地域支える学校や病院 再開も現場から不安の声 課題は

石川県では、今月6日、県内のすべての公立の小中学校で休校が解消されました。
しかし、高校の校舎を使って再開する学校もあるなど、依然として課題が残っています。

地域が抱える課題は学校だけではありません。
被災地の病院では、看護師に退職の動きもあるといいます。

石川県 公立小中学校すべて再開

県立輪島高校での登校の様子

地震の影響で、輪島市では小学校6校と中学校1校で休校が続いていましたが、市の中心部にある県立輪島高校の校舎を使って、今月6日から児童・生徒の受け入れを再開しました。

6日は午前8時半ごろから保護者と一緒に登校する子どもたちの姿が見られ、校門で出迎えた教員に対し「おはようございます」と元気にあいさつしていました。

県立輪島高校での登校の様子

小学3年の女の子
「学校で友達と会えるのはうれしい。できることをして遊びたい」

母親
「地震直後は怖がっている様子だったが今は落ち着いている。やっと友達とも会えるので、きのうはうれしそうだった」

輪島市教育委員会によりますと、6日はすべての児童・生徒915人のうちあわせて193人が登校し、高校の校舎の案内やスクールカウンセラーによる心のケアなどを受けたということです。

今後は、市外に避難するなどして登校できない子どもたちも参加できるよう、タブレット端末などを使ったオンラインを交えた授業が予定されているということです。

石川県内では地震の影響で、9つの市と町の最大65の小中学校が休校になりましたが、6日で県内のすべての公立の小中学校が再開したことになります。

教職員からは慣れない環境での再開に不安の声

被災地の学校に勤める教職員からは慣れない環境での授業の再開に不安の声もあがっています。

石川県教職員組合は先月22日までの10日間に、輪島市と珠洲市それに能登町と穴水町の4つの市と町の小中学校に勤務する教職員を対象に、能登半島地震の影響を尋ねるアンケートを行い、75人から回答を得ました。

それによりますと、
▽4割余りにあたる33人が「現在もふだんとは別の通勤経路を使っている」と回答したほか、
▽学校への通勤時間について最長で「6時間以上」と答えた人が7人いました。

自由記述では、
▽「学校への道が危険で不安を感じる」といった通勤の負担や
▽学校が避難所として使われているなど、
慣れない環境での授業の再開を不安に思う意見も多く寄せられていました。

石川県教職員組合は「教職員の中には、今も避難所での生活を余儀なくされている人もいる。被災者でもある教職員の実態を踏まえて、今後、学校をどう運営していくかしっかり考えてほしい」と話しています。

被災した子どもたちの心のケアや学びの環境整備に加えて、学校の再開で増える教職員の負担をどうサポートしていくかも今後の課題になります。

再開して2週間がたつ学校の状況は

能登町立松波中学校

能登町立松波中学校は、先月22日から再開しましたが、体育館が避難所になっているほか、近くにある小学校の児童も同じ校舎を利用しているため、生徒たちはふだんとは別の教室で授業を受けています。

また、断水の影響で調理施設が使えないため、災害備蓄用のパンやボランティアの炊き出しで給食をまかなっているということです。

1年生の女子生徒
「友達に会えることがうれしいです。早くもとの教室で授業を受けたいです」

学校が再開して2週間がたちましたが、現在も全校生徒39人のうちおよそ10人が町外に避難するなどして通学できなくなっていて、オンラインも活用して授業を続けています。

6日は加賀市の2次避難所にいる1年生の女子生徒がビデオ通話で参加していました。

災害拠点病院 一部で外来診療再開も 看護師約25%が退職意向

地域が抱える課題は学校だけではありません。

輪島市中心部の山岸町にある「市立輪島病院」は、石川県の災害拠点病院にも指定されています。

今回の地震で設備に被害を受けましたが、救助された人やけがをした人を受け入れていて、先月下旬からは、外来診療を一部の科で再開しています。

病院では職員の多くがみずからも被災しながら業務に当たっていますが、およそ120人いる看護師のうちおよそ30人が、近く退職する意向を示していることが病院への取材で分かりました。

【退職を希望する理由】
地震の影響で病院の近くの保育施設が休園するなどして子どもを預けられる施設が少ないことや、
仮設住宅の入居に時間がかかると見込まれていることがあげられ、
2次避難先の金沢市などに職場を求める看護師もいるということです。

一方で、出勤している看護師も、夜勤などに対応できる人は限られることから、175ある病床のうち、今の体制で運用できるのは、最大でも30から40床程度にとどまるということです。

病院の河崎国幸 事務部長
「看護師が25%もいなくなると病院の機能は維持できず、壊滅的な数字だ。どうすれば病院に残ってもらえるか早急に調査し、その結果を踏まえて、必要な支援を求めたい」

ほかの地域でも退職の動き

地震の影響で看護師などが勤務先の病院を退職する動きは被害が甚大だった能登半島北部のほかの地域でも見られています。

このうち、珠洲市の珠洲市総合病院と、穴水町の穴水総合病院では、今の段階で看護師を含む職員全体の1割近くが退職を検討しているということです。

また、能登町の宇出津総合病院では地震のあと、すでに看護師など5人が退職したほか、数人が退職を検討しているということです。

いずれも、地震の影響で、自宅に住めなくなったり、親族の世話をするために市外に移ることなどが退職の理由だということです。

それぞれの病院では、職員の退職に加え一部の職員が出勤できない状況も続いていて、地域医療の確保に苦慮しています。

また、能登町の柳田温泉病院は建物が大きく壊れたことから入院患者を全員転院させたうえで休診していて、この影響で全体の3割以上にあたる45人の職員が退職したということです。

病院は施設の建て替えを検討していますが、時期や費用などの見通しは立っていないということです。

厚労省 “応援の看護師 今後も状況見ながら対応”

被災地の医療機関では、病院に勤める職員も被災していて人員が足りなくなると想定されたことから、厚生労働省は先月12日以降、応援の看護師を派遣しています。

派遣先はいずれも被災地の公立病院で、
珠洲市の珠洲市総合病院、
輪島市の市立輪島病院、
穴水町の穴水総合病院、
能登町の公立宇出津総合病院の4つの病院で、今月6日時点であわせて45人の看護師が現地の応援に入っています。

応援の看護師は、全国の公的な医療機関から募集して派遣していて、5日までにのべ1085人の看護師が派遣されたということです。

厚生労働省は、今後も状況を見ながら、対応していきたいとしています。