琴ノ若 大関昇進決定 「感謝の気持ち持って相撲道に精進」

大相撲の琴ノ若が1月31日、大関に昇進し、伝達式の口上で「大関の名に恥じぬよう、感謝の気持ちを持って相撲道に精進して参ります」と決意を述べました。

“春場所は「琴ノ若」で” 春場所後に「琴櫻」継ぐ考え

祖父でもある元横綱 琴櫻のしこ名を継ぐかどうかが注目されていましたが、師匠で父でもある佐渡ヶ嶽親方と同じしこ名の「琴ノ若」のまま、3月の春場所に臨むことを明らかにしました。

琴ノ若は「この名前で上がるのが大事なのか、この名前で大関と呼ばれて土俵に上がるのが大事なのか考えて、自分自身としても1場所でもこの名前で土俵に上がりたい思いがあった」と話したうえで、春場所後に琴櫻のしこ名を継ぐ考えを示しました。

そのうえで「もう1つ上の番付があるので、上を目指して気を引き締めてやっていかないといけない。強い気持ちや責任感を持って土俵に上がっていきたい」と新大関としての決意を新たにしていました。

千葉県出身の力士では69年ぶりの大関昇進

琴ノ若は新関脇で迎えた去年の秋場所で9勝、続く九州場所で11勝、そして今月28日まで行われた初場所では優勝争いに加わって13勝を挙げ、三役で臨んだ直近の3場所の勝ち星の合計を大関昇進の目安「33」に届かせていました。

日本相撲協会は31日、次の春場所に向けた番付編成会議と臨時の理事会を開き、琴ノ若の大関昇進を正式に決めました。新大関が誕生するのは去年の名古屋場所後に昇進した豊昇龍以来で、日本出身の力士ではおととしの初場所後に昇進した御嶽海以来、2年ぶりとなります。

また、千葉県出身の力士では昭和30年の秋場所後に昇進した松登以来、69年ぶりです。

伝達式では

臨時理事会で琴ノ若の大関昇進が正式に決まったあと、協会の使者2人が千葉県松戸市の佐渡ヶ嶽部屋に赴き、琴ノ若と師匠の佐渡ヶ嶽親方に伝達式で昇進を伝えました。

これを受けて琴ノ若は口上で「大関の名に恥じぬよう、感謝の気持ちを持って相撲道に精進して参ります」と決意を述べました。

口上 “感謝の気持ち ずっと教えていただいたこと”

このあと記者会見した琴ノ若は「緊張はきのうからあって、伝達式の最初に一瞬ことばが飛んで長く感じた。目の前で部屋の兄弟子の大関昇進を見てきたが、それを自分でできたことがありがたい」と喜びを語りました。

口上に込めた思いについては「難しく考えず、自分が思ったことを素直に言おうと思った。感謝の気持ちというのは先代の佐渡ヶ嶽親方にも中学、高校の先生にもずっと教えていただいたことで、この気持ちが一番大事だと思った」と話しました。

佐渡ヶ嶽親方「大関は通過点だと思って稽古を」

大関昇進を果たした琴ノ若の師匠で父でもある佐渡ヶ嶽親方は「伝達式を終えて少しずつ本当に大関に上がったという実感がわいている。父親としても師匠としても最高にうれしい。琴ノ若にはもう1つ上の番付があるから大関は通過点だと思って稽古に精進するよう伝えた」と、率直な思いを話しました。

そして、琴ノ若が、みずからと同じしこ名を変えずに3月の春場所に臨む考えを示したことについては「私が関脇で引退したので、そのしこ名を大関まで上げてくれたことに感謝している。先代の『琴櫻』を名乗ってもいいという話をしたが、本人の『琴ノ若』の、しこ名で恩返しをしたい気持ちが強かった」と明かしました。

八角理事長 “さらに上の番付目指し精進を”

日本相撲協会の八角理事長は、大関昇進を決めた琴ノ若についてコメントを発表し「大きな期待とたくさんの重圧がある中、安定感のある落ち着いた相撲を見せてくれた。堂々として立派だった。これからは、大関という地位の誇りを持ち、責任感や緊張感を忘れずに、全力士の模範となってくれる事を期待している。今の相撲にもっと磨きをかけて、またさらに上の番付を目指して、これからも一生懸命、稽古に精進してもらいたい」と大きな期待を寄せました。

