国連機関スタッフ 攻撃関与疑い 日本もUNRWAへの資金拠出停止

パレスチナのガザ地区で活動する国連機関のスタッフが、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことで、資金拠出の停止を表明する国が相次いでいます。

日本政府は、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関への追加の資金拠出を一時的に停止すると発表しました。拠出額の多いアメリカや日本などを中心に、これまでに10か国を超え、ガザ地区での支援の継続が危ぶまれる事態となっています。

イスラエル軍は、ハマスの重要な拠点があるとするガザ地区南部ハンユニスを包囲して攻勢を強めていて、28日も空挺部隊をハンユニス中心部に投入し、市街地で建物の中に潜むハマス側の戦闘員と激しい銃撃戦を行っていると発表しました。

ガザ地区の保健当局は、イスラエル軍の攻撃でこれまでに2万6422人が死亡したとしています。また、ハンユニスにあるナセル病院は、多くのけが人が運び込まれているものの物資の補給ができず、発電用の燃料があと数日で底をつくと訴えています。

こうしたなか、ガザ地区で支援にあたるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のスタッフが、去年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことを受けて、資金拠出の一時的な停止を表明する国が相次いでいます。

アメリカやドイツなどに加えて、28日にはフランスや日本も追加の拠出を停止すると明らかにしていて、停止を表明した国は拠出額の多い国を中心に10か国を超えています。

こうした措置を受けて国連のグテーレス事務総長が、28日「せめてUNRWAの活動の継続だけは保証してほしい」と訴えたほか、トルコ政府も声明で「最も損害を受けるのはパレスチナの人々だ」と指摘するなど、ガザ地区での支援の継続が危ぶまれる事態となっています。

日本政府“UNRWAへの追加の資金拠出を一時停止”

日本政府は28日夜、外務省の小林外務報道官が談話を発表し「疑惑を極めて憂慮しており、UNRWA側で調査が行われ、対応策が検討される間、追加的な資金拠出を一時停止せざるを得ないとの判断に至った」として、UNRWAへの追加の資金拠出を一時的に停止すると明らかにしました。

その上で「調査が迅速かつ完全な形で実施され、適切な対応がとられることを強く求める」としています。

外務省によりますと、去年11月に成立した今年度の補正予算にはイスラエル・パレスチナ情勢を踏まえたUNRWAに対する支援として、およそ3500万ドルが盛り込まれていますが、まだ送金はされておらず、この拠出を一時的に停止するということです。

トルコ外務省「最も損害受けるのはパレスチナの人々」

トルコ外務省は28日、声明を発表し「資金提供を停止する一部の国々の決定を懸念している。数人の職員に対する告発による資金拠出の停止で最も損害を受けるのはパレスチナの人々だ」とした上で、各国にUNRWAへの拠出を再開するよう促しました。

トルコはおととし、国際社会で欧米や日本などに次いで10番目に多い、2500万ドル余りをUNRWAに拠出していました。

林官房長官「適切な対応 取られること強く求める」

林官房長官は午前の記者会見で「疑惑について極めて憂慮しており、当面は追加的な資金拠出を一時停止せざるをえないという判断に至った。UNRWAが本来果たすべき役割をしっかり果たせるよう、調査が迅速かつ完全な形で実施され、ガバナンスの強化を含めて適切な対応が取られることを強く求めている」と述べました。

そのうえで「わが国は引き続き他の国際機関などへの支援を通じてガザ地区の人道状況の改善、事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていく」と述べました。