続く断水いつまで?なぜ長期化? 洗濯できない状況に被災者は

地震で大きな被害を受けた石川県の能登地方では広い範囲で断水が続いています。遅い地域では復旧するのは4月以降となる見込みです。なぜ、断水解消に時間がかかるのか、復旧までの間、生活に欠かせない洗濯をどうしているのか、今後の見通しとあわせてお伝えします。

断水は依然4万戸余 遅い地域では4月以降に復旧

石川県によりますと1月29日午後2時の時点で、8つの市と町のあわせておよそ4万1890戸で断水が続いています。

石川県は、被災した自治体の水道の復旧時期の見通しを明らかにしています。

▽輪島市、穴水町、能登町では、いずれも2月末から3月末に仮復旧の見込みです。

▽珠洲市では、2月末から順次、仮復旧する予定で、遅い地域では、4月以降となる見込みです。

▽七尾市では、七尾市街、和倉地区、能登島地区を中心に4月以降となる見込みで、そのほかの地域では、3月末までに仮復旧する見込みです。

▽志賀町では、おおむね2月末までに仮復旧し、一部で3月末となる見込みです。

県はこれらの6つの市と町ではおおむね被災した浄水場の機能回復を終えて水を流して漏水調査や修繕を行う作業に入っているとしていて1日も早い復旧を目指すことにしています。

また、一部の地域で断水となっているのは、▽羽咋市のおよそ60戸、▽内灘町のおよそ630戸です。

復旧の動きも 解消には時間が

このうち七尾市では、3月中には大半の地域で断水が解消できるよう引き続き作業を進めることにしています。

七尾市では市内の7割の世帯が石川県が白山市から引いている水道の水を利用しています。

県が運営する「県水」と呼ばれるこの水道の水は、七尾市に水を引き渡す「供給点」と呼ばれる場所まで送られ、その後、市の水道を使って各世帯に送られます。

石川県は県が運営する水道の復旧に時間がかかると見込んでいましたが、復旧作業が順調に進んだことから当初の予定より2か月ほど早く29日、七尾市の供給点までの送水が開始されました。

今後、市の水道に試験的に水を通しますが、漏水などがあれば修繕を行う必要があるため、七尾市では断水が解消するのは▽来月中で80%余り、▽大半の世帯で解消するのは3月中との見通しを示しています。

七尾市 茶谷義隆市長

「断水で大変な不便をかけていますが、水がもと通りに通るのが目に見えてきている状況です。現在の見通しどおりに整備を進められるよう取り組んでいきます」

なぜ時間がかかるのか?要因に広範囲 老朽化 雪…

なぜ、七尾市では長期間にわたり広範囲の断水が続いているのでしょうか。

それは、この地域の送水方法が関係しています。

能登地方の市や町では断水の被害が広範囲にわたっていて、水道管が壊れた場所の調査や修繕に多くの時間を要しています。

石川県によりますと広い範囲で断水となっている輪島市や珠洲市など能登地方のあわせて6つの市と町では、浄水場の機能はおおむね回復しているということです。

現在、自治体によっては水道管に試験的に水を流して漏水している場所の調査にあたっていますが、調査は、水道管の水を止める役割を持つ止水栓や住宅の水道メーターの周辺を1か所ずつ確認して行われます。

水が漏れている場所があれば水道管を交換したり修繕したりすることになりますが被害が広い範囲にわたっている上、修繕する作業があればより多くの時間が必要となります。

こうした大規模な断水が起きたことについて石川県の馳知事は27日に「老朽化した配管など、耐震化の遅れがダメージの大きさに直結している」と述べました。

雪も作業をさまたげる要因としてあげられます。

雪が積もると止水栓の場所が見えなくなるため、まずは除雪を行う必要があり、円滑に作業が進まなくなる要因となっています。

また、6つの市と町には水道管の復旧のために全国の自治体からあわせておよそ170人の職員が応援に入っていますが、現地での宿泊が難しい中、金沢市に宿泊する職員もいて移動に時間がかかり、作業できる時間が限られていて、今後、現地での拠点の整備も急がれます。

被災者は洗濯に苦労 コインランドリーを目指して

七尾市では、洗濯のために市外のコインランドリーを利用する人が相次いでいます。

日曜日の28日、七尾市の中心部から車で30分ほどのところにある中能登町のコインランドリーでは、8台ある洗濯機がすべて稼働する状態が続き、多いときには10人以上が洗濯待ちの列をつくっていました。

このコインランドリーでは被災者を支援するため通常400円から1000円の洗濯機の利用料金をすべて100円にしているということです。

七尾市の30代女性
「4人家族で小さい子どももいるので、洗い物がかさんでしまって困っています」

家族3人分の洗濯をしにきた七尾市の40代女性
「仕事もあるので頻繁に来ることができません。断水が解消すれば洗濯もお風呂もできるので早く水が戻ってほしいです」

七尾市の避難所に避難している人たちの中には、さらに車で1時間以上かけて金沢市や富山県氷見市のコインランドリーに通っている人もいて、こうした人たちの間ではコインランドリーの利用料金や往復の車で使うガソリン代の負担も高まっています。

ボランティアの洗濯支援も

七尾市では、ボランティアによる洗濯の支援も一部で始まっています。

28日の朝、50人余りが避難している七尾市の中島小学校ではボランティアグループが20人分の衣類や毛布を回収し、車に積み込んでいました。

このグループは、金沢市や長野県などのクリーニング店の経営者などがメンバーで、今月20日から活動を始めているということです。

メンバーたちは回収した衣類などを石川県白山市にあるクリーニング店で洗濯し、避難所に届けました。

洗濯物を受け取った70代の女性は地震直後からこの避難所に身を寄せていますが、断水が続いているためこれまで1度も洗濯ができていなかったということです。

洗濯物を受け取った女性
「服も毛布もとてもきれいになってよかったです。また利用したいです」

グループの代表は、断水が続く地域で洗濯できる環境を改善することは喫緊の課題だと指摘しています。

グループ代表 中村祐一さん

「避難している人の中には水が出ないことでいまだに洗濯を諦めている人もいました。できるだけ日常に戻せるよう支援をしていければと思っています」