組織委元理事側 “理事に権限なし” 五輪・パラ汚職事件裁判

東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約などをめぐる汚職事件で、5つの企業から総額2億円近い賄賂を受け取った罪に問われている大会組織委員会の高橋治之元理事の裁判で、弁護側は、「組織委員会の理事にスポンサー集めの権限はなかった」などとして賄賂にはあたらないと無罪を主張しました。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会元理事の高橋治之被告(79)は、大会のスポンサー契約やライセンス商品の審査などをめぐり、紳士服大手AOKIホールディングスや出版大手KADOKAWAなど5つの企業からおよそ1億9800万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄の罪に問われています。

31日は、無罪を主張する弁護側の冒頭陳述が行われ、具体的な主張を初めて明らかにしました。

検察は、高橋元理事がみなし公務員である組織委員会の理事として賄賂を受け取ったと主張していますが、弁護側は、「理事会にはマーケティングに関する議決権はなく、元理事にスポンサーを募るなどの職務権限は認められていなかった」と主張しました。

そのうえで、「民間のコンサルティングの一環として電通の関係者などに働きかけをしたもので、贈賄側とされている関係者から得た金はすべて民間対民間の取り引きの対価として受け取ったものだ」と述べ、賄賂にはあたらないと主張しました。

今後は、事件の関係者の証人尋問などが行われます。

「理事にスポンサー集めの権限ない」

弁護側が行った冒頭陳述の詳細です。

弁護側は、組織委員会理事としての職務権限について「スポンサーなどの決定を含むマーケティング業務の決定権限は組織委員会の会長に一任され、理事会には権限がなかった。また、被告がマーケティングを担当する理事に選ばれた事実はない」と主張しました。

そして、検察が「組織委員会の森喜朗元会長が、マーケティング担当理事として被告にスポンサー集めなどを任せた」と主張していることについては、「そのような証拠は存在しない。マーケティング担当理事としてスポンサー集めなどを任されていた事実はなく、検察の主張は実態に反する」としたうえで、スポンサー契約などに関する職務権限がなかったとしています。

“民民の取り引き”

そのうえで、5つの企業から受け取った総額2億円近くについて、「電通のOBあるいはスポーツマーケティングの第一人者としての影響力を背景に、民間のコンサルティング業者としてクライアント企業の利益のため、東京大会のマーケティング業務を取りしきっていた電通の関係者らに働きかけを行った。なりわいとしてきた民間人としてのコンサルティング業務遂行そのものであり、そこには組織委員会理事としての影響力を背景としたような状況は認められない。金銭はすべて民間対民間の取り引きの対価として供与されたものである」として、賄賂にはあたらないと主張しています。