能登半島地震で漁の再開見通せず 50年の漁師生活から引退決意

能登半島地震で海底の地盤が隆起し、漁船が出港できなくなっている石川県輪島市では、漁の再開が見通せないとして、50年の漁師生活からの引退を決意した男性がいます。

輪島市の輪島港の近くに住む吉浦司さん(66)は、50年間、ズワイガニなどをとる底引き網漁の漁師を続けてきました。

しかし、輪島港では今回の地震で海底の地盤が隆起し、十分な水深が確保できないため、およそ200隻ある漁船が港から出られない状態が続いています。

吉浦さんの漁船「千代丸」も輪島港の岸壁に係留されていますが、漁に出ることができず、吉浦さんは現在、妻とともに避難所で生活をしています。

また漁に出たいと考えていましたが、輪島港の具体的な復旧までの見通しが立っていないことから、漁師生活からの引退を決意しました。

2月9日に自宅に戻って片づけをしていたところ、28年前に漁船「千代丸」の完成を記念して知人につくってもらったという長さ80センチほどの船の模型を見つけました。

大切にしてきた模型でしたが、引退の区切りとして処分することにしました。

吉浦さんは「漁師は沖に出てなんぼだから漁に出たい。しかし、今後、漁ができるようになるまで何年かかるかわからないので、やめることにしました」と涙ぐみながら話していました。