千葉県松戸市出身の26歳 祖父は元横綱 父は元関脇

祖父は元横綱 琴櫻父は師匠である元関脇 琴ノ若の佐渡ヶ嶽親方と、3代続けての幕内力士です。

埼玉栄高校を卒業後、佐渡ヶ嶽部屋に入門し、平成27年の九州場所で初土俵を踏みました。恵まれた体格を生かした四つ相撲を持ち味に令和元年の名古屋場所で新十両に昇進して師匠の父からしこ名を譲り受け、次の年には新入幕を果たしました。

そして、去年の初場所で新三役となる小結に昇進し、名古屋場所では11勝4敗の成績を残して続く秋場所では関脇に番付を上げて、父の最高位に並びました。

三役昇進後の去年1年間はすべて勝ち越すなど安定感が増し、迎えた初場所では得意の右四つに加えて祖父の相撲の映像を見て磨いた押し相撲でも力を発揮し、初優勝こそ逃したものの、13勝2敗の好成績を収めました。

琴ノ若の祖父母 涙を流しながら拍手

佐渡ヶ嶽親方の両親で琴ノ若の祖父の今野芳夫さんと祖母のとき子さんは、孫の伝達式を山形県尾花沢市の自宅でライブ配信で見守りました。

祖父母は日本相撲協会の使者から大関昇進を伝えられると、涙を流しながら拍手を送っていました。

今野さんは「大関に昇進して立派に育ってくれてうれしい。今のまま技を磨いていけば近いうちに横綱になるチャンスが来ると思うので、これからも頑張ってほしいです」とうれしそうに話していました。

とき子さんは「子どもの時に、相撲をして負けると悔しくていつも泣いていました。今の気持ちを大事にして稽古をしていけば強くなれると思います。上を目指して頑張ってほしいです」と話していました。

伝達式での口上 これまでの力士たちは

大関昇進は日本相撲協会の使者が新大関と師匠のもとを訪れて直接伝達し、新大関は受諾する意思を示すとともに大関としての決意を込めた「口上」を述べます。

【元横綱・貴乃花】
過去の口上では四字熟語を用いる例が多く、平成の大横綱 貴乃花が平成5年に大関に昇進した際には「今後も不撓不屈の精神で相撲道に精進します」と述べました。「不撓不屈」は「どんな苦労や困難にもくじけないこと」という意味で、貴乃花は横綱昇進の際にも用いていました。

【元横綱・白鵬】
元横綱・白鵬が大関に昇進した際には「大関の地位を汚さぬよう全身全霊をかけて努力します」と口上を述べました。

【元大関・琴奨菊】
琴ノ若の兄弟子の元大関・琴奨菊が平成23年に昇進した際には「万里一空の境地を求めて日々精進努力します」と決意を示しました。「万里一空」とは剣豪・宮本武蔵のことばで、琴奨菊は「どんな努力も目指す先は1つ、目標を見失わずに努力を続けるという意味で使った」と説明していました。

【大関・豊昇龍】
去年の名古屋場所のあとに昇進した豊昇龍は「気魄一閃」(きはくいっせん)ということばで「どんなことがあっても力強く立ち向かう」決意を表現しました。

【元横綱・稀勢の里】
一方で四字熟語などを使わない口上もあり、元横綱・稀勢の里が平成23年に昇進した時は「大関の名を汚さぬよう精進します」と述べました。

【大関・霧島】
去年の夏場所後に昇進した霧島も「大関の名を汚さぬよう今まで以上に稽古して頑張ります」と決意を示していました。

琴ノ若の地元 松戸市では「祝大関昇進琴ノ若関」の横断幕

地元の松戸市では、31日正午に市役所の館内で「祝大関昇進 琴ノ若関」と書かれた縦およそ80センチ、横およそ4メートルの横断幕が掲げられ、市役所を訪れていた市民などが見上げていました。

いつもテレビで大相撲を見ているという市内に住む70代の男性は「先場所と今場所は本当に強くなったと思います。この先は横綱を目指してもらいたいです。松戸市をあげて応援しなくてはいけないと思います」と話していました。

50代の女性は「市民としてうれしいです。テレビで取り組みを見ましたが、正攻法でダイナミックな印象があります。このおかげで松戸市にも活気が出てくるといいと思います」と話していました。