自民 聴き取り結果 “還付総額 おととしまでで5億7949万円に”

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、自民党は安倍派や二階派の関係議員などに行った聴き取りの結果を公表しました。議員らへの還付の総額は、おととしまでの5年間で5億7949万円にのぼるとしています。

今回の問題を受けて自民党は先に、森山総務会長ら党幹部が、安倍派や二階派など現職の国会議員82人と8つの派閥や議員グループの幹部ら91人を対象に聴き取りを行い、15日、結果を報告書としてとりまとめ、野党に示した上で公表しました。

それによりますと、安倍派と二階派の現職の議員82人と次の衆議院選挙の立候補予定者となる支部長3人の合わせて85人のすべてに、派閥のパーティー券収入を議員側に戻す、還付金などが確認されたとしています。

還付などのシステムは、ノルマの超過分を議員側に戻す「還付方式」と、ノルマ分のみ派閥に納入して超過分を議員側に留保する「留保方式」の2つに分類され
▽還付方式が53人
▽留保方式が16人
▽還付方式と留保方式の両方を行っていたのが16人だったとしています。

85人の議員らへの還付などの総額は、おととしまでの5年間で5億7949万円にのぼるとしています。

85人のうち、当時から還付などがあることを認識していたのは32人で、このうち11人は収支報告書に記載がないことを認識していたとしています。

この理由について議員は聴き取りに対し「派閥事務局から収支報告する必要はないと言われたのを信じていた」などと説明したとしています。

還付金などを使ったかどうかは
▽使用していたのが53人
▽使用していなかったのが31人
▽還付を受けたことを議員や秘書が認識していなかったのが1人でした。

一方、報告書では、安倍派でいつからこうした還付などが始まったかは判然としないとする一方、遅くとも十数年前から行われていた可能性が高く、場合によっては20年以上前から行われていたこともうかがえると明記しています。

さらに、聴き取りの中で安倍派に所属していた議員から「派閥の上に立つ人間が責任をとらないといけないと思う」などと派閥幹部の責任を問う声が数多く上がったとしています。

報告書はとりまとめにあたった弁護士の提言として、再発防止に向けた法改正が強く望まれるなどと結んでいます。

還付金などを「使用」53人の使いみちは多岐に

報告書では還付金などを「使用していた」とする53人の使いみちも記載しています。

会合費、研修会の施設経費、懇親費用、事務費、車両の購入費、書籍代、人件費、手土産代、弁当代、翌年以降の派閥のパーティー券購入費用など多岐にわたっていますが、それぞれの金額は記されていません。

「使用しなかった」と回答した31人には理由を尋ねていて、「不明朗な金銭だったから」が13人で最も多く、次いで「将来のパーティー券ノルマへの備え」が5人などとなりました。

一方「政治活動費以外に用いた」とか「違法な使途に使用した」という回答は無かったとしています。

安倍派幹部の対応や言動に痛烈な批判 責任問う意見数多く

報告書では名前は伏せた形で、議員の証言の内容を記載し、安倍派幹部の対応や言動に痛烈な批判や責任を問う意見が数多く上がったとしています。

具体的には「派閥の上に立つ人間が責任を取らないといけない」とか「幹部は不記載を止めようと動くべきだった。このような慣習が続いたことについて幹部への憤りを感じる」、「若手よりも重鎮議員の方が危機意識が低かった」などといった声を紹介しています。

また、おととし、派閥の会長を務めていた安倍元総理大臣が、還付などの運用を取りやめるよう提案したものの、安倍氏が亡くなり、再び運用が続いたことについて「制度を復活させた幹部の責任問題だ」とか「誰がその決定をしたのかについて誰も語らない」、「派閥の総会で誰も責任を取ろうとせず、誰かがけじめをつけなければならない」などという声が上がったとしています。

一方で「改善の提案をしてこなかった負い目があり、派閥幹部だけの責任にすることを是とするものではない」といった意見も記されています。

とりまとめにあたった弁護士の提言も

報告書には、とりまとめにあたった弁護士の提言も盛り込まれています。

それによりますと今回の問題によって政治不信は深刻を極めたとして、再発防止に向けた法改正を行うよう求めています。

また、安倍派では当時の幹部が何らかの問題意識を持っていた可能性は払拭(ふっしょく)できないと指摘し「政治とカネ」に関する不正行為に罰則を科すなど党としてのペナルティーを強化することが国民の信頼回復には不可欠だとしています。

そして、当選回数による序列や人事の懸念から派閥内に閉鎖的な組織風土が生まれていた可能性があり、若手議員から「派閥に言われたら従わざるをえない」という声が多く聞かれたとして、外部通報窓口を設置することも有効な手段だとしています。

さらに、多くの議員が異口同音に秘書などのスタッフに任せきりとした実態を恥じたとしていますが「適正なモニタリングを欠いた委任はリーダーシップの放棄に、ほかならない」と厳しく批判し、定期的に報告を得るなど業務を見直すよう求めています。

岸田首相「客観性や中立性に最大限配慮」

岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「客観性や中立性に最大限配慮した報告書をとりまとめてもらった。例えば『志帥会』では少なくとも10年前から今の仕組みや処理を行っていたことや、『清和政策研究会』では遅くとも10数年前から同様の仕組みがあった可能性が高いことも明らかにしてもらった」と述べました。

そのうえで「説明責任が今回の聴き取り調査や政治資金収支報告書の修正をもって果たされるというものではない。今後もあらゆる機会を捉えて国民の信頼回復に向け、関係者には説明責任を果たしてもらわなければならないと考えており、党としても求めていきたい」と述べました。

岸田首相 不記載議員に対する処分「党として判断したい」

岸田総理大臣は、総理大臣官邸で不記載のあった議員に対する処分を行うかどうかについて「政治責任の部分については、今回の調査や関係者による今後の説明責任の果たし方、これらを踏まえて党として判断していきたい」と述べました。

自民 森山総務会長「聴き取りの目的はかなえられたのでは」

自民党の森山総務会長は、総理大臣官邸で岸田総理大臣に報告書の内容を説明したあと、記者団に対し「政治への信頼を取り戻すため、どういう経過だったのかや、どういうことが重なってこういうことになったのかを正直に伝えるのが聴き取りのいちばんの目的だったので、それはかなえられたのではないか」と述べました。

立民 泉代表「お手盛りの調査」

立憲民主党の泉代表は、記者団に対し「肝心なことは何も書いていない。『政治活動以外に使ったケースはない』などということも自己申告で、真相かどうか全く分からず、お手盛りの調査だ。再調査と政治倫理審査会への出席を同時進行で求めていく。調査に時間をかけて、出てきたものがこんなに中身が空っぽなものであれば、岸田総理大臣の責任も問われる」と述べました。

そのうえで、派閥のパーティー券収入の還付金などが確認された議員について「裏金をつくっていたことは事実だ。たまたま記載を間違えたのではなく、お金をもらっていたことを認識し、記載しなければいけないものを記載しなかったので、過失では済まされない。議員の身をひいてもらうのが筋だ」と述べました。

立民 山井氏「二階元幹事長や安倍派幹部ら政倫審出席が不可欠」

衆議院予算委員会で野党側の筆頭理事を務める、立憲民主党の山井国会対策筆頭副委員長は記者団に対し「調査結果はすべて匿名で記載され、状況が分かりにくい。やはり、二階元幹事長や安倍派の幹部ら責任ある人たちの政治倫理審査会への出席が必要不可欠だ。審査会の開催が決まらないと、新年度予算案の採決の前提となる中央公聴会の日程は決められない」と述べました。

また「今回の結果で『裏金議員』が脱税している疑いが強まった。あすから確定申告の受け付けが始まり、国民に納税をお願いしなければならないのに、自民党の多くの議員が脱税状態を放置するのは許されない」と指摘しました。

国民 玉木代表「全容解明には程遠い内容」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し「全容解明には程遠い内容だ。組織的な裏金づくりを指示したのは誰なのか、実名でしっかり出し、政治倫理審査会に出席して、みずから経緯を説明すべきだ。新年度予算案には震災対応の予算も入っているので、いたずらに審議を長引かせるつもりはないが、政治不信が高まる中、政治倫理審査会を開催することは予算を成立させる前提だ」と述べました。