兵庫 小学生兄弟放火殺人 伯父に懲役30年の判決 神戸地裁

3年前、兵庫県稲美町で自宅に火をつけて小学生の兄弟を殺害したとして殺人と放火の罪に問われた53歳の伯父に対し、神戸地方裁判所姫路支部は懲役30年を言い渡しました。

住所不定・無職の松尾留与被告(53)は、2021年11月、兵庫県稲美町の自宅にガソリンをまいて火をつけ、一緒に暮らしていた妹夫婦の子どもで小学6年生の松尾侑城さん(当時12)と小学1年生の眞輝さん(当時7)の兄弟を殺害したとして、殺人と放火の罪に問われました。

裁判で、検察が死刑を求刑したのに対し、弁護側は「被告には軽度の知的障害がある」などとして死刑にすべきではないと主張していました。

15日の判決で神戸地方裁判所姫路支部の佐藤洋幸裁判長は「被告は家の中で完全に孤立する中で妹夫婦への恨みや憎しみを抱き、大切にしている存在を奪うことで自分の苦しみを分からせたいと考えたもので、命を軽視していると言わざるをえず、動機は身勝手で悪質だ」と指摘しました。

一方で「被告を無視するなどしていた妹夫婦に対して恨みを抱くのにも無理からぬ面があり、背景には留意しなければならない。また、被告には軽度の知的障害があり、問題解決能力が低いことも考慮すべきだ」などとして、懲役30年を言い渡しました。

裁判長は最後に被告に向かって「命を軽く考えていたという点は深く反省してもらわなければならない。有期刑なので、兄弟への謝罪の気持ちを持ちながら生きていってほしい」とことばをかけました。

亡くなった小学生の兄弟の父親「控訴申し入れました」

判決を受けて、亡くなった小学生の兄弟の父親は「何の罪も落ち度もない大事な息子たちを放火という残虐な手段で殺害したにもかかわらず、懲役30年という有期刑の判決には納得がいきません」と心境を語りました。

また、被告の恨みや憎しみが動機とされた点については「私たちは被告を無視していた訳ではなく、何かあれば言ってほしいとことばを交わしていた」と説明しました。

そのうえで「これでは子どもたちに対して結果を報告できません。私たちは裁判を続けるつもりなので、検察庁には控訴してほしいと申し入れました」と話していました。

神戸地検「判決内容を検討し協議したうえで対応したい」

判決について、神戸地方検察庁姫路支部の福居幸一支部長検事は「判決内容をよく検討し、上級庁とも協議したうえで適切に対応したい」とコメントしています。

被告の弁護士「控訴はしない方針」

裁判のあと、被告の弁護士は報道陣の取材に応じ、「こちらが伝えたかったことを了解してくれた判決だと思う。今後、弁護団で協議するが控訴はしない方針だ」と述べました。