石川県 能登半島地震の被災地へ ボランティアの派遣始まる

能登半島地震の被災地では石川県によるボランティアの派遣が27日から始まり、現地で廃棄物の仕分けなどの活動にあたっています。

27日は石川県庁で出発式が開かれ、七尾市、志賀町、穴水町に派遣される、およそ80人のボランティアを前に、馳知事が「現地は想像を絶する状況で、被災された人々は先が見えずに途方に暮れている。皆さんの温かい思いとお手伝いに感謝したい」と激励しました。

そのあと、ボランティアはバスに乗り込んでそれぞれの場所に向かいました。

このうち、志賀町の野球場の敷地に設けられた廃棄物置き場では、30人ほどのボランティアが次々に持ち込まれてくる壊れた家具や割れたガラスなどを仕分ける作業にあたっていました。

東京から参加した救急救命士を目指しているという24歳の男性は「思い出の品なども見受けられるので胸が痛いです。真剣に作業に取り組みたいと思います」と話していました。

ボランティアは現地での宿泊施設の不足などから、当面は金沢市内との間をバスで往復しながら活動するということです。

一方、珠洲市や輪島市など被害が甚大な自治体ではボランティアの受け入れのめどが立たない状況が続いています。

七尾では 17人のボランティアが現場に

石川県七尾市でもボランティアが家財を運び出す作業などを行いました。

七尾市には県のボランティアに登録した17人が到着し、市の職員からスコップなどの資材を受け取ったあと、4つのグループに分かれて現場に向かいました。

このうち、水道管の破裂によって家の中まで土砂が入り込んだ七尾市郡町の住宅では、土砂を被った畳などをトラックに乗せて災害廃棄物の仮置き場に運び出す作業を行いました。

東京から来た加藤優希さんは「自分でできることは精いっぱいしたいと思い参加しました。思い出の品もあったので、悲しい気持ちになりました。今後も仕事の都合が付けば参加していきたいです」と話していました。

ボランティアの手伝いを受けた夫婦は「家財は土を被ってしまい、運び出すのはとても力がいる仕事でしたが、ボランティアの人が来てくれて、とても頼もしいし、とても安心しました」と話していました。

“過去の災害で受けた支援の恩返しを”と参加した人も

活動を始めたボランティアの中には過去の災害で受けた支援の恩返しをしたいと参加した人もいます。

石川県川北町の西出清浩さん(63)は小松市の教育委員会で働いていたおととし8月、豪雨で市内の河川が氾濫した際、各地からボランティアが駆けつけて活動してくれたことをよく覚えているといいます。

能登地方はかつて教員時代に、部活動の遠征でよく訪れていた地域でもあり、今回は自分が支援する側に回りたいと応募したということです。

西出さんは27日、ほかのボランティア5人と一緒に志賀町にある3軒の住宅で壊れた家具の運び出しなどを行いました。

支援を受けた住宅の65歳の女性は「家の中には1人では動かせないものや階段で降ろせないものがあり、片づけが進みませんでした。ボランティアがこんなに早く来てくれるとは思ってもいなかったので本当に助かりました」と話していました。

西出さんは「散乱した家財や写真をみると心に迫るものがありました。もっと多くの人手が必要だと感じたので、また参加して手助けしたいです」と話していました。

知事 支援に感謝 個別の活動控え事前登録呼びかけ

馳知事は記者会見で、支援に感謝の意を示すとともに、個別での活動は控え、県に事前登録を行うよう重ねて呼びかけました。

この中で馳知事は、27日からおよそ80人のボランティアが派遣されたことについて、「本当に感謝しており、ありがたいと思っている」と述べ、感謝の意を示しました。

そのうえで、県の派遣とは異なる形で個別に活動を行うと、渋滞を引き起こすなど被災地の負担になりかねないとして、個別での活動は控え、県に事前登録を行うよう重ねて呼びかけました。

そして、まだ派遣が始まっていない輪島市や能登町などについては、どのような支援が必要か、自治体と連携して調査を行っていると説明しました。

また、馳知事は「自宅の解体作業の際には、今後も持っていたいアルバムなどの宝物がある。可能であれば、確認の過程を経たうえで解体や撤去の作業をしてほしい」と述べ、今後、倒壊した家屋を業者などが解体する際には、被災した人に寄り添った丁寧な作業をするよう要請しました。

輪島では ボランティア望むも受け入れできず

能登半島地震で大きな被害が出た石川県輪島市では住宅の片づけなどが思うように進まず、被災した人たちからはボランティアの協力を望む声が聞かれます。

今も市内のほぼ全域で断水が続く輪島市では、道路状況が悪く、インフラも復旧していないため、市外からのボランティアを受け入れていません。

輪島市河井町に住む65歳の夫と55歳の妻の夫婦は、1月1日の地震で津波の危険があるということで、一度は自宅を離れましたが、翌日の2日には自宅に戻りました。

1階は2人で片づけたということですが、2階の妻の寝室は壁がはがれ落ち、書斎は大人の背丈ぐらいある棚が折り重なるように倒れて、書類や本が散乱したままになっています。

2人だけでは思うように片づけが進まず、妻は寝室ではなく、1階の居間で寝る生活が続いてます。

夫は「2人では運び出すことができないものが多く、散らかっているのを見ると、地震のことがフラッシュバックして落ち着きません。前に進むためにも、ボランティアと一緒に片づけをしたいです」と話していました。

また、妻は「自分たちのほかにも、このあたりにはもっと大きな被害を受けて、片づけに困っている人がたくさんいるので、ボランティアが来てくれたらありがたいです」と、ボランティアが来ることを望んでいました。