能登半島地震 死因は「圧死」約4割 「低体温症」や「凍死」も

能登半島地震では、30日までに石川県内で「災害関連死」の疑いを含め、238人の死亡が確認されています。
このうち、警察が検視を行った222人の「死因」についてNHKが警察庁に取材したところ、倒壊した建物の下敷きになったことなどによる「圧死」が最も多く、全体のおよそ40%を占めていることがわかりました。
中には、「低体温症」や「凍死」が30人以上いたことが明らかになり、多くの人が救助を待つなどする間、寒さによって体力を奪われ亡くなっていた実態が浮き彫りになりました。

最多は「圧死」92人 「低体温症」や「凍死」が32人

NHKは亡くなった238人のうち、警察がこれまでに検視を行った222人の「死因」について、警察庁に取材しました。

死因で最も多かったのは、倒壊した建物の下敷きになったことなどによる「圧死」で、全体の41%にあたる92人、次いで、「窒息」や「呼吸不全」が49人(22%)でした。

さらに「低体温症」や「凍死」が32人(14%)にのぼり、真冬に起きた災害で、多くの人が救助を待つなどする間、寒さによって体力を奪われ、亡くなったとみられる実態が浮き彫りになりました。

このほか、市中心部の「朝市通り」で大規模な火災が発生した輪島市では、3人が「焼死」でした。

年代別では60代以上が73%

また亡くなった人のうち、年齢が判明した204人の内訳は、
▼10歳未満が4人
▼10代が8人
▼20代が6人
▼30代が5人
▼40代が11人
▼50代が21人
▼60代が22人
▼70代が56人
▼80代が47人
▼90代が24人
となっていて、60代以上が73%を占めています。

石川県は地震で亡くなった人のうち、遺族の同意が得られた人について死因を公表していますが、「家屋の倒壊」や「土砂災害」などとされていて、詳細が明らかになったのは初めてです。

自治体ごとの内訳は

警察庁への取材で明らかになった亡くなった人たちの自治体ごとの「死因」の内訳です。

【輪島市】
亡くなった98人のうち、
▼「圧死」が32人
▼「窒息」や「呼吸不全」が20人
▼「低体温症」や「凍死」が15人
▼「外傷性ショック」などが12人
▼「焼死」が3人
▼重い物などによって長時間、体を圧迫されることによって生じる「クラッシュ症候群」などが4人
▼「不詳」が12人でした。

【珠洲市】
亡くなった95人のうち、
▼「圧死」が40人
▼「窒息」や「呼吸不全」が25人
▼「低体温症」や「凍死」が15人
▼「外傷性ショック」などが13人
▼「クラッシュ症候群」などが2人でした。

【穴水町・能登町・七尾市・羽咋市・志賀町】
5の市と町で亡くなったあわせて29人では、
▼「圧死」が20人
▼「窒息」や「呼吸不全」が4人
▼「低体温症」や「凍死」が2人
▼「外傷性ショック」などが3人でした。

低体温症で亡くなった父「なんとしても行っていれば…」

輪島市内で1人で暮らしていた場崎鷹峰さん(90)です。
地震の2日後、自宅の玄関先で亡くなっているのを近所の人に発見されました。

金沢市に住んでいた長男の博之さんは、地震の直後から父親に電話をかけ続けました。
しかし一度もつながらず、実家に向かったものの、道路が寸断されていてたどり着けませんでした。

地震の翌日に、近所の人から「鷹峰さんは避難所にいるという情報がある」と聞いて安心しましたが、次の日、別の近所の人が玄関先で倒れているのを見つけたということです。

博之さんによりますと、警察からは死因は低体温症と説明され、遺体を確認すると鷹峰さんの右手は固く握られていたということです。

博之さんは「当時は情報が錯そうしていたのだと思います。父が亡くなったと聞いたときは驚きました。なんとしても2日のうちに輪島に行っていれば違っていたのではと心残りです。父の握りしめた手が印象に残っていて、本当に寒かったのだろうな、かわいそうなことをしたなと思います。玄関で倒れていたので、少しでも逃げようとしたのかなと思います。もう1か月がたちますが、心の整理がつきません」と話していました。

そのうえで、「父親は昭和を生きた頑固なおやじでした。実家が本当に好きで、輪島で育ったので離れたくないという気持ちから1人で暮らしていたのだと思います。親孝行したいときに親はいないと言いますが、そのとおりで今は先に亡くなった母親のそばに行ってゆっくり休んでくださいとしか言えないです」と話していました。

専門家「道路途絶で救助に時間かかったことも要因か」

災害救助に詳しく救急救命士の資格を持つ上武大学の加古嘉信教授は、「今回の地震の特徴は家屋の倒壊によって、圧死や窒息で亡くなった人が多く、過去の震災とも共通する。圧死や窒息などの即時型の死と一定時間は倒壊した建物の中で存命だった人が、次第に状態が悪化して亡くなったケースがあったと考えられる」と話しました。

そのうえで「低体温症」や「凍死」が30人以上いたことについて、「低体温症などで亡くなった人が過去の災害より多い印象だ。季節や寒い地域という条件が重なったうえに、特に交通アクセスが悪い輪島市、珠洲市で高い数字が出ているので、道路の途絶により救助に時間がかかったことも要因として考えられる」と指摘しています。

また、年齢別では、高齢者が多かった一方で若い世代も亡くなっていることについては、「70代から90代で亡くなった人が多い点は地域性もあったかもしれない。30代未満も一定数亡くなった背景には、帰省シーズンという状況も影響しているのではないか」と話していました。