冬のユース五輪 井上暖乃美が銅メダル 日本勢初 20日の結果は

韓国で19日開幕した、若手アスリートが参加する冬のユースオリンピックの競技が始まり、スケートショートトラック女子1500メートルで15歳の井上暖乃美選手が銅メダルを獲得しました。今大会の日本勢で最初のメダル獲得です。

若手アスリートが参加する冬のユースオリンピックは、19日の開会式で開幕し、7競技、81種目が行われる大会の競技が20日から始まりました。

ショートトラック1500m 15歳の井上暖乃美が銅メダル

スケートのショートトラック女子1500メートルでは、福岡市の中学3年生で15歳の井上選手が予選と準決勝を勝ち上がり、日本勢でただ1人、決勝に進みました。

1周110メートル余りのリンクを13周半して競う1500メートルの決勝は、中国の選手がスタート直後に飛び出して1周近く引き離す展開となりました。

井上選手は「一度落ち着こうと思った」と無理に追いかけず、序盤、3番手につけてレースを進め、残り5周を過ぎたところからペースを上げました。

井上選手はラスト1周を残してゴールと勘違いするミスをしたものの、2分42秒293の3位でフィニッシュし、今大会の日本勢で最初のメダルとなる銅メダルを獲得しました。

金メダルはスタート直後に飛び出して終始リードを守った中国の選手でした。日本からもう1人出場した17歳の吉澤葵選手は準決勝敗退でした。

一方、男子1500メートルの鬼田来人選手は決勝まで勝ち進みましたが、6位となり、渕上結太選手は決勝に進めませんでした。

スピードスケートのショートトラックは21日、男女の1000メートルが行われます。

井上「ミスはあったが自分の力を出し切れた」

今大会、日本勢最初のメダルを獲得した15歳の井上暖乃美選手は「最後の1周は周回を間違えてしまうミスはあったが、自分の力を出し切ることはできた。緊張していたが、メダルを取ることができてよかった」と少しはにかんだ様子で話しました。

その上で、21日以降の種目に向けては「500メートルは苦手ではあるが、きょうみたいに全力を出し切って、1000メートルではメダルが取れるように頑張りたい」と話していました。

井上暖乃美選手とは

スケートのショートトラック、女子1500メートルで銅メダルを獲得した井上暖乃美選手は福岡市の中学校に通う15歳です。

母親の勧めで小学生からスケートを始め、福岡市内にある「博多スケートクラブ」では、1988年のカルガリーオリンピックで公開競技として実施されたショートトラックの3000メートルリレーで銀メダルを獲得した山田由美子さんから指導を受けています。

井上選手は山田さんの指導を受けて、ランニングなどの有酸素運動を積極的に取り入れていて、今大会でも個人種目では最も距離の長い1500メートルで、終盤までスピードの落ちないスタミナを見せて、銅メダルを獲得しました。

今後も地元の福岡を拠点に世界での活躍を目指すということです。

スキージャンプ女子 16歳の佐藤柚月が6位

スキージャンプの女子ノーマルヒルは2018年のピョンチャンオリンピックでも使われた、ヒルサイズ109メートルの「アルペンシアスキージャンプセンター」で行われました。

日本からはいずれも16歳で、開会式で日本の旗手を務めた佐藤選手と櫻井羽奈選手の2人が出場しました。

このうち、佐藤選手は1回目にスムーズな踏み切りから92メートル50をマークして8位につけました。

そして2回目はジャンプに有利な向かい風を捉えて101メートル50と飛距離を伸ばし、ポイントの合計を186.2として、順位を2つ上げて6位に入りました。

一方、櫻井選手は1回目が78メートル50、2回目が77メートルで合計ポイントは103.3で20位でした。

金メダルは100メートルを超えるジャンプを2回そろえてポイントの合計を215.7としたスロベニアの選手が獲得しました。

6位の佐藤柚月「いい風に乗っていけた 団体も頑張りたい」

スキージャンプ女子で6位に入った佐藤柚月選手は「2回目はいつも課題となっているタイミングの遅れがあったが、いい風に乗っていけたジャンプだった。100メートルを超えることができてすごくうれしかったが、課題はまだまだあるので、そこを直して次につなげたい。団体も最善を尽くして頑張りたい」と話していました。

20位の櫻井羽奈「周りの選手が刺激に 自分も強くなりたい」

また、20位だった櫻井羽奈選手は「練習の時よりもいいジャンプができたので、自分の中ではすごくよかった。周りの選手がとてもうまくて、いい刺激になったし、自分ももっと強くなりたい」と話していました。

スキージャンプ 男子ノーマルヒル 佐々木星語が24位

一方、スキージャンプの男子ノーマルヒルには、いずれも15歳の中学生、佐々木星語選手と三上託摩選手が出場しました。

このうち、佐々木選手は1回目で88メートル50、2回目は82メートル50と飛距離を伸ばせず、合計ポイント137.7で24位でした。

また、三上選手は1回目で82メートル50、2回目は85メートルと飛距離を伸ばしたものの、合計ポイント132.9で26位でした。

金メダルは100メートルを超えるジャンプを2回そろえたカザフスタンの選手でした。

佐々木選手は「ユースオリンピックに出られたことは本当にうれしかったが、自分のジャンプを出すことができなかった。イメージもアプローチもいい感じだったが、少し力んでしまったかもしれない。今はかなわなかったが、世界の選手に勝てるようになっていきたい」と話していました。

また、三上選手は「まだまだだと思ったし、もっと頑張りたい。緊張してしまうと固くなってしまうので、そこを大会で出ないようにしていきたい。団体ではK点を超えるジャンプをしてメダルを取りたい」と話していました。

スキージャンプは21日、男女2人ずつの選手が出場してチームで競う複合団体が行われます。

【会場の様子は】

けが・ドーピング防止の教育プログラムも

ユースオリンピックは競技の結果を競うだけでなく、若いアスリートの教育も目的としていて、韓国で開催されている4回目の冬の大会でも選手村にブースが設けられ、選手たちがケガを防ぐトレーニング方法やドーピングに関する知識を学ぶといった教育プログラムを受講しています。

ことし15歳から18歳になる若手のアスリートが出場するユースオリンピックの選手村には、選手の教育を目的としたプログラムのブースが設けられています。

プログラムにはめい想やけが防止のトレーニング方法を体験できるものや、八百長の防止などアスリートの心構えについてクイズ形式で考えてもらうコーナーなどがあり、選手たちが競技や練習の合間にブースを訪れてさまざまなプログラムを受講しています。

19日は日本の女子選手3人がドーピングに関する知識を学んでいました。

スケルトン女子の篠原彩緒選手は「ドーピング検査はあまり受けたことがないし、詳しい方法や不安なことを聞けたので安心しました。説明は英語が多くて大変ですが、ふだんはできない経験なので楽しいです」と話していました。

教育プログラムに参加しているJADA=日本アンチドーピング機構の齋藤里香さんは「積極的に参加してくれて、うれしく思っている。ドーピング検査はひと事ではなく、いつ検査を受けても大丈夫なように心がけてほしい」と話していました。

ウエイトリフティングの選手として2008年の北京オリンピックに出場した経験がある齋藤さんは「私が現役のころはユースオリンピックはなかったので、羨ましいと思う。いろいろな国の人と関わりながら学べる機会はとても重要だ」と話していました。

メタバースやVR体験 デジタル技術の活用も

韓国で行われている冬のユースオリンピックでは、インターネット上の仮想空間で会場などを回ることができる「メタバース」のサービスが導入されたほか、VR=仮想現実を使った競技の体験エリアも現地に設けられるなど、デジタル技術の活用が注目を集めています。

このうち、「メタバース」はパソコンやスマートフォンなどから「アバター」と呼ばれる自分の分身を操作して、仮想空間での交流や体験ができるサービスです。

今回のユースオリンピックではIOC=国際オリンピック委員会や大会組織委員会などが協力して「メタバース」のサービスを導入し、バーチャルの世界で会場や選手村を回ることができるほか、競技の体験もできます。

また、カンヌン(江陵)にあるメインメディアセンター近くの施設では、韓国の科学技術情報通信部がVRのゴーグルを着用することなどで冬の競技を体験できるエリアを設け、訪れた人たちがカーリングやスノーボードなどを仮想現実の世界で体験していました。

体験した韓国のインターネットメディアの男性記者は「冬の競技は実際にプレーしてみるのが難しいので、こうした技術を通して競技の体験ができるのはいいことだと思う」と話していました。

IOCはオリンピックやスポーツへの若者の関心を引き付けようと、体を動かしてオンラインで競う「バーチャルスポーツ」や、コンピューターゲームなどの「eスポーツ」を含めたデジタル技術の活用に力を入れていて、今後もこうした動きはいっそう加速していくと見られます。