地震で義兄亡くした漁師「守ってくれたと思うしかない」

能登半島地震が発生する直前まで一緒にいたという義理の兄を亡くした石川県珠洲市の男性は「もの静かでおとなしく、気のいい人だった。あと少し兄の家を出るのが遅れていたら全員死んでいたかもしれず、義兄が守ってくれたと思うしかない」と話していました。

珠洲市蛸島町の漁師、山崎伸次さん(65)は、地震当日の午後1時ごろ、新年のあいさつ回りのために自宅近くにある妻の兄の安宅一男さんらが暮らす家を訪れました。山崎さんの孫などおよそ10人がいたということです。

山崎さんたちは、地震が起きる15分ほど前に安宅さんの家を出たところ地震に襲われました。

山崎さんは無事で、家族を避難させたり船の安全を確保したりしたあと、2日朝の7時半ごろに安宅さんの家を再び訪れましたが、1階部分がつぶれて倒壊していたということです。

「生きているか」と声をかけながらのぞくと、義理の母親からは返事があり消防などが救出しました。

しかし、安宅さんは意識がない状態で見つかり、その後、死亡が確認されました。

去年、船を新しくした際に安宅さんから大漁旗をプレゼントされたという山崎さんは「物静かでおとなしく、気のいい人だった。本当に紙一重であと少し安宅さんの家を出るのが遅れていたら全員死んでいたかもしれない。義兄が守ってくれたと思うしかない」と苦しい胸の内を明かしました。

自宅近くの小学校で家族とともに避難生活を送る山崎さんは「いつ仕事ができるようになるかわからないが、漁が再開すれば町の活気も変わると思うし、残った人たちでがんばるしかない。それまではこの生活を我慢するしかない」と話していました。