時700円以上値上がり 史上最高値に迫る その背景は?

16日の東京株式市場は、日経平均株価は一時、700円以上値上がりして、取り引き時間中としてはおよそ34年ぶりに3万8800円台をつけました。
1989年12月につけた史上最高値に迫る展開となり、終値でもおよそ34年ぶりの高値水準を更新しました。

その背景は?この先はどうなる?専門家にも聞きました。

取り引き開始直後から買い注文が

16日の東京市場では、アメリカの株高基調を背景に、取り引き開始直後から半導体関連の銘柄などに買い注文が集まりました。

日経平均株価は、一時、700円以上、値上がりして、およそ34年ぶりに3万8800円台をつけ、バブルの絶頂期の1989年12月につけた取り引き時間中の史上最高値、3万8957円にあと100円弱まで迫る展開となりました。

ただ、その後は、当面の利益を確定しようという売り注文も出て、上昇幅を縮小しました。

16日の終値は15日の終値より329円30銭、高い3万8487円24銭で、終値としても1990年1月以来およそ34年ぶりの高値水準となりました。

東証株価指数、トピックスは32.88、上がって、2624.73。1日の出来高は22億417万株でした。

市場関係者は「アメリカの株高に加え、国内の企業業績への期待感などから、東京市場でも株価が押し上げられ、日経平均株価は今週だけでも1500円以上、値上がりした。ただ、このところの急ピッチの上昇に相場の過熱感を警戒する見方もあり、週明け以降に史上最高値を更新するか、引き続き市場の関心が集まっている」と話しています。

日経平均株価 過去には7000円台も

日経平均株価のこれまでの推移を見てみると、バブル経済絶頂期とも言える1989年12月29日につけた3万8915円87銭(終値ベース)が史上最高値です。しかし、翌年以降は、バブル崩壊、金融危機などを経て下落していきました。

リーマン・ショック翌年の2009年3月には、終値でバブル崩壊後、最安値となる7054円98銭をつけました。

東日本大震災や歴史的な円高などを背景に株価の低迷は続きましたが、2013年に始まった日銀の大規模な金融緩和などをきっかけに上昇に転じました。その後、株価が値下がりする場面もありましたが、上昇が続き、16日は3万8487円24銭の終値をつけました。

上昇の背景は?この先は?【専門家Q&A】

マクロ経済が専門の慶應義塾大学経済学部の小林慶一郎教授に聞きました。

Q.今の株価の水準をどのように見ているか。
A.今の数字は、企業の実力、国際的な経済環境、アメリカの株高、為替など、いくつかの要因が組み合わさってできているということだと思う。バブル的な熱狂があるわけではなく、ある程度、冷静な判断をしながら、株価がじりじり上がっている状況だ。

Q.それでは、今回の株価上昇は前向きに受け止めてよいのか。
A.株価がバブル最高値を超えるか、超えないかと言っているが、これは30年以上前の株価だ。今、それを超えるか超えないかといっているのは日本だけであって、アメリカやヨーロッパはもうとっくの昔に、30年前の水準の何倍というところまで行っている状況だ。

慶應大 小林慶一郎教授

Q.日本経済はかつての活力を取り戻しつつあるのだろうか。
A.日本経済は絶対的な意味ではGDPも増えているし、いろいろな改革が進んできた面もある。しかし、世界経済の中で見ると、相対的にはやや沈んできているという面もあり、存在感は薄くなっている。

Q.相対的に存在感が薄くなった要因をどう見ているか。
A.かつての日本経済は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われて、おだてられていた面はあったかもしれないが、積極的にリスクを取りにいくという意欲が非常にあふれていた時代だった。しかし、90年代のバブル崩壊以降、政策も企業経営もリスクを取らない状態がずっと続いていて、安全サイドを見込んだ非常に保守的な経営になった。それが、今も続いていることがネガティブな問題だ。

Q.今後、日本経済が本当の意味で活力を取り戻し、株価が持続的に上昇していくために必要なことは。
A.これまではみんながリスクを取らず、縮こまっていたために、経済も成長しなかったし、生活も良くならなかった。これから、企業が積極的な事業活動を行い、雇用についても生産性の低いところから、より生産性の高い企業に移っていくということができれば、結果として生活水準も上がっていくし、より明るい将来が見えてくるのではないかと思う。

≪政府・企業の反応≫

齋藤経産相「潮目の変化を迎えている」

齋藤経済産業大臣は、16日の閣議のあとの会見で「これまでの日本経済を振り返るとバブル崩壊後は、長引くデフレの中で、企業がコストカットで利益拡大をはかる『コストカット型経済』になっていたと思うが、現在は国内外のマクロ環境の変化と積極的な産業政策により潮目の変化を迎えている」と述べました。

その上で「国内投資はおよそ30年ぶりの高い水準となるなど、順調な増加基調が見られる。こうした変化の兆しを確実なものとして、投資も賃金も物価も伸びる『成長型経済』へ転換できるよう、この機を逃すことなく積極的に取り組んでいきたい」と述べました。

経済同友会 新浪代表幹事「株価は期待値」

経済同友会の新浪代表幹事は、16日の会見で「株価は期待値であり、期待を裏切ってはいけないというその一手につきる」と述べました。

一方、1989年当時との違いについて「街中のムードと株価の大きな差は注意しないといけない。いま街中では気持ちが上向いていないのに株高が進んでいるから、一般の人からすると『なんなんだろうな』と感じているのが実態ではないか」と述べました。

そのうえで「この株価がわれわれの経済力だと思わないほうがよい。経済力は消費が引っ張っているわけで、(いまの株価は)消費にそのままつながっているということはない。期待を裏切ると一気に下がるので、そのときの方が市中への影響は大きい。この株高は怖いことで、ぬか喜びしないほうがよい」と述べました。

メーカーCEO「日本経済が大きな転換期」

大手タイヤメーカー「ブリヂストン」の石橋秀一CEOは、16日に開いた決算発表の記者会見で「日本経済そのものが大きな転換期だと思っている。日本企業がしっかりとした価値の創造をしていくことが日本の大きな動きにつながっている。もっとみんなで日本全体を盛り上げていくようなことをしていきたいし、海外の投資家を含め、そういった期待値があると思っている」と述べました。

また、自社の株価も16日の取引時間中に一時、上場以来の最高値をつけるなど、高値水準で推移していることについては、「大変ありがたいことで、経営にとっては通信簿だと思っている。株主の期待にしっかりと対応すべく今後も気を引き締めて仕事をしていきたい」と述べました。

大手証券会社の本社 顧客からの電話対応に追われる

日経平均株価が取引時間中の史上最高値に迫った16日、東京・千代田区にある大手証券会社の本社では、日本株の売買を行うトレーディングルームで100人ほどのトレーダーなどが、顧客からの問い合わせといった電話対応に追われていました。

また、別の社員は、史上最高値を更新した際に、会社の首脳が報道各社の取材に応じるため、会場の設営作業にあたっていました。

野村証券トレーディング・サービス部の柏原悟志担当部長は「多くのトレーダーが今まで経験したことのない水準の株価で、フロアにも高揚感やワクワク感があった。史上最高値は目標ではなくあくまで通過点で、ことしは4万円に向けて、日経平均株価が上昇していくのではないか」と話していました。