トヨタ自動車 豊田章男会長が陳謝 認証取得に関する不正相次ぎ

トヨタ自動車の豊田章男会長は30日、名古屋市内でグループの指針について説明会を開き、ダイハツ工業や豊田自動織機などグループの企業で認証取得に関する不正問題が相次いでいることについて、「日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機の相次ぐ不正により、お客様をはじめステークホルダーの皆様にご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを深くおわび申し上げます」と述べて陳謝しました。

そのうえで、豊田会長は「当初、グループビジョンは豊田佐吉の誕生日である2月14日に共有する予定でしたが、昨今のグループ会社の状況をふまえて前倒しをして発表させていただくことにしました」と述べました。

豊田会長は、グループの企業で認証取得に関する不正問題が相次いでいることについて、「認証で不正をしたわけで、販売してはいけない商品をお客様に届けたということが起こったと思う。絶対にやってはいけないことをやってしまった。認証において不正を働くということは、お客様の信頼を裏切り、認証制度の根底を揺るがす、極めて重いことであると受けとめている」と述べました。

そのうえで、社長に就任した直後の2009年以降、アメリカでの大規模なリコール問題を受けて議会の公聴会に出席するなど対応を行ってきたことを踏まえ、「グループの責任者であり、トップではないが、グループの中で一番最初に信頼を失ったのはトヨタ自動車であるので、相談相手としては、頼りになる存在になるのではないかなと思う」と述べました。

そして、「私自身が会長になったことで、現執行に対しても、ほかの会社に対しても、多少の遠慮を持ち、微妙な距離感を持っていたが、責任者ということで、もう一度、グループやトヨタ自動車を見ていきたいと思っている」と述べました。

豊田会長 新たなビジョンを発表

豊田会長は30日の説明会で、トヨタグループの17社で共有する新たなビジョンを発表しました。

ビジョンは「次の道を発明しよう」と題するもので、技術革新により自動車産業の概念が変わる中、多様なモビリティサービスを通じて、企業グループのモデルチェンジを目指すとしています。

そのうえで、従業員の「心構え」として、技術を磨くことや、正しいモノづくりを重ねることなどを求めています。

説明会の中で豊田会長は「いま、私がやるべきことはグループが進むべき方向を示し、次世代が迷った時に立ち戻る場所をつくること、すなわちグループとしてのビジョンを掲げることだと考えた」と述べました。

豊田会長は、このビジョンと心構えを30日、グループ17社の経営陣や幹部に説明したということです。

トヨタ自動車のグループ会社 不正が相次いで明らかに

トヨタ自動車のグループ会社では、おととし、2022年以降、国の認証の取得などに関する不正が相次いで明らかになりました。

【日野自動車】
2022年、エンジンの排出ガスなどについて不正なデータを国に提出していたことが明らかになりました。

外部の有識者でつくる特別調査委員会の調査で、不正は少なくとも2003年からおよそ20年にわたって続けられていたことが明らかになり、調査報告書では、不正の原因として「業務をマネジメントする仕組みの軽視」などを指摘しました。

そのうえで報告書では、上意下達の気風が強い組織風土や、パワーハラスメントが生まれやすい体質、開発プロセスのチェック機能が不十分だったことなども指摘されました。

さらに、その後、国土交通省が行った立ち入り検査で新たな不正が見つかりました。

国土交通省は、不正行為は極めて悪質だとして、2019年の道路運送車両法の改正で新たに作られた「是正命令」を初めて適用し、会社側に抜本的な改革を求めました。

【ダイハツ工業】
2023年4月に海外向けの一部の車種で認証に必要な衝突試験の際に不正があったことが明らかになり、その後、国内向けの車種でも不正が発覚するなど問題が拡大しました。

去年12月には第三者委員会の調査で新たに174件の不正が見つかったことが公表され、報告書の中では、短期間の開発スケジュールによるプレッシャーや、コンプライアンス意識の希薄化、さらに開発や認証のプロセスでチェック体制が構築されていなかったなどの問題点が指摘されました。

こうした問題を受け、国土交通省は会社に対し、日野自動車に続いて2例目となる「是正命令」を出しました。

【豊田自動織機】
今回の豊田自動織機の問題は、2023年3月に、フォークリフト用のエンジンなどで法規違反が明らかになり、会社が設置した特別調査委員会による調査が進められていました。

その結果、新たにフォークリフトや建設機械用のエンジン7車種で排ガス試験のデータの不正が明らかになったほか、トヨタ自動車から開発の一部を受託している自動車用エンジン3種類でも出力試験で見栄えのよいデータにするなどの不正が明らかになりました。

報告書では、不正を招いた原因について、コンプライアンス意識の欠如や、管理・監督意識の欠如があったと指摘しています。