石川 輪島 希望する中学生の集団避難 12日までに250人が同意

地震で大きな被害を受けた石川県輪島市では市内の中学生のうち希望する生徒全員を県内の別の施設に集団で避難させる方針です。

輪島市は12日までに全体の6割あまりの250人の生徒が集団避難に同意したと明らかにしました。

避難をすれば、一時的にも住み慣れた町や家族と離れて暮らすことになり、中学生がいる家庭からはさまざまな声が上がっています。

避難を希望した生徒は

輪島中学校に通う3年生の宮脇瑞月さんは地震のあとも自宅で過ごしていますが、学校は再開しておらず間近に控えた高校受験のための勉強は参考書などを使って少し行う程度だといいます。

地元の輪島高校に友人と一緒に進学したいと思っていて、勉強する環境も整うことから集団避難することを決断しました。

瑞月さんは「受験を控えているので勉強が必要だし、友人の多くが集団避難するので行ったほうがいいかなと思いました」と話していました。

集団避難の意向調査は学校との連絡にふだんから利用しているアプリを通じて行われ、短期間での回答を迫られたということです。

瑞月さんの両親は、「『また地震が起きたら』という思いや初めて子どもと離れるので不安がありますが、子どもの希望を尊重し、成長するためにはいい機会かもしれない」と話していました。

地元にとどまることを決めた生徒は

一方、被災した地元にとどまることを決めた生徒も決断に至った複雑な胸のうちを明かしてくれました。

輪島中学校3年の女子生徒の1人は自宅が被災し、通っている中学校に家族で避難していますが、手元に勉強道具がないことから受験勉強ができていないということです。

県南部の白山市への集団避難の意向調査がありましたが、家族で離れて知らない土地で暮らすことへの不安などから女子生徒は集団避難をしない決断をしたということです。

公立高校の願書提出がおよそ1か月後に迫る中、女子生徒は志望校を輪島市内の高校から市外の別の高校に変更し、合格すれば進学先の高校がある場所に家族で引っ越す予定だということです。

女子生徒は「急に遠方の白山への避難を提示され、しかも『すぐに決断しないといけない』と言われて驚きました。1人で地元を離れて知らない土地で不安な気持ちを持ってほかの学校の見知らぬ人と一緒に勉強するよりはここにとどまったほうがいいと思いました」と話していました。

突然決断を迫られ困惑

また、中学3年生と2年生の息子がいる40代の夫婦も自宅の被害が小さかったため子どもたちと一緒にいることを優先して集団避難は希望しないと回答したということです。

ただ、「周囲の保護者たちは、子どもたちだけでも安全な場所に行ってほしいとか、受験が目前に迫る中、避難所で勉強を強いるのはかわいそう、卒業が近いため友達と一緒に過ごしたいという子どもの思いを尊重するといった理由で、集団避難を希望する声のほうが多かった印象です。地震で大変な状況の中、突然大きな決断を迫られて困惑しましたし、何より将来が見通せないのが本当に不安です」と話していました。

輪島市は今後、県教育委員会などと協議をして避難先となる「白山ろく少年自然の家」と「白山青年の家」に移送するためのバスの手配や、同行して指導にあたる教職員の配置などについて調整していくとしています。

また、希望しなかった生徒についても学習の機会がえられるよう今後の対応を検討していくとしています。

被災地の中学生の集団避難をめぐっては、珠洲市や能登町も実施することにしていて、各家庭の意向調査を行っています。