初診料・再診料など診療報酬引き上げへ 中医協が改定案を答申

医療機関に支払われる診療報酬について、中医協=中央社会保険医療協議会は、医療従事者の賃上げのため「初診料」や「再診料」を引き上げるなどとしたことし6月からの改定案を厚生労働大臣に答申しました。

中医協が厚労相に答申

医療機関に支払われる診療報酬について、厚生労働省はことし6月から、人件費などに充てる「本体」部分を0.88%引き上げる方針です。

この方針に基づき、厚生労働大臣の諮問機関の中医協=中央社会保険医療協議会は14日開いた総会で、診療行為ごとの価格などの改定案をとりまとめ、武見大臣あてに答申しました。

改定案では▽診察を受ける際にかかる「初診料」や「再診料」のほか、▽入院した場合に毎日かかる「入院基本料」を引き上げるとしています。

改定で、自己負担割合が3割の人では、ほとんどの医療機関で窓口での支払いが▽初診で27円、▽再診で12円増えます。

入院基本料は、病棟の種類などによって、3割負担の人で、最大で1日あたり312円増えます。

「初診料」の引き上げは、消費税率の引き上げに伴う措置をのぞけば、2004年度以来です。

こうした引き上げなどで、看護師や看護補助者、技師などに対し、来年度は2.5%、再来年度は2%のベースアップを行うほか、40歳未満の勤務医や事務職員などの賃上げも行うとしています。

一方、医療費の抑制に向け、▽生活習慣病に関する報酬を再編し、月に1回しか請求できないようにするほか、▽処方箋料の引き下げ、▽症状が安定している場合、一定期間、受診しなくても繰り返し使える「リフィル処方箋」の発行を促す加算の拡充なども盛り込まれました。

改定後の診療報酬は、ことし6月以降に反映されます。

日本医師会「十分な賃上げの原資が得られる」

日本医師会の松本会長は記者会見で「賃上げと物価高騰への対応などのために異次元の診療報酬改定でなければならないと主張してきた。初診や再診の時に上乗せできる報酬が新設されるなど、どのような医療機関でも十分な賃上げの原資が得られる設計になっていて、主張が実った形だ」と述べました。
その上で「着実に賃上げをした実績を示し、次回の改定でも持続的な賃上げができる原資を確保できるよう働きかけていきたい」と述べました。

健保連「賃上げ対応は理解するが、じくじたる思い」

大企業などの健康保険組合で作る健保連=健康保険組合連合会の三宅泰介・政策部長は記者会見を行い、「賃上げへの対応は理解するが、入院基本料や初診料、再診料の引き上げについてはじくじたる思いだ。患者の自己負担が増加することも踏まえて国には丁寧な周知をお願いしたい」と述べました。
その上で「確実に賃上げが行われたのか丁寧に検証してもらい、目的が達成できていない場合には次回の診療報酬改定で見直すべきだ」と述べました。

《改定案の詳しい内容は》

初診料

初診料は30円引き上げられて2910円となり、さらに医療機関の職員数などによって60円から最大で700円が上乗せされて支払われます。
自己負担割合が3割の人が、初診料などの上乗せがある医療機関を受診した場合、窓口での支払いは、今より27円から219円増えることになります。

再診料

再診料は20円引き上げられて750円となり、さらに20円から100円上乗せされて医療機関に支払われます。
3割負担の人の窓口での支払いは今より12円から36円増えることになります。

入院基本料

入院基本料は、病棟の種類などによって50円から1040円引き上げられます。
3割負担の人では、窓口での支払いが1日あたり最大で312円増えます。

入院時の食費

物価高騰への対応としても、20年以上、1食あたり640円に据え置かれてきた入院患者の食費が引き上げられることになりました。
一般的な所得の患者の場合で、自己負担額を1食あたり30円引き上げて490円とし、保険適用の分も合わせて670円が医療機関に支払われることになります。

医療のデジタル化を促す加算も

医療のデジタル化を促す加算も新たに設けられます。
マイナ保険証の利用率が一定以上で、電子処方箋の発行ができるなどの条件を満たした医療機関は、加算を受けられることになっていて、こうした医療機関を受診した場合、自己負担が3割の人では月に1回、初診時に窓口で24円の追加負担が生じます。

新たな感染症対策の加算も

新型コロナの特例加算が廃止されることから、それに替わる新たな感染症対策の加算が設けられました。
感染対策を取った上で、発熱患者を外来で受け入れた場合には月に1回、初診時に200円が医療機関に支払われるほか、個室で感染対策を行う必要のある感染症患者を入院させた場合は7日間を限度に1日あたり2000円が支払われます。

医師の働き方改革への対応は

ことし4月から本格化する医師の働き方改革への対応も盛り込まれました。
地域の救急医療などを担う医療機関が、報酬の加算を受ける条件として、医師の労働時間をタイムカードなどで管理し、時間外の勤務時間や休日の勤務時間を原則として、年間で来年度は1785時間以下に、再来年度は1710時間以下に抑えることが追加されます。

介護保険施設との連携 医療機関への加算も

今回は6年に1度の介護報酬との同時改定となったことから、高齢者が地域で暮らせるよう、医療と介護の連携を進めていくための方策も盛り込まれました。
平時から介護保険施設と連携し、入所者の病状が悪化した際に、往診したり、入院を受け入れたりした医療機関への加算が設けられます。

高齢者など支援病棟の創設へ

救急搬送された高齢者などの在宅復帰を支援するため、救急患者を受け入れるとともに、リハビリや退院支援、在宅の医療や介護との連携なども進める「地域包括医療病棟」を創設し、患者を受け入れた場合、入院1日あたり3万500円が医療機関に支払われます。

医療費抑制のための見直しも

年々増加する医療費の抑制に向けた対策も盛り込まれました。
▽生活習慣病の管理料を再編し、月に1回しか請求できないようにするほか、▽処方箋料の引き下げ、さらに▽症状が安定している患者が、一定期間、診察を受けずに繰り返し使える「リフィル処方箋」の発行を促す加算を拡充するなどとしています。