石川県の地震想定 27年前のまま“災害度低い”と防災計画に

能登半島沖の地震をめぐり、石川県が想定される地震として地域防災計画に示していたのは27年前のもので、今回の地震よりも規模が小さく、「ごく局地的な災害で災害度は低い」と評価していました。
専門家は想定の甘さを指摘したうえで、見直しが必要だとしています。

石川県の地域防災計画には地震や津波などの対策が書かれていて、このうち津波については2014年の国の報告書を踏まえて、新たな浸水想定が盛り込まれました。

“死者7人”の想定 13年前に見直し求める意見書も

一方、能登半島沖で想定される地震については、27年前に設定された能登半島北方沖を震源とするマグニチュード7.0の地震で、今回よりも規模が小さく、「ごく局地的な災害で災害度は低い」と評価していました。

また、被害想定も、
▽死者が7人
▽建物の全壊が120棟
▽避難者が2781人などと
今回と比べて大幅に下回っていました。

県の防災会議の震災対策部会で委員を務める地元の研究者からは2011年4月に、地震想定の見直しを求める意見書が県に出されていましたが、県によりますと、見直しに着手したのは去年8月になってからだったということです。

石川県 馳知事「県として最大限の対応をした」

これについて石川県の馳知事は記者会見で、被害想定の見直しには国による調査が必要なため、国に対して早期に調査を行い結果を公表するよう求めるとともに、県としても議論を開始していたと説明しています。

そのうえで、今回の災害対応への影響について、「被害状況は自衛隊や県などで正確に共有され、県として最大限の対応をした」としています。

専門家「被害想定 甘かった」

一連の県の対応について、石川県の災害危機管理アドバイザーを務める神戸大学の室崎益輝名誉教授は、「被害想定が甘かったため、実態とかけ離れて、必要な物資やマンパワーが手に入らないということにつながった。被害想定を作るプロセスに関わっていた私にも責任があり、想定のあり方を考え直さなければならない」と話しています。

室崎益輝名誉教授は1月27日に能登半島地震の被災地の現状を調査し、被災者を支える人手などが不足しているとして改善を急ぐとともに、復興のビジョンを行政が速やかに示す必要があると指摘しました。

「能登の現実」改善するためには

このうち、多くの建物が倒壊した珠洲市の現場では、室崎名誉教授自身が29年前に被災した阪神・淡路大震災と比較し、建物によっては当時よりもダメージが大きいという見方を示しました。

一方、倒壊を免れた古い建物に着目し、地域に住み続けられる可能性を探るためにも、揺れに耐えた原因を分析することが必要だという考えを示しました。

また、市内の避難所を訪れ、被災者から、
▽避難所の運営にも携わっているため限界にきているとか、
▽2次避難先がわからず、判断に迷っているといった声を聞き取っていました。

そのうえで、今回の災害の特徴について、一般のボランティアが十分に被災地へ来ることができていないとして、被災者と被災者を支える人たちを応援する仕組みを急いで構築する必要があると指摘しました。

室崎名誉教授は「日本はさまざまな災害を経験してきたが、その分、豊富な知恵があるはずだ。日本のすべての英知を集めるくらいの気概がなければ、能登の現実は改善されない」と話していました。

国交省 道路寸断時の計画も策定進まず 総務省からの勧告も

能登半島地震では被災地につながる道路が損傷したり、崩れた土砂で塞がれたりして支援の大きな障害になりました。

道路の寸断は東日本大震災でも大きな課題となったため、国が中心となって応急復旧などの手順を定めた「道路啓開計画」を立てることが求められ、各地で計画の策定が進められました。

一方、国土交通省の北陸地方整備局は2023年4月に総務省から勧告を受けて、県や自治体と話し合いを始めたということですが、策定できていませんでした。

策定が進んでいなかった理由について北陸地方整備局は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような大規模な地震災害が想定されていなかったためとしています。

そのうえで、「計画はできていなかったが、今回の地震では道路法に基づいて県や自治体と連携した復旧作業ができていると考えている」としています。