避難先に届いた1通の年賀状 差出人は安否不明の地元の先輩

能登半島地震で被災し避難生活を続けている石川県輪島市の男性のもとに、1月下旬、1通の年賀状が届きました。

差出人は、地震のあと安否が分からなくなっている地元の先輩で、男性は「“心配かけたね”と笑って帰ってきてほしいけど、厳しいようで、つらいです」と苦しい胸の内を語りました。

輪島市河井町のすし店の店主、松野克樹さん(57)は、店舗と自宅を兼ねた建物が大きく壊れ、いまは加賀市のホテルで2次避難を続けています。

避難生活が長引く中、地震の影響で止まっていた郵便物の引き渡しが先週から始まり、届いた年賀状を確認していたところ、そのうちの1通に目がとまりました。

差出人はおよそ30年前からつきあう地元の先輩で、地震のあと安否が分からなくなっている、輪島市河井町の畠中雅樹さん(61)でした。

松野さんによりますと、畠中さんは自宅の倒壊に巻き込まれたおそれがあり、いまも連絡がとれない状況だということです。

松野さんは「1日の朝は届いておらず、年末ぎりぎりに出してくれたのかもしれない。年賀状が届いても本人がいないかもしれない状況なので、最初に見たときはつらかった」と話し、年賀状を大切そうに眺めていました。

年賀状には紅白の梅のイラストがあしらわれ、「本年も相変わらずよろしくお願いいたします」と印刷されていました。

松野さんは「温厚であまり怒るところがなく、後輩からも『はたちゃん』と呼ばれるくらいの愛されキャラでした。“心配かけたね”と笑って帰ってきてほしいけど、厳しい状況のようで、複雑な気持ちです。年賀状を見ると畠中さんを思い出し、つらい思いがこみ上げてきます」と涙ながらに苦しい胸の内を語りました。