【輪島市 1月9日時点】分かってきたこと まだ分からないこと

今月1日の能登半島地震で震度6強の揺れを観測した石川県輪島市の中心部「朝市通り」で発生した大規模な火災現場で、9日から警察が集中的に捜索をはじめ、巻き込まれた人がいないかなど確認を進めています。

そのほか、輪島市では広い範囲で建物が倒壊するなどしていて市も被害の全容を把握できていないのが現状です。

支援が必要な集落もあり実態の把握と孤立状態の早期解消が喫緊の課題となっています。

能登半島地震で被害の大きかった石川県輪島市の状況をまとめています。

【動画】坂口市長に聞く 被害状況や避難者支援は

石川県輪島市の坂口茂市長は、NHKの取材に対し、避難生活が続く中で厳しい寒さへの対応や衛生環境の悪化が課題になっているとして、国に対して手厚い支援を求めました。

坂口市長は輪島市内の被害の状況について、「かなりの数の被害があると思われるが、市内全域が被害を受けていて、まだ全容の把握にいたっていない。『朝市通り』の火災についても焼失した棟数、規模などの詳細はまだわかっていない」と述べました。

そして、輪島市内では県内で最も多い、1万2千人あまりが避難を続けていることについて、「寒い中で、十分な暖が取れていないことや、トイレを含めた衛生環境が非常に悪く、ノロウイルスや新型コロナなどの感染症もまん延しつつある。最初は水や食料を必要としていたが、避難生活が長く続く中で、医療面でのサポートなどが、必要になってきている」と述べました。

そのうえで、未だにライフラインやインフラの復旧の見通しが立っていない状況だとして、国に対して、早期復旧や、避難者への経済的な対応も含めた手厚い支援を求めました。さらに、被災地以外の地域に住む人に対しては、「現在、交通状況が非常に悪く、渋滞も起きているので、今は来ていただくことはご遠慮いただきたい。落ち着いたら支援もお願いしたい」と呼びかけました。

大規模火災現場で集中的に捜索

今月1日の午後6時ごろ、輪島市中心部の河井町にある観光名所「朝市通り」で大規模な火災が起き、店舗や住宅など200棟以上が焼けたとみられています。

警察は9日からおよそ4日間にわたり、100人を超える態勢で集中的に捜索を行って現場の状況を詳しく調べ、巻き込まれた人がいないかどうかなど確認を進めることにしています。

現場では、シャベルやバケツなどの道具を手にした警察官たちが規制線が張られたエリアに入ったあと、それぞれの持ち場に分かれて捜索活動にあたっていました。

9日の捜索は午後4時過ぎに終わり、10日は午前中に再開する予定だということです。

今回の火災では地震による断水や大津波警報の発令などで消火活動が難航し、焼失面積はおよそ4万8000平方メートルと推計されています。

「福祉避難所」が開設 受け入れ開始

今回の地震で多くの人が避難生活を送るなか、石川県輪島市に高齢者や障害者など介護が必要な人のための福祉避難所が開設され受け入れが始まりました。

受け入れが始まったのは輪島市釜屋谷町にある障害者のグループホームなどが入る福祉施設「ウミュードゥソラ」です。

この施設では市内にある一般の避難所で災害派遣医療チーム「DMAT」が高齢者や障害者など介護や介助が必要だと判断した人たちの受け入れを8日夜から始めました。

職員たちは避難した人から体調を聞き取ったり、避難者とストレッチをして体を動かしたりしていました。

9日は新たに20人から30人ほどを受け入れる見込みで、片づけを行うなど準備を進めていました。

車いすの60代の男性は「脳内出血で、左半身がまひしてるので移動が大変です。前にいた避難所ではすべて自分でやるしかなかったので、助かります」と話していました。

この福祉避難所の運営に携わる医師の紅谷浩之さんは「高齢者が多い地域のため、数日間、避難所で寝ていただけで、筋力が落ち動けなくなってしまった人も出始めています。福祉避難所のように介護や生活医療の視点をもった支援が必要だと思います」と話していました。

亡くなった人は81人(9日午前9時)

石川県によりますと、9日午前9時の時点で、輪島市では81人の死亡が確認されたということです。

安否不明は102人(9日14時)

石川県は、9日午後2時の時点で家族や親族などからの情報をもとに、自治体を通じてまとめた安否が分かっていない人の名前、住所、性別、年齢または年代を公表しました。

▽輪島市は86人となっています。

建物被害 全容は把握できず(9日午後2時)

輪島市では、観光名所として知られる市中心部の「朝市通り」周辺で地震のあとに大規模な火事が発生し、およそ200棟が焼失しました。

石川県によりますと、そのほか広い範囲で建物が倒壊するなどしていて被害の全容を把握できていないのが現状です。

避難 160か所 1万2428人(8日午後2時)

石川県によりますと、8日午後2時の時点で輪島市では160か所で1万2428人が避難しているということです。

避難所のごみ収集追いつかず

避難所では、生ごみなどの収集が追いつかなくなっていて、衛生環境の悪化を懸念する声が強まっています。

輪島市の避難所の1つ、輪島中学校では9日午前、数日ぶりにごみ収集車が到着しました。

避難所の外には生ゴミやペットボトルなどが高く積まれたままの場所があり、業者が収集車に積み込みましたが、1回の収集では積み込みきれませんでした。
ごみの中には、簡易トイレで出た排せつ物も含まれていて、衛生環境の悪化を懸念する声が強まっています。

一方、ごみ収集の業者も今回の地震で被災していて、9日収集にきた業者も、12台あるうち2台しか収集車を稼働できていないということです。
さらに、ごみ処理場の焼却炉も稼働できず、処理できない状況が続いていて、焼却炉の前に置き場を設けているということです。

ごみの収集を行う「有限会社美里」の土井秀次さんは「ほかの避難所も回りましたが、ごみがいっぱいで運びきることができませんでした。このままだと処理できないままたまっていく一方なので、早く焼却炉が稼働できるようになってほしい」と話していました。

市内全域で断水続く・給水情報

9日午後2時の時点で、輪島市内のほぼ全域となるおよそ1万戸で断水が続いています。

輪島市では、9日、32か所で水がなくなるまで給水を行っています。開始時間は、
▽午前9時から輪島中学校と鳳至小学校で、
▽午前9時半から大屋小学校で
▽午前10時から三井公民館で
▽午前10時半から能登空港で行われています。
また、
▽午前11時から市ノ坂集会所、阿岸公民館、剱地原子力災害防護施設、下本郷の宝建設付近、諸岡公民館、門前公民館、門前中学校で、
▽午前11時半から河井小学校、輪島地方合同庁舎、大屋公民館輪島消防署で行われます。
さらに
▽午後0時半から鳳至公民館ふれあいプラザ二勢河井地区、河原田地区のおおぞら農協で、
▽午後1時から小山集会所、黒島公民館上本郷集会所浦上公民館門前西小学校、門前東小学校で給水が始まります。
▽午後1時半からはふれあい健康センター、港公民館、河原田公民館、光浦集会所で、▽午後2時から南志見小学校で、
▽午後2時半から横地ふれあいセンターで始まります。

輪島市は9日午後6時時点では、10日の給水支援の場所と時間は未定だということです。

停電 約6200戸(9日午後5時時点)

北陸電力送配電によりますと、9日午後5時時点、
輪島市ではおよそ6200戸が停電しています。

ガソリンスタンド 海沿いの地域で営業停止続く

地震の影響で石川県の能登地方ではガソリンや灯油の供給不足が続いています。
営業が停止しているガソリンスタンドの店舗は、輪島市や珠洲市を中心とする海沿いの地域で、地震や津波で設備が壊れ、従業員も被災するなどして再開が見通せないところがあるということです。

入浴支援の情報(9日)

9日に予定されている自衛隊の入浴支援の情報です。
輪島市では
▽鳳至小学校で午後3時から午後9時まで、
▽輪島中学校で午後5時から午後8時まで、
▽もんぜん児童クラブで午後4時半から午後9時まで行う予定です。

携帯電話 充電サービス・Wi-Fiスポット無料開放(9日午後2時)

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手各社は、避難所を中心に携帯電話の充電サービスや、Wi-Fiスポットの無料開放を行っています。

《充電サービスとWi-Fiスポットの両方を提供》
輪島市では、▽ふれあい健康センター、▽大屋小学校、▽河井小学校、▽鳳至小学校、▽門前東小学校、▽門前西小学校、▽門前中学校、▽輪島中学校、▽輪島高校、、▽門前高校、▽輪島市役所門前総合支所、▽剱地原子力防護施設、▽輪島地方合同庁舎、▽三井公民館、▽輪島市門前会館の15か所です。

《Wi-Fiスポットは提供していないが携帯電話の充電サービスを提供》
▽輪島市役所、▽輪島消防署、▽輪島ふるさと体験実験館、▽JAおおぞら町野支店、▽浦上公民館の5か所です。

《Wi-Fiスポットのみを提供》
▽河原田公民館の1か所です。

一方、各社が提供するWi-Fiスポットでは、公衆無線LANサービス「00000JAPAN」を利用することができます。

利用する際には、Wi-Fiのネットワーク名が0が5つ並んだあとに、大文字のアルファベットでJAPANと表示されているものを選択します。

ただ、各社は通信の暗号化などのセキュリティー対策はとられていないとして、クレジットカード情報やパスワードなどの入力は極力、避けるよう呼びかけています。

携帯電話などの通信状況(9日午後2時)

石川県の一部の地域では依然として携帯電話がつながらない状態が続き、影響が長期化しています。

携帯電話の音声通話とデータ通信が利用できないなどの影響が続いているのは、9日午後2時時点の状況です。

【NTTドコモ】
石川県の▽七尾市、▽珠洲市、▽輪島市、▽穴水町、▽能登町のそれぞれ一部の地域です。

【KDDIとソフトバンク】
▽珠洲市、▽輪島市、▽能登町のそれぞれ一部の地域です。

【楽天モバイル】
▽七尾市、▽珠洲市、▽輪島市、▽能登町の一部の地域では、携帯電話が利用できない状態が続いています。

市役所や町役場の周辺などでは移動基地局や発電機などを活用して仮復旧を進めているとしています。

【NTT西日本】
▽輪島市でフレッツ光ネクストやフレッツ光ライト、ひかり電話などのインターネットサービスがおよそ660回線で利用できないほか、
▽輪島市と珠洲市で、固定電話のあわせておよそ1660回線が利用できず、110番や119番などの緊急通報もできない状況だということです。

各社は、応急復旧を急いでいますが、道路の寸断などで車両がたどりつけない基地局もあることから、復旧のめどが立っていない地域があるとしていて影響は長期化しています。

また、一部の地域では応急復旧が進んでいますが、通信エリアに限りがあるため、不要不急の通信は控え、必要に応じて災害伝言板等も活用するよう呼びかけています。

「のと共栄信用金庫」輪島支店 窓口の営業再開

石川県七尾市に本店がある「のと共栄信用金庫」は地震の影響で休業していた輪島支店と穴水支店について、9日から窓口の営業を再開しました。

一方で、営業時間は対応できる職員が不足していることから、開始が通常より1時間遅い午前10時から午後3時までとなっています。

また、窓口での受付業務も不要不急の取引を除いて預金の出し入れや通帳の紛失の届け出、それに相談業務などに限定するということです。