「徴用」めぐる問題 不二越の上告棄却 賠償命令確定 韓国

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国人の元労働者や遺族が日本の機械メーカーに対して損害賠償を求めていた裁判で、韓国の最高裁判所は、日本企業側の上告を退け、賠償を命じる判決が確定しました。

「徴用」をめぐる問題で、韓国人の元労働者や遺族が、「過酷な労働を強いられた」などと主張して、富山県に拠点を持つ機械メーカーの不二越に対し損害賠償を求めた3件の裁判で、韓国の裁判所はこれまで1審と2審でいずれも賠償を命じ、不二越側が上告していました。

25日、韓国の最高裁判所は、「原告側の個人の請求権は、1965年の日韓請求権協定の範囲に含まれない」として3件でいずれも上告を退け、賠償を命じる判決が確定しました。

日本政府は、「徴用」をめぐる問題は日韓請求権協定で解決済みとの立場ですが、韓国の最高裁は、これまで合わせて12件の裁判でいずれも日本企業に賠償を命じています。

原告側の支援団体によりますと、同様の裁判は、1審と2審でおよそ60件が係争中だということで、今後もこうした判決が続くことが予想されます。

一方、韓国政府は、判決が確定した原告側に対し、日本企業に代わって政府傘下の財団が支払いを行う方針を示しています。

林官房長官「極めて遺憾で断じて受け入れられず 韓国側に抗議」

林官房長官は午前の記者会見で「日韓請求権協定に明らかに反し、極めて遺憾で断じて受け入れられず、韓国側に抗議を行った。韓国政府は、去年3月、判決金と遅延利息は、韓国の財団が支給する予定だと表明しており、それを踏まえて対応されると考えている」と述べました。

一方、日立造船に賠償が命じられた裁判をめぐり、原告側の求めに応じて会社が裁判所に預けた供託金の差し押さえが認められたことについて「供託金を納めたという点で特殊だが、去年3月の発表を踏まえ適切な対応がなされるよう韓国政府に求めている」と述べました。

そのうえで「厳しい戦略環境を踏まえると、日韓の緊密な協力が今ほど必要とされる時はない。懸案については、わが国の一貫した立場に基づき適切に対応しつつ、引き続きさまざまな面で取り組みを進めていく」と述べました。

外務省 韓国次席公使に抗議

外務省の鯰アジア大洋州局長は、東京にある韓国大使館のキム・ジャンヒョン(金壯◎)次席公使に対し「この判決は、先月21日と28日、今月11日の判決に続き、日韓請求権協定に明らかに反し、極めて遺憾で断じて受け入れられない」と抗議しました。

一方で、「韓国政府は、去年3月に発表した措置の中で旧朝鮮半島出身労働者に関して係属中のほかの訴訟が、原告勝訴として確定する場合の判決金などは、韓国の財団が支給する予定であることをすでに表明していて、それを踏まえて対応されるものと考えている」と述べました。

※(金壯◎)の◎は「火へんに玄」

不二越「本件は解決済みで判決は極めて遺憾」

韓国の最高裁判所が企業側の上告を退け、賠償を命じる判決が確定したことを受けて、「不二越」は「本件は1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みで今回の判決は極めて遺憾。日本政府とも連携をとり、適切に対応する」とコメントしています